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芸能人、やめました。  作者: 風間いろは
高校1年生
30/138

26,余波

ちょっと長くなってしまいました( ;・ㅂ・)

試合終了まで残り3分。依然、狼北高校のリード。


このまま負ける訳にはいかない!


陽斗は最後の力をふりしぼる。


狼北高校の華麗なパスワーク、それを陽斗はカットし、風のような速さで逆側に走る。


そして、ダンクをするためにジャンプする。


それを横で星野もジャンプして手を伸ばし、阻止しようとする。


しかし、陽斗のジャンプは高く長かった。


星野の体は落下しているが、陽斗はまだ空中にいた。


何で······!? こいつスタミナ切れじゃないのかよ!


星野は悔しそうな顔をしながら落ちていく。


そして、豪快にダンクを決める。


体育館に歓声が湧き上がる。



残り1分を切った。


狼北高校がボールを持ち、再び華麗なパスワークを魅せる。


点差もあるし残り時間もないし、もう俺らの勝ちだ。


狼北高校のメンバーは油断していた。


それを陽斗は見逃さない。


再びパスカットをする。


しかし、残り5秒。


もう何も出来ない、無駄だ。このまま狼北高校の勝ちだと誰もが思った。


既に狼北高校の足も止まっていた。



嫌だ! このまま終わるなんて!


陽斗は最後の最後まで諦めない。


やばいと思ったのか、星野だけが陽斗に向かって走る。


陽斗は星野が追いつく前にコートの真ん中からシュートを放つ。


ボールは大きな綺麗な弧を描く。


そして、試合終了のブザーが鳴るとともにボールはリングに入る。


東京体育館に凄まじい歓声が響き渡る。


陽斗はコートへと倒れ込む。既に体力は限界であった。


······負けたんだ、俺達。


陽斗は放心する。もう、何も頭が回らない。



「おい、そこのもやし」


上から声がして、顔の前に置いていた腕をどかす。


「······星野くん?」


陽斗が小さく口を動かす。もはや、もやしという言葉に反応できる力もなかった。


星野が陽斗に手を伸ばす。


陽斗はその手を掴み、引っ張ってもらい体を起こす。


「お前の事、見くびってたわ。この俺がついていくのが精一杯だった」


星野が悔しそうに顔を歪める。


この人、こんな顔もするんだ。いつもすまし顔で、ナルシストでただの嫌味なやつだと思っていたけど。


陽斗は星野の反応に驚く。


「星野くんの方が強いよ。チーム力も凄かった。俺達は全てにおいて劣っていたから負けたんだ」


陽斗は無理に笑う。


「お、俺は、勝ったなんて思ってない! 次はもっと強くなって完璧にぶちのめす!」


星野はキッと陽斗を睨むと、さっと体育館から出る。


思ったよりも負けず嫌いだ。次か······。次は俺達が倒す!


陽斗は去っていく星野の背中を見ながらそう強く誓う。


ふう、これで俺達は終わりか。あっという間だった。新たな課題も見つかった。でも、楽しかった。こんなに熱い試合が出来るなんて、最高だ。青春だな!


陽斗は満足して体育館を去る。



成宮高校、準々決勝敗退。




ついにウィンターカップ、全日程が終了した。


優勝は狼北高校。決勝は圧倒的勝利だった。


試合を見ていたが、星野くんは断トツに凄かったと陽斗は振り返る。


圧倒的センスに元々の身体能力も高いのだろう。誰も彼にかなう人はいなかった。


そんな人と一緒に試合が出来たことを誇らしく思う陽斗だった。



表彰式も全て終わり、陽斗はトイレへと行く。


最近、トイレに行くと何かしらが起こっていたため、恐る恐る行き、戻ろうとする。



「今宮くんだよね? ちょっといいかな?」


横から声をかけられる。


陽斗が声のした方を振り返ると、そこにはスーツを着た40代の男性がいた。


「急にごめんな。俺はこういうものだ」


男は陽斗に名刺を渡す。


「······え!? 日本バスケ協会!?」


陽斗は名刺を見るなり驚いて男性を見る。


「まあ、そこの委員会で働いてるんだ。橋本 秀治(はしもと しゅうじ)という。よろしく」


三浦は陽斗に握手を求める。陽斗は驚きつつもそれに応じる。


「え、えっと、は、橋本さん、それで俺に何の用ですか?」


陽斗はカチコチと緊張する。相手は日本バスケ協会の方だ。失礼のない態度を心がける。


「君のプレーに感動したんだ。それで、君は卒業したらどうするつもりなんだ?」


「あ、ありがとうございます! え、えっと、普通に大学に行って就職します!」


「え? プロになるんじゃなくて?」


橋本が驚いたように陽斗を見る。


「······え? プロ!? そんなそんな! 俺は一般の高校生ですから! 無理です!」


陽斗も驚きつつも全力で拒否する。


「え? そんなに強いのにか? まあ、いい。もし、困った事があったらいつでも連絡かけてくれていいからな」


「あ、はい、あ、ありがとうございます」


陽斗は関わることないけどなと思いながらも、丁寧にお辞儀をする。


「時間取って悪かったな。それじゃ」


橋本は陽斗に手をひらひらと振りながら去る。


······な、何で日本バスケ協会の方が何で一般の高校生に話しかけてきたんだろうか? こんなの、青春を通り越してるよ!


陽斗は現実とは思えず少しの間放心する。


だけど、俺はなぜこんなにもトイレに行くと、何かが起こるんだろうか。トイレに恨みでも持たれているのだろうか。


陽斗はトイレが恐ろしく思えてきたのだった。



***



次の日、陽斗達はいつも通り学校へ登校する。途中で一緒にあった市原と成美と共に向かう。


門をくぐる。


すると、すぐさま視界に入ってきたのは校舎にかけられている大きな垂れ幕。


そこには『祝!男子バスケ部、ウィンターカップ本選ベスト8』と書いてあった。


「な、なんだこれ」

「す······すごい!」


陽斗達は学校からの目立った祝福に驚きつつも感動する。


そして、教室に入るなり皆が多くの祝福の言葉をくれた。


何でも、生中継でニュースで新聞で見たらしい。


バスケ関係の雑誌でも割と大き目に載っていたらしい。


『初出場、無名校の成宮高校がウィンターカップ本選ベスト8! 立役者は突如表れた謎の高校1年生!?』と書いてあったらしい。


こんなにも大きく取り上げられるんだなと陽斗は驚いた。



そして、学校で盛大に表彰式も行われた。バスケ部は皆、壇上に上がる。校長先生からもお祝いの言葉を貰う。


陽斗は壇上の上で体育館全体を見回す。皆が笑顔で拍手をしてくれている。


おおおー! すごい! 感動だー! 学校で表彰して貰ったのは初めてだ! これは高校ありきのものだな。青春だなー!


陽斗は嬉しくなる。


存分にこの祝福を堪能したのであった。


読んで下さり、ありがとうございます⸜(*ˊᵕˋ* )⸝‬

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