24,ウィンターカップ本選③
「えーと、今日の準々決勝は~と······え? 成宮高校? どこだ? 初めて聞くな」
体育館の外にはってあるトーナメント表を見て、帽子をかぶった記者の1人が不思議そうにする。
「そこな、あの剛力 新を破って来たらしいぞ」
「え!? 橋本さん、マジすか!? 剛力 新って世代別代表ですよね?」
「ああ、そうだ。なんでも、成宮高校には星野レベルのエースがいるらしい」
「そうなのか!? そりゃすげえ!」
記者はメモを取り出し、何かを書いている。
「これは、なんか起こりそうだ」
橋本と呼ばれたスーツを着た男性はぼそっと呟いた。
ウィンターカップ本選5日目、男子準々決勝。今日から4面あったコートは1面になる。
「いやー、まさか俺らがここに辿り着くなんてな」
「それな、思ってもみなかったわ」
皆は東京体育館の真ん中に設置してあるメインコートを見て、感動していた。
皆が憧れている舞台、そこに今日立つのである。
陽斗もそんな最高の環境で強い敵と戦えるなんてヤバい! と興奮していた。
成宮高校バスケ部は、ここで大1番、星野 桜雅を擁する第1シード校である狼北高校と当たる。今年のインター杯王者である。
全国からたくさんの部員が集まり、選手層は厚い。星野以外にも年代別の代表は何人かいる。また、1人1人のレベルだけでなく、チーム力としても高い。
狼北高校の圧勝で優勝するものだと誰もが思っている程だ。
「そろそろ練習始まるから準備しとけよー」
キャプテンの川田が皆に呼びかける。
陽斗は尿意がきたため、急いでトイレへといく。そして、スッキリして軽快な走りで体育館へ戻る。
「ねえ、そこの地味男」
横から声がした。地味男? 誰だろうと思いながらも、もう練習が始まるため気にせず走る。
「おい、お前だよ!」
後ろからがしっと肩を掴まれる。
もう、なんだよ、この忙しい時にと思いつつ、後ろを振り返る。
「······え? 君は······」
陽斗が驚くのも無理ない。そこにいたのは、まさに今から戦う相手である星野 桜雅であったのだから。
なんでこんなアイドルみたいな人が俺に話しかけんだ? と陽斗は不思議に思う。
「お前、試合見たけど半端ねえ強さだったな。ま、俺様には劣るがな。もやしみたいヒョロヒョロしてんのに」
星野がふっと笑う。
······この人は褒めてくれてるのか? それとも貶してんのか?
というか、星野くん、女性といる時も全く雰囲気も話し方も違うんだけど! これが本性なのか?
陽斗はあまりの違いに驚く。
というかもやしっていったよね? 前にも言われたことあるけど、俺はそんなにヤワじゃないやい! いつか潰す!
陽斗はメラメラと闘争心を燃やす。
陽斗にもやしは禁句であるようだ。
「今から俺達と試合だな。正直、皆格下すぎてつまんなかったんだよ。せいぜいお前は俺を楽しませてくれよ?」
星野はそう言うと、陽斗に手をひらひらとさせて体育館の方へと歩いて行った。
······なんなんだ、あの男は! 失礼だな!
陽斗は少し腹を立てる。
でも、あんなの気にしてちゃダメだ。とりあえず、目の前にある試合の事だけ考えよう。
陽斗は邪念を棄てて、試合への集中を高める。
そして、ウィンターカップ本選、男子準々決勝が始まる。
読んで下さり、ありがとうございます!
ブックマーク500件、ありがとうございます(*´v`)正直、こんなに読んで貰えるとは思ってなかったです!




