番外編 剛力 新
俺は剛力 新。高校1年で、県内のバスケ強豪校である東高校に通っている。
俺のトレードマークは坊主頭。俺はこの頭がお気に入りである。なぜなら、バスケをしている時に髪が全く邪魔にならないからだ。
俺はこの世の中で1番バスケが大好きだ。小さい時からNBAを見て育った。この人たちみたいに強くなりたい、人を魅了したい。俺は一途にバスケをした。するにつれて上手くなった。元の才能もあるのだろう、全国でも強いと言われるようになった。
俺は調子に乗った。正直、俺は周りの人間より圧倒的に上手だった。俺は強いんだと確信していた。俺の敵はいないと。
"青羽 瞬"と会うまでは────
小学校の時、俺のクラブチームは全国へと駒を進めた。優勝候補とも謳われていた。
俺達は順調に勝ち、ベスト8までになった。しかし、準々決勝で負けた。しかも、圧倒的な差で。
最初は信じられなかった。俺は負けるはずがないと思っていた。
"青羽 瞬"は別格だった。全く歯が立たなかった。全く予想が出来ない動き。俺は何度絶望を味わったことか。初めて味わう挫折。上には上がいると思った。
その後、あいつのチームは準決勝で負けた。あいつは芸能活動で出なかったらしい。まじで試合をすっぽ抜かすなんてありえねえ。こんなバスケを舐めてるやつに負けるなんてな。
俺はそれから自分を慢心せずにバスケを続けた。あいつに勝つために。
そして、勝負をするため地元を離れ、あいつが暮らす街へとやってきた。
しかし、あいつはいなかった。聞くところによると、芸能活動を優先するらしい。
なんじゃそりゃ!? 俺はなんの為にこっちに来たんだ!? あんなにうまいのになんでバスケ辞めたんだ!? しかも、小学校の時も中々有名だったが、国民的芸能人になりやがって! ほぼ毎日テレビや広告で目に入って目障りなんだよ!
じゃあ、俺がバスケもっと上手くなってお前より目立ってやる! と誓い、俺は今まで以上にバスケに打ち込んだ。
そして、高校1年になり、ウィンターカップ予選が始まった。俺は県内じゃ敵なしである。余裕だ。
しかし始まると、1人の男が噂になった。何でも、とてつもなく強いらしい。しかも、高校1年生。
そいつの試合を見に行ったが、もやしのようなヒョロヒョロとしたやつだった。しかし、プレーは噂通り強かった。これは期待できる。俺といい勝負が出来ると思った。対戦できるのが楽しみだった。
そして、ウィンターカップ予選決勝。前半、思った通り俺と同じくらい強いやつだった。県内にこんな奴がいるなんて。俺は最高に楽しんでいた。
互角に進んで後半。そいつの動きが前半と違う。スピードが上がり、予想ができない動きが増えた。俺は遂には抜かされた。試合も負けた。
久しぶりに味わう挫折。前と全く同じ感覚。
前と同じ······?
よく見れば、こいつの動き、小学校の時見た"青羽 瞬"とそっくりじゃないか。
顔を見るが、長い前髪と眼鏡で隠れていてよく分からない。
だが、俺は確信した。こいつは"青羽 瞬"だと。
なんでこんな所にいるのだろうか。
それはともかく、俺は"青羽 瞬"を倒すためにずっとやってきたのに、また負けた。
信じらんねえ。なんでまた! こんな半端なやつに! 今まで俺がやってきた努力は!? 意味ないって言うのか?
しかし、負けは負けだ。俺の今の力じゃこいつには叶わねえのか。こんな圧倒的センスの塊の前じゃ。
だが、こいつは本当に半端なやつか?
多分違う。試合をしていた時の"青羽 瞬"は心の底からバスケを楽しんでいた。キラキラと輝いていた。
そんな奴が半端なわけはねえ。
俺はお前のおかげで気づいた。俺は今までお前を倒すためだけにバスケをしてきた。しかし、それは間違ってた。俺はバスケをただの復讐の道具として使ってた。だから負けたのだろうか。
今から改めよう。俺はこれから初心に戻って純粋にバスケを楽しむ。そして、勝つ!
俺は絶対お前を超えてみせる!
読んで下さり、ありがとうございます(*`ω´*)




