123,再び久しぶりの集まり
ごめんなさい、途中のまま投稿してしまいました。
毎回毎回、本当に申し訳ないです、、、
間違えて投稿してから2ヶ月でようやく書き終えました。ごめんなさい、書くの遅くて( ˊᵕˋ ;)
1月4日、新しい年が始まって数日後、陽斗は近くの行きつけの理髪店にいた。
いつもの黒い髪は茶色になり、髪もセットしてもらい、隠れていた顔が久しぶりに露わになる。
なぜこういう事をしているのかというと、今日は仲良かった芸能人の皆と、先輩である園田の家でお食事会をするのだ。
さすがにいつも通りの姿じゃ嫌なので、セットしてもらっていたのだ。
「それじゃあ、気をつけろよ!」
代金を支払って店を出ていこうとする陽斗に、理髪店のおっちゃんがウィンクをしながら親指をグッと立ててそれを陽斗に向ける。
「はい! ありがとうございます!」
陽斗は満面の笑みでおっちゃんにお礼を言ってお店を出る。顔がもろに出ているので、もちろんマスクとサングラスという不審者のような格好でだ。
顔が出ているので全く落ち着かず、周りを気にしながら電車に乗ること1時間半、彼は電車を降りた。
駅を出て歩いていくと、高級住宅街に入る。その中にある一際大きな一軒家の前に立ち、陽斗はチャイムを鳴らした。
「陽斗ー!! 久しぶりー!!」
「うわっ!」
チャイム鳴らしてすぐ、ドアが開かれ、中から飛び出してきた人に陽斗は思いっきり抱きつかれた。
「ちょ、亮くん、は、離れて・・・」
「やだね! 最近会えなかった分を補充させろ!」
冴木の腕の中から逃げようとする陽斗だが、彼の力が強すぎてビクともしない。
圧死するんじゃないかというくらい、力強すぎるハグだ。
「ちょっと! 陽斗が死んじゃうよ!」
玄関の様子を見に来た奈那だが、冴木の腕の中で苦しむ陽斗に気づき、慌てて冴木の腕を引っ張る。
「あ、ごめん、陽斗。久しぶりに会えたのが嬉しすぎて」
そういう冴木だが、まだ一向に陽斗を離す気は無いらしい。力は弱まったものの、未だ冴木の腕の中にいた。
これを振りほどいても後から余計にくっつかれるのは目に見えている。そのため、陽斗はもう彼を振りほどくのは諦めて大人しく亮の腕の中にいることにした。
「あ、陽斗さん!」
「よく来たな、陽斗」
リビングに入るな否や、陽斗にたくさんの声がかかる。
机の上には料理が並べられており、もう既に食事会は始まっているようだった。
「遠くからわざわざ来てくれてありがとう」
席に着いた陽斗に、芸能人時代の恩師である園田が笑顔で声を掛ける。
「いえいえ、園田さんのためならどこでも駆けつけますよ!」
陽斗は早速テーブルの上にある料理に手をつけながらそう答える。
なんていったって、この食事会の発起人は園田だ。恩師に誘われて行かないわけがない。
「てか、陽斗! ウィンターカップ優勝おめでとう! 俺まじ泣いたぜ!」
今やテレビや映画に引っ張りだこの、荒井爽司が後ろから陽斗にハグをする。彼はその明るく熱い性格の影響か、最近ではバラエティー番組でも活躍している姿をよく見かける。
「ちょ、爽司くん、は、離し、て」
口いっぱいに食べ物を含んでいた陽斗は、爽司のハグで首が締め付けられ、食べ物とハグの苦しさで咳き込む。陽斗は危うく窒息しそうになる。
「陽斗、大丈夫?」
奈那はそんな咳き込む陽斗の背中を擦り、心配そうに顔を覗き込む。
「おい、爽司! 陽斗に何してくれてんだ!」
そんな爽司の頭に、冴木はげんこつを食らわす。
「イッテー! そういう冴木もさっきやってたじゃねーかよ!」
「俺はいいんだよ!」
「は!? それは意味わかんねーよ!」
涙目の爽司と冴木が言い争う。
「亮さんの、陽斗さんへの愛は相変わらずですね・・・・・・」
そんな騒ぐ彼らを苦笑いして見つめるのは七瀬湊。
今、超人気アイドルグループSNRISEの1人で、とても人懐っこくて可愛いらしい少年だ。
以前、SNRISEのアリーナツアーをしてた時のライブに陽斗を招待し、少しだけステージ上で共演していた。
未だ騒ぐ冴木と爽司を横目に、陽斗たちは話に花を咲かせる。
「この前のウィンターカップ、テレビで見たけど本当に大活躍だったな」
師匠である園田の褒め言葉に、陽斗は嬉しそうに笑う。
「白石くん、ゴール壊してたよね。あの威力は凄かった! 私、実際に見に行ってたから、すごいびっくりしちゃって!」
決勝で白石がダンクをした際にゴールを壊した光景を思い出して、奈那がクスクスと笑う。
そんな奈那の発言に、湊も同調する。
「僕も生中継で見てました! さすが、破壊魔さんでした!」
皆はウィンターカップの話で盛り上がる。
陽斗が出ているということで、この場にいる皆が見ていたのだ。
仕事に行っている時も、試合の結果が気になってチラチラと携帯で確認をしていたくらいだ。
「最後のブザービートはまじ凄かったよな!? さすが俺の陽斗!」
そんな4人の会話に入ってくる冴木。
まるで自分の事のように自慢してくる。
そんな彼の腕は先程まで言い争っていた、爽司の首に巻きついている。
どうやら、埒が明かないと思った冴木が実力行使に出たらしい。
爽司は冴木の腕の中で苦しそうにしており、顔は真っ赤だった。
そんな爽司を皆は見ないふりをして会話を続けていた。
そんな時だった。
玄関の方から何やら音がしたと思うと、陽斗たちがいるリビングに2人の子供が走って入ってきた。
「「パパー!」」
2人は陽斗の師匠である、園田の元に抱きつく。
「おかえり」
「「ただいまー!」」
園田は2人を暖かい目で見て微笑む。
「あ、優愛ちゃんと玲くん!」
「奈那ちゃーん!」
「奈那ちゃん好きー!」
優愛と玲は奈那の元に駆け寄り抱きつく。
「習い事に行ってたの?」
「あ、湊!」
「そーだよ! たいそーしてたの!」
湊に気づいた2人は、屈託のない笑みでそう答える。
優愛と玲は、園田の子供で双子だ。今年で9歳になる。
その時、子供たちがリビングに入ってきたところと同じ場所から1人の女性が顔を覗かせる。
「あ、杏さん!」
「杏さん、お邪魔してます!」
「あら、皆来てるのね」
皆が声をかける女性、杏は園田の妻であり、また女優でもある。35歳にも関わらず、その美貌は衰えてはいない。
園田と結婚した当時、彼女は超人気女優として忙しく活躍しており、結婚した時は日本全土が驚きに包まれた。そして、男女問わず園田への嫉妬の声が相次いだという。
「杏さん、相変わらずお美しいですね!」
杏の熱烈なファンであったという爽司は、キラキラとした熱い視線を送る。
「ちょっと、人の妻に手を出すな」
「爽司、キモイ!」
「ママに近寄るな!」
園田は呆れた表情で爽司の頭にチョップを入れ、優愛と玲は爽司を威嚇するように見つめ、お母さんである杏を守るように彼女の前に立った。
子猫が威嚇しているようなそんな可愛らしい優愛と玲の姿に、皆は思わず笑みをこぼす。
そんな中、冴木が口を開いた。
「そうだ、優愛と玲、ちょっと周りを見渡してみなよ。2人がずっと会いたかった大好きな人が家に来てるぞ」
冴木に言われて、2人は周りをキョロキョロと見回す。そして、とある人物を見ると目を見開き、その目がキラキラと輝いた。
「瞬にい!!?」
「瞬にいがいるー!!」
2人は思いっきり陽斗の胸に飛び込む。
その勢いに、しゃがんでいた陽斗は後ろによろけ尻もちをつく。
「2人とも久しぶり! 大きくなったね」
青羽瞬こと、陽斗は笑顔で2人の頭を撫でる。
「なんでずっと会いにきてくれなかったの! 優愛、すごく寂しかった!」
優愛は頬をぷっくりとさせ、潤んだ目で陽斗をじっと睨みつける。
陽斗がこの家に来なくなって1年と半年ほど。テレビで見ることもなくなり、陽斗が大好きだった優愛は本当に寂しい思いをしていたのだ。
幼いながらも、急に家に来なくなったのは自分のことが嫌いになったからじゃないかと思っていたのだ。
だから、陽斗が今日家に来てくれて、嬉しいと共に安心したのだ。
そんな優愛の目からポロポロと涙が溢れ出す。
「ゆ、優愛ちゃん!? どうしたの?」
嗚咽を漏らしながら泣き出した優愛に、陽斗はオロオロとする。
「うわー、陽斗が泣かせだぞー」
「陽斗、最低ー」
そんな陽斗を爽司と奈那がからかう。
だが、その場にいる皆は知っていた。なぜ優愛が泣いているのかを。
「優愛は、陽斗がずっと家に来なかったから辛い思いをしていたんだよ」
どうして優愛が泣いているのか分からず戸惑う陽斗に、優愛の父親である園田がそう言う。
「あ、そうだったんだね。今までごめんね、優愛ちゃん。これからはたくさん会いに来るね」
陽斗は優愛ににっこりと笑いかける。
「・・・ほんと?」
「うん」
「約束だよ? 絶対だからね?」
「うん、もちろんだよ」
2人は指切りをする。そして、未だ涙ぐむ優愛を陽斗は優しくハグをする。
そんな微笑ましい2人を皆は暖かく見守っていた。
「ねえ、何で瞬にいのことをみんな、陽斗って言うの?」
そんな中、玲が首を傾げながらそう言う。
名前は"瞬"のはずなのに、皆が陽斗と呼ぶのがずっと気になっていたらしい。
「僕の本当の名前は陽斗って言うんだ」
「瞬じゃないの?」
「うん」
「じゃあ、これからは陽斗にいって呼ぶね!」
さっきまで浮かない顔をしていた玲は、すっかり解決したかのように笑顔だ。
状況を飲み込むのが早すぎる子である。
「優愛と玲は俺のとこには来てくれないの?」
そんな中、爽司1人はソワソワとしていた。
優愛と玲の2人が皆とハグをするのに対し、まだ1人だけしていなかった。小さい子供が好きな爽司は、今か今かと待ちわびていたのだ。
「え、行かない!」
「爽司は肌すりすりしてくるからヤダ!」
陽斗にベッタリな優愛と玲はバッサリと爽司を切り捨てる。
いつも爽司は肌をすりすりしてきたり、1度ハグするとなかなか解放してくれなかったりするのだ。それが2人は嫌だった。
「そ、そんなぁ・・・・・・」
幼い2人に強く拒否された爽司は、ショックのあまり膝から崩れ落ちた。
そんな爽司を慰めるものは1人もいなかった。
それから数時間、優愛と玲の2人は陽斗の膝の上でぐっすりと眠っていた。
ずっと陽斗と遊んでいた彼らは、習い事をしてきたというのもあり疲れて眠ってしまったようだ。
そんな2人を園田とその妻がそっと抱っこをして、寝室まで連れていった。
子供らが寝た後も、彼らの会話に花が咲き続けていた。
「そうだ、陽斗さん、良かったらサインしてくれません?」
そう陽斗に提案してくるのは、後輩の湊だ。
「なんでサイン?」
「陽斗さんがバスケで大活躍してるからに決まってるじゃないですか! 陽斗さん、芸能界でも有名なんですよ!」
「え、そうなの!?」
湊の発言に陽斗は驚く。
なぜなら、自分がそこまで認知されているとは思わなかったからだ。
しかし、湊の発言は間違いではない。陽斗のバスケは多くの人を魅了していた。芸能界にも彼のファンは多くいる。
「いいけど、ちゃんとしたサイン作ってないんだよね」
「それじゃあ、私たちが新しく作ってあげるよ! バスケットボール選手、今宮陽斗のね!」
困ったような陽斗に、奈那がウィンクしながらそう言う。
その言葉どおり、皆は陽斗のサインを考え始める。
その1時間後、皆のアイディアが詰まった陽斗のサインが出来上がった。
陽斗はそのサインを皆の持ち物に書いたところで、食事会はお開きになった。
久しぶりの集まりに楽しかったととても満足して帰る陽斗。
しかし、この時彼は知らなかった。
このサインを持っている冴木らに、自分もそのサインが欲しいと芸能人仲間に限らず、多くの人から注文が殺到したのである。
それから、陽斗は行くたびにサインをお願いされ、まるで芸能人であるかのような状況になったという。
読んでくださり、ありがとうございます(⑅•ᴗ•⑅)
相変わらずスローペースになりますが、投稿し続けようと思います。私のわがままで度々迷惑をかけててほんとすみません。今後ともよろしくです。




