103,修学旅行②
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「白石はなんかないのかよ?」
体育委員の南がニヤニヤと笑いながら、今度は白石に詰め寄る。先程騒ぎすぎて怒られたばかりだというのに、この男は全く懲りていない。
皆は呆れ半分もありつつ、でも気になって聞く耳を立てる。
「······特に」
白石はスマホを見ながら、図々しい南に少しイライラしたのか眉毛をピクリと上げる。
「俺、見たんだよ。白石が転びそうになった三浦を助けたとこをな。こうやって抱き抱えてたんだ!」
「まじ!? ラブシチュエーションじゃん!」
「白石くんまじ男!」
南は興奮気味にその時の白石の抱き抱えるようなポーズをする。その話に、先程白石に枕投げで沈められた少年と陽斗ははしゃぎだす。
「それが何? 助けるのは当然だろ?」
当たり前だろというような表情で白石は騒ぐ3人を見つめる。
「皆、聞いたか!? 助けるのは当然だってさ!」
「まじイケメン!」
「男前すぎるー! 流石だ!」
3人はその発言にさらに盛り上がる。
「おい、お前らまじ落ち着けって」
そんな中、1人だけ冷静なのは市原だけだった。さっき注意されたばかりだというのに、それを忘れたのかもううるさくなってきた。それに、白石がキレたらものすごく怖い。そういう事は滅多にないのだが、でもちょっと恐れていた。ちなみにもう1人は既に就寝しており、この場をなだめられるのは市原ただ1人だ。
だが、それを聞き流す3人。
「でも、俺も見た! ミュージカルの練習の時に、三浦の練習によく付き添ってたのを!」
「困ってたら普通助けるだろ」
「それとこれは違う! 白石は他人に興味が無いくせに、三浦に対しては人一倍気にかけてんだ!」
「そうか?」
そう断言するクラスメイトに、白石は首を傾げる。どうやら本人は何も気づいても分かってもいない、無意識だったようだ。
「白石くんは誰にでも優しいよ?」
「いや、とても怪しい。その行動はあれかもしれない」
「あれ?」
「そう、恋だ!」
陽斗もまた白石同様に首をかしげる。だが、南はドヤ顔で『恋』だと言いきった。
「これ、恋?」
そういう経験をしたことが無い白石は全く分からず、真顔で南に問う。
「え、恋じゃないの?」
「これが恋······?」
「え、違うの?」
全く動揺せずに顔の表情が変わらない白石。その反応に、少しは照れると思っていたが予想外の反応を取られた南は、自信満々だったが困惑し始める。
南的には、これは恋だと確信していたらしい。
「まあ、恋っていっても色々あるしな」
「え!? 市原もなんかあったのか!?」
「黙ってないで教えろっての!」
ぽつりと呟いた市原だったが、それを聞き逃さなかった者が詰め寄る。
「何もねえよ! お前らまじうざい!」
「なんだよー、隠さなくてもいいんだぞー!」
「お前らー! うるせー! 良い子は寝ろ!」
再び騒がしくなった部屋に、太陽先生が怒りの表情で乗り込んでくる。またもや廊下に声が響き渡っていたらしい。太陽先生は、先程かなり葉山先生に怒られ機嫌があまり宜しくなかった。
「恋バナしてんっすよ!」
「恋バナだと!? 誰がだ!?」
だが南のその発言に、太陽先生は先程のイライラはすっかりと消え去り、ノリノリで部屋へ入ってくる。
この後、太陽先生を加え余計にうるさくなり、再びそれに駆け付けた葉山先生の雷が再び落ちたという。
***
「あー、まじねむ」
修学旅行2日目の朝にバスで移動する際、南が大きな欠伸をする。
「主にお前のせいだろ。修学旅行で反省文書かされるとか······」
市原もまた眠たそうで、瞼がとても重そうだった。
昨日の夜、1回注意したのにも関わらず反省しなかったのでその部屋にいた全員は罰として就寝時間を越して書くことになったのだ。彼らが騒いでいたのが就寝する時間の直前だったという要因もある。
もちろん太陽先生も強く注意され、今度奢ることになったらしい。
「それは認める。だけど、枕投げし始めたのはコイツだし、陽斗も乗ってきたし、市原も静観してたとこあるし、白石だって枕投げであんなにキレることないだろー? 1人は寝てたけど」
「いや、俺は結構注意してた! お前ら全然聞いてなかっただろ?」
「ええー、枕投げ楽しかったからいいじゃーん」
「いや、お前速攻で白石に沈められてただろ」
「そ、それは、白石が怪物だからだよ! 俺は非力なんだよ! もっと大事に扱ってくれ!」
バスの中で騒ぎ出す3人。朝という事もあり、寝ている人が多く見られる。陽斗もそのうちの一人で、その騒ぎの中にいるのに関わらずぐっすりと寝ていた。
「おい、お前らまじで黙れ······」
「うるせえ、寝れねえし」
先程からうるさい男子達に、太陽先生が真っ赤な目でこちらをジロっと睨み、白石は苛立ったようにこちらを鋭い目付きで見てくる。
それにその場の皆はサッと口を噤む。
いつもと雰囲気の違うマジ切れ寸前の太陽先生はまあ置いといて、白石からの圧が凄い。殺気が飛び交い、これ以上騒いだら死ぬ、と咄嗟に思った。
その結果、目的地に着くまで誰一人として話さず、とても静かだった。
***
「それじゃあ、4組は14時になったらここに集まれよー」
太陽先生はそれを言い残すと、先生達が集まっているところへ駆けて行った。
皆は班に別れてそれぞれに散らばる。
陽斗達は、相変わらずいつもの8人で一緒に回る。
「はあ!? 俺、凶なんだけど!」
「え、私も······」
高柳と三浦が驚いたような、悲痛そうな顔で、自分の手に持つお御籤を凝視している。白石は体が固まってはいるが手がプルプルと動いているのを見ると、恐らく彼も引いてしまったのだろう。
「やったー! 俺大吉!」
「私も!」
陽斗と成美は大吉が出たことで飛び跳ねたように喜んでいる。そんな2人の様子を見て、3人はさらに絶望したような表情へとなっていく。
「嘘だろー!! 神様あー!!」
「ううぅ、こんなの、破いてやる!」
高柳は膝を着いて空へと両手を広げながら絶叫し、三浦は理不尽な結果にカッとなったのか、今にもお御籤を破りそうな勢いだ。白石は相変わらずピクリとも動かずに、目の前のお御籤をただただガン見していた。
「3人とも、安心して。ここのお御籤は他より凶が多いらしいから」
「え、そうなの?」
「それ、本当か?」
そんな平然とした西島の言葉に、3人は西島をバッと見て、それは本当かと、確かめるような目で見つめる。3人の目には僅かに安堵したような表情が入っている。
「逆に凶引いて良かったんじゃない?」
「滅多に引けないもんな、凶とか」
吉だった市原と天音はなんとも言えない結果に、逆に珍しいのを引いた3人を羨ましそうにしている。吉だなんて、平凡で特に面白みがなく、それを引くならばありふれていない凶の方が断然良かった。
それを聞いた3人はさっきとは打って変わって嬉しそうな表情へと変わる。先程の暗い雰囲気など全く感じられない程に、彼らは笑顔だった。
「そうだな! 逆に凶を引いた俺はある意味大吉かもしれない!」
「いや、結果は凶で変わらないんだけどね」
「単に珍しいってだけだろ」
自慢するようにその凶を周りへ見せびらかしてはしゃぐ高柳に釘をつく西島と市原。
それに3人はハッとしすると、みるみると顔が沈んでゆく。
感情の起伏が忙しい人達であった。
読んで下さり、ありがとうございますヾ(๑ㆁᗜㆁ๑)ノ"
ここ最近、Switchのスプラトゥーン2ばっかりしてます。いやあ、負けまくってますが中々やめられないですよねぇ。負け続けると勝つまでやり続けたくなるというループにハマりまくってます。いかん、小説書かんば。




