9,勉強会①
すみません! 更新遅くなりました!
季節のかわりを感じさせる、少し肌寒い風が吹く中、陽斗は私服で駅にいた。黒のズボンにパーカーとその上にジャンバーを羽織っている。ラフな格好である。
今日は皆でクラス会をする日である。陽斗はワクワクな気持ちを抑えられずつい家を早く出た。それで30分ほど早く待ち合わせ場所に着いてしまう。
陽斗は何回も時計を見て、誰か来ないかとキョロキョロと辺りを見渡す。
「あ、今宮君! おはよう! はやいね」
陽斗は横から声を掛けられる。
そこにはいつも2つ結びに縛っている髪は下ろした成美が立っていた。軽く化粧をしており、黒い髪が風になびいていた。
「おはよ! あれ、林さんの目、今日きらきらしてるね!」
陽斗は成美の顔を覗き込む。
「わ、今宮君、ち、近い!」
陽斗の顔が急接近してきて、成美は驚きながらも顔を赤くする。
「あ、ごめん! なんか、制服じゃないから新鮮だね!」
「う、うん、そうだね」
お互い少し赤い顔をそっぽに向ける。2人の心の振動はいつもより早くなっていた。
「二人ともおはよー!」
そんな時、市原と西島と三浦の3人が一緒にやって来た。
「あれ? 成美、なんか顔赤くない? 熱?」
ほっぺが少し赤くなっている成美に問う三浦。
「い、いや! 大丈夫だよ! 元気!」
成美は慌てて答える。
市原と西島は陽斗がまた何かやったのだろうと察し、その張本人をじっと見つめる。
「え、な、なに?」
急に2つの視線を浴び、きょとんとする陽斗。また無自覚なのかと、2人はため息をついた。
「てかさ、男子3人とも身長でかいね! 何センチあるの?」
三浦は自分と男性陣の背丈を手で比べながら聞く。3人は一般男性より一際大きかった。
「俺は187センチ」
「181!」
「183センチだよ!」
市原、陽斗、西島の順で答える。
「え!? 高っ! 皆180センチ越えじゃん!」
三浦と成美は驚く。
「今宮君って意外と高いんだね」
成美が陽斗をまじまじと見つめる。
「ま、後々この2人も抜くから俺が1番でかくなるけどね」
「はあ!? 身長だけは抜かれないからな!」
市原がドヤ顔をしながら言う陽斗にビシッと指さす。
「市原君は、今宮君にバスケで負けたのが悔しいんだよ」
西島が爽やかな笑顔で陽斗を見る。
「な! 西島!」
市原が慌てる。
「へえー、だったら、なおさら身長も抜いちゃおう!」
陽斗はにやにやする。
「く、バスケ追い抜かして、身長も抜かしてやらないんだからな!」
「それじゃあ、あと来てないのは高柳だけだね」
そう言いながら時計を見る西島。約束の時間から十分過ぎていた!
「遅い! 過ぎてんだけど!」
「ほんとだよ、赤点のくせに遅れやがって」
三浦と市原がブーブーと非難する。
「ごめーーん!! 寝坊したーー!!」
すると、何やら大声で走ってくる高柳の姿が見えた。
「どうしたの?」
陽斗が高柳に聞く。
「いや、昨日さ、七時半まで補習残されたじゃんか!? あれで、頭ショートしてよ、死んでたんだ!」
高柳が空を仰ぎながら叫ぶ。
「いや、赤点だからしょうがないだろ」
「それだけで頭ショートしたの!? あたしより馬鹿じゃん!」
市原と三浦に突っ込まれる。
「しょうがねえだろ!? いつもは部活の時間だし、勉強なんてしねえし」
「だから、赤点なんて取るんだろ」
市原に再び突っ込まれる。
「ま、まあ、でも、今宮も嫌だよなあ!? こんなに補習遅くまでよお!」
今宮に同意を求める高柳。
「何を言ってるの!? 勉強は青春じゃないか!」
陽斗が反論する。
「え、お前何言ってんだ? 頭、大丈夫か?」
少しズレた発言をした陽斗を不審な目で見る高柳。
「え、高柳君には言われたくないよ!」
そう言う陽斗だったが、市原と西島はお互い様だよという目線を送る。
「ところで、高柳は身長何センチあるの?」
三浦が高柳に聞く。
「確か、174センチだったかなー」
「え、低っ!」
「はあ!? 低くねえぞ! 平均は超えてんぞ!」
「いや、だって······」
そう言って、三浦は高柳以外の三人を指さす。確かに、その三人に比べれば、高柳は断トツ低い。
「い、いや、そこの三人はバスケ部じゃん! 俺はサッカー部なの!」
高柳は必死に言い訳をする。
「え! 高柳君、サッカー部なの!? かっこいー!」
陽斗はきらきらとした顔で言う。中学の時、陽斗はほぼ毎日、運動場で楽しそうに走るサッカー部を見てきたのだ。暑い中、寒い中、雨の中も。陽斗にとって、サッカー部は尊敬に値するのだ。
「お、おう! まあな! 実は、俺な、次期エースと呼ばれてるんだぜ!」
高柳が褒められて、嬉しそうに言う。
「いや、お前、普通に補欠組じゃねえかよ」
市原に突っ込まれる。
「な! 市原はいつも一言多いんだよ!」
そして、やっと進み始めた六人は、近くのスーパーへ寄る。
「じゃあ、俺らお菓子とジュース買いに行くから、女子二人はちょっと待ってて」
「分かった!」
そうして、スーパーの中へ入る男子四人。
「じゃあ、俺と西島はジュース選んでくるから、今宮と高柳はお菓子よろしく!」
「分かった!」
「ラジャー!」
そういう事で、お菓子コーナーへと向かう陽斗と高柳。
「あ、これ食べたい!」
「あ、いいな、じゃあ、これも食べようぜ!」
勉強会だから、結構お菓子いるかなと思い、陽斗は高柳と一緒に次々と食べたいお菓子を籠に入れまくる。
籠いっぱいにお菓子が入った所で、ジュース組と合流する。
「おお! 何選んだんだ······って、多すぎだよ!?」
籠いっぱいのお菓子を見て驚く市原と西島。
「え、ごめん! どれだけいるか分からなくて」
「だって、食べたいお菓子いっぱいあったんだもん!」
「いやいやいや、お前ら勉強会っていうの分かってるのか!? それの三分の一に減らしてこいや!」
二人はしぶしぶお菓子を厳選した。
そんなこんなで、六人は買い物袋を持って、勉強会開催地である、高柳家へと向かう。しかし、道は高級住宅街へと入った。周りは豪邸だらけである。
「ねえ、高柳、これ道あってるの?」
三浦が心配そうに高柳に聞く。
「ああ、合ってるよ、もう少しで着くぞ」
そう言って、ずんずん進んでいく高柳。市原以外の面々は高級住宅街に圧倒されつつ、不安そうについて行く。
「あ、ここだよ」
そう言って、高柳が指さす方は、この高級住宅街の中でも一際目立つ、大きくて綺麗な家。門の威厳が凄い。
「こ、ここ!?」
「え、高柳君、お金持ちだったの!?」
皆が驚く。さすがに、これは半端じゃない家である。
「まあな、高柳食品って知ってるよな? それ、俺の親父の会社なんだ」
「え!? 高柳食品!?」
「超有名じゃん!」
みんな驚く。それもそのはず、高柳食品は日本トップの会社である。皆、一度はその名前を聞いたことがあるほどだ。
「あれ、市原君は驚かないの?」
一人驚いていない市原に陽斗が気づいた。
「まあ、高柳とは中学からの付き合いだしな。知ってたから」
「そうだったんだ」
陽斗は納得したように言う。
「じゃあさ、高柳はその会社継ぐの?」
三浦が高柳に聞く。
「そうかもな! 社長になるかもな!」
「え、その頭で?」
「赤点なのに?」
「将来の高柳食品が心配だ」
皆、高柳を不安そうに見つめる。
「な! いいんだよ! 俺は人望が厚いから!」
高柳はそう言うが、逆にその視線は強くなる一方である。
「ま、まあ、早く入るぞ!」
そう促され、六人は高柳家に入るのだった。
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