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芸能人、やめました。  作者: 風間いろは
高校2年生
106/138

99,誕生日②

PVが50万突破しました!わーい٩(◜ᴗ◝ )۶

本当にありがとうございます!

いつか100万突破しないかな〜、したいなあ〜


部活が終わり、陽斗と成美の2人は、横に並んで薄暗い道を歩く。


今日は陽斗にとってとても良い日だった。皆が誕生日を覚えていてくれ、プレゼントまで頂いた。


皆に何かを返さないとだ、と思いながら陽斗は傍から見てわかるほど上機嫌で歩いていた。


だが、陽斗はふと気づいた。



成美からプレゼントを貰っていないということに。



そういえば、隣にいる成美はいつもより挙動不審だ。目の動きは落ち着きがなく、話している時に目がいつもより合わない気がするのだ。


まさか、プレゼント忘れてしまったのか。買っていないのか、家に置いてきたのか分からないが。


だが、陽斗はハッとする。


自分はプレゼントを貰う前提でいた。何と、おこがましいのか。自意識過剰すぎた。


反省しよう。


だが、このまま貰えないのも少し寂しい。少しだけ希望を持っておきたい······! いやいや、何また自分は自惚れてるんだ。


くそ、消えろ、この思い上がっている自分! 謙虚になれ!



陽斗が心の中で格闘をしていると、気がつけばもう駅の目の前にいた。


陽斗の心が少し沈んだ。

だが、それを悟られないように、いつも通りを装って、陽斗はその場を去ろうとする。


「それじゃあ、また明日ね」


「は、陽斗くん。ちょっと待って!」


陽斗が背を向けて歩きだそうとした瞬間、成美が呼び止める。

後ろを振り返ると、少し顔が赤いような成美がオドオドとしている。


「はい、改めてだけど、お誕生日おめでとう」


成美はうつむき加減で、カバンから取り出した袋を陽斗に差し出す。彼女の耳は真っ赤で、視線が泳いでいる。


その様子を見て、陽斗は安堵したような嬉しいような、勇気を出して渡してくれた彼女に暖かい目を向ける。


「成美、ありがとう」


陽斗はそのプレゼントを受け取り、とびっきりの笑顔を成美に向ける。


「う、うん。でも、ごめんね。なんか、変に緊張しちゃって、中々渡せなかったの」


成美ははにかんで笑う。

いざ渡そうとすると変に動揺してしまい、それが長引いてしまって更に言い出すタイミングが分からなくなったいった。


帰り際に微かに寂しそうな表情を浮かべている陽斗を見て、「ここで渡せなかったら絶対に後悔する」と思って渡すことが出来たのだ。


「いいよ。俺もごめんね。プレゼントないのかって思って、ちょっと表情に出ちゃってたよね」

「ううん」


2人はここでやっとちゃんと目が合う。そして、安堵したように笑い合う。何故だか少しだけ気まずい。


初めて付き合った時かのような初々しさが2人を包んだ。



「プレゼント、開けてみて」

「いいの?」

「うん」


駅の近くのベンチに座り、陽斗は袋を開封し出す。そして、中から出てきたのは、


「お財布だ、小さいやつ! あ、これ、前に俺が欲しいって言ってたやつだ」

「そう、凄く気に入ってたから」

「覚えててくれたんだ」


陽斗は目を輝かせて、手元にあるお財布と成美を交互に見る。陽斗はとても満足そうで、おもちゃを買ってもらった子供のような姿に、成美は微笑んで見ていた。



もちろん、陽斗は次の日からそのお財布を使っていた。

それを見た成美が喜んでいたのは言うまでもない。



***



いつも通り、公園のバスケコートに寄り、バスケ友でありライバルでもある剛力からはお下がりの部活用のウェアとズボンを貰った。


陽斗は白石と共に帰路へと着く。



「ただいま〜」


陽斗が玄関のドアを開けると、いつもより明らかに靴が多かった。しかも、リビングからは多くの声が聞こえ、そのどれもが聞き覚えのあるものばかりだった。


陽斗が駆け足でリビングへと向かい、リビングの扉を開けた。


「お、陽斗! お帰り!」

「あ、やっと来た〜!」

「お邪魔してるぞ〜」


芸能人の頃の友人らが、我が物顔でリビングの椅子に座り、食事を食べていた。冴木、園田、爽司、菜那、湊の5人だ。厳しい芸能界の中を必死に生きてきた戦友たちだ。


「突っ立ってないで入ってこいよ」


入口で硬直する陽斗たちをリビングへと招き入れる。

ちなみに、この5人は度々この家に来ているので、陽斗のモサっとした姿にはもう見慣れている。とは言っても、最初は爆笑して、陽斗は少し恥をかいたのだが。


「白石くんも畏まらないで楽にしなよ」


既に赤い顔をしていつもより陽気な爽司は、硬い白石の背中をバシバシと叩く。白石の顔に僅かに嫌悪感が浮かぶ。叩かれている背中が痛いのと、口から漂ってくる匂いがキツい。

それを見た園田はすぐに止めさせた。


白石も既にこの場にいる人達とはもう面識がある。陽斗の家に居座っている白石だから、普通に話す仲だ。

だが1人1人のオーラが凄く、それが全員集まると萎縮してしまう。


さすが芸能人は違うと、思わされる場面であった。



「本当に、何で皆いるの!?」

「何でって、今日は陽斗の誕生日だろ!」


陽斗は嬉しいというよりも驚きが勝っていた。

皆、仕事や学業で大変にもかかわらず、5人全員揃っているなんて。いつもは多くて2人なのに。


「うううぅ〜、皆、本当に、ありがとう〜」


感激のあまり、陽斗の目から大量の涙が溢れ出す。

自分の誕生日に時間を空けてくれた友人達、そして今日多くの人から祝ってもらい、今ここで突然だが心にグッとくるものがあった。


「陽斗〜、泣くなよ〜」

「泣き虫なのは変わらないね」


泣く陽斗の頭や背中を軽く叩き、そんな陽斗を見て皆は笑みがこぼれる。


子供みたいで可愛くて、でも男らしい時もあって。

頑張ろうとしてもがく姿にいつも励まされ、でもそれは少し脆そうで。

いつ、どんなときも、守ってあげたくなる。

だけど、彼はそんな枠には入らずに自分の道を歩いてく。

少し寂しい、でも自分たちはそんな彼を応援しよう。

彼の行く末を見てみたい。だって、いつか、何かすごい事をやるような気がするから。未知数で、そんな彼をそばで見ていたい。



「はい、これ、プレゼント」


皆は陽斗にそれぞれのプレゼントを渡す。各々真剣に選んできたものだ。どれが1番陽斗が気に入るか、という勝負もしているのだとか。


「うわああぁ〜、皆、本当にありがとう。俺は幸せだ」


落ち着いてきた陽斗だったが、再び涙を流し始めた。


「全く、子供かよ」


皆は泣きじゃくる大きな子供を暖かい眼差しで見守る。




ようやく通常通りになった陽斗たちは話に花が咲く。


「え!? 陽斗さん、文化祭で演技してたんですか!?」

「ずるい! 私も見たかった!」


陽斗に心酔する1つ年下の湊と、陽斗に好意を寄せる奈々が、ミュージカルを見に行った2人に羨ましげな目を向ける。

2人とも仕事があったため、それを知っていても行けなかったのだが。駄々をこねると思った冴木は、あえて誘わなかったのだ。


「相変わらず凄かったな。師匠としていうけど、素晴らしかった」

「それは言い過ぎですよ」


園田は演技力に定評がある人だ。多くの人から慕われている。演技には自分にも相手にも厳しい。そんな彼が褒めるのは滅多にない事なのだ。


「私も見たかったのに······!」

「動画回してたから、後で送ってやるよ」

「まじすか!? 神すぎます! ありがとうございます!」


しょんぼりとする湊と奈那は、冴木の一言ですぐに蘇った。

この後、その動画を貰った2人は食らいつくように画面を見、何度も見たという。




「というか、陽斗、彼女出来たってまじ?」


そんな突然の爽司の言葉に、ちょうど食事をしていた陽斗はむせる。


「ちょっと、急に何を言うんですか!」

「紹介してくれよ、可愛いんだろ?」


詰め寄る爽司に、陽斗は顔を赤らめて慌てる。


「え、それ、ほんと······?」


それを聞いた菜那の顔が強ばる。箸を動かしていた手を止め、確かめるように陽斗を見る。


「うん、まあ、そう」

「まじか。気になるな、会いに行こうか」

「絶対にやめてください!」


あまり遠慮のない爽司に、陽斗は明らかに照れ、落ち着きがない。


菜那の表情が微かに沈む。でも、それを頑張って隠しながら、この日の誕生日会は終わりを告げた。



***



ホームで電車を待って立つ奈那の頬に、ヒヤッとした風が撫でる。ただ力なく呆然としていた。


そこへ電車がやってきて、奈那はドサッとその席に座る。

放心状態の奈那の頭に蘇るのは、恥ずかしそうに顔を赤らめていた陽斗の姿。


奈那の頬に涙が伝う。

1人になって気が抜けて、泣きたくないのに出てくる涙。


乗っている人は少ないが、周りに聞こえないように押し殺して泣く。「止まれ」と思うのに、それに反して涙はとどまることはない。


鼻をジュルジュルといいだしたので、奈那はバックを開けた。が、ハンカチもティッシュもなかった。家に置いてきたか、陽斗の家に置いてきたか。


「最悪······」


それに何故か余計に悲しくなって、涙はどんどん溢れ出す。



「大丈夫ですか?」


座っている奈那の近くに立っていた男が、泣いていることに気付いたのか声を掛けてきた。


奈那は被っていた帽子を深く被り直す。芸能人である顔と、泣いている顔を晒したくなくて。


「良ければ、これ、使ってください」


男はハンカチとティッシュをそっと奈那の横に置いた。


「え、だ、大丈夫です! 返しま······」


そう言って顔を上げた奈那だったが、既にその男は閉まったドアの向こう側にいた。


「あっ······」


奈那はどんどん遠くなってく男の後ろ姿を見た。制服を着ているあたり、どこかの高校生だろう。しかも、それはさっきの誕生日会で見たばかりの制服だった。


そして、男が置いていったハンカチとティッシュをそっと拾う。



「······西島?」


広げてみたハンカチには、そう、名前が書かれてあった。



読んで下さり、ありがとうございます(ˊo̶̶̷ᴗo̶̶̷`)



最近大体17時に投稿してるのに昨日も今日も何故23時に?と思った方へ。 昨日は普通にミスり、今日は投稿しようと思ったけど間に合わなかったやつです。いつもなら間に合わなかったら明日に回すけど、今日は投稿する気満々なので投稿しました笑

(ちなみに、余裕ぶっこいてたらストック無くなりました······)


これからは何かない限り、大体17時投稿の予定です!よろしくお願いします!



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