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全ての始まり

 魔王なんて特別な存在だと思ってた。ゲームの中の魔王はいつでも悪いことをしている存在。悪の中の悪ってイメージしか無い。けど、勇者も本当に正義なのかな?

 そんな風に疑問を持つようになったのは高校生になった時だった。ゲームをしていると時々思う。悪にも悪なりの理由があるんじゃないのかって。だから、正義だー!って力を振りかざす勇者が本当に正義なのか分からなくなった。

 そんな時にあんなことが起きた。


「私の四天王になりなさい!」

「いや、お前誰だよ。いきなり美少女が出て来て四天王になりなさいとかなるに決まってるだろ」

「断る理由もわか―――え、なるの?」

「なるよ。美少女からのお誘いを断るほど童貞をこじらせてないからな」

「どうてい? まぁ、いいわ。私の名前はスカーレット。魔王よ!」

「んー・・・熱は無いか」

 登校中にいきなり現れて四天王になれとか魔王とか言われたから思わず自分に熱があるのかって疑ったけど大丈夫だった。なるほど。目の前の美少女が頭おかしいだけだったのか。なら、安心だな。

 俺の何気ない日常はこうして過ぎていくのであった。~end~

「勝手に終わらすなーーー!!」

「朝からうるさいぞ。急に現れて四天王になってくれだとか意味わからないこと言われて信じられるか?」

「え? けど、さっき入ってくれるって・・・」

「嘘だ。信じよう」

 俺は紳士だ。美少女の涙を見るわけにはいかないからな。だから、どれだけ疑わしい話でも信じよう。それが紳士だからね。

「本当! やった!」

「はぁ・・・俺は、これから学校だからまた後でな」

「学校? 学校って何?」

「は? 学校は勉強をするところだよ。クソつまらない閉鎖空間さ。何をやるにも互いの腹の内を読み合う嫌な場所」

「つまり、戦場ね・・・。なるほど。四天王がいきなり初陣するなら魔王は見送らないといけないわね」

「戦場? 何言って―――」

 俺の言葉はスカーレットとかいう頭のおかしい魔王の口付けによって途絶える。あ、ファーストキスの味はイチゴ味。とか思うこともなく、頭が真っ白になった。

「な、何やってるんだ!?」

「え? 戦士が戦場に出るのだから魔王が送り出しをするのは当然だろ?」

「いや、その送り出しってのが何でキスなんだよ!」

「うーん? 普通のことではないのか?」

「普通じゃねぇよ・・・。てか、さっきから手の甲が光ってるの何なんだ」

「お。契約が完了したようだな。私の部下としての契約が完了したから手の甲に印が表示される」

「契約? 印? とりあえず、もう行くわ。学校に遅刻するからな」

「いってらっしゃい!」

「簡単に行かせるんだな。ずっと傍にいろとか言いそうだったけど」

「すぐに分かる。私との契約をしたということの意味を」

 急にゾワッとした雰囲気を感じる。何だ? 今まで平穏だったのに急に嵐の中に放り出されたような感じだ。

 まぁ、いいか。学校に遅れないようにしないと。

「やっと動き出した。これで、救える」


「おい、羽島。その手どうしたんだ? 遅れて来た中二病か?」

「まぁ、そんなところだ。やれやれギリギリセーフだったか」

「優等生のお前がギリギリなんて珍しいな」

「優等生は演じてるだけだ。欲しいのは内申点だ。それ以外はいらない」

「腹黒いねー。そういえば、ソシャゲでこの前出た武器が―――」

 何気ない会話と何気ない日常。いつも通りの平和な日常に俺は安堵する。やっぱり魔王なんておかしな話だよな。大体四天王とか意味わからない。はぁ、俺はただ普通の生活を過ごしたいだけなのにな。

 ・・・何かおかしい。俺の目の前にいる辰巳 健が一切動いていない。というよりも、周りの時が止まってる感じだ。おいおいおいおい。漫画みたいな展開な訳じゃないよな。

「時計の針すらも止まってる。マジかよ。フィクションの世界だけにしてくれよ!」

 コツコツという廊下を歩く音が響き渡る。この状況で動けるのなんて十中八九やべぇやつだろ。ここは音を殺して気配を絶たないと。

「この教室ね。魔王の契約者であり、四天王の一人がいるのは」

 凛とした声が聞こえる。この声聞いたことがあるな。確か、生徒会長の立花 舞だっけか。2年生なのに生徒会長になって、学校中の男子から彼女にしたいランキング1位の超美少女だったはず。俺は、性格が悪そうだから覚えてない。

 ドゴォン! という音と共に教室の扉が吹っ飛ぶ。いやいや、扉ぐらい開けて入れよ。

「さて、誰かしら。魔王なんてクソみたいな奴の契約者になったのは」

「クソじゃねぇ! あれは美少女だ! ・・・あ」

 思わず叫んでしまった。仕方ないじゃん。美少女なのにクソとか言われたら反抗したくなるじゃん? あぁ、終わった。

「えーっと・・・1年生の羽島 優斗くんだったわね」

「そ、そうですけど? 何か用ですか?」

「この異常事態についてどう思う?」

「フィクションだけの世界にしてくれって思いますね」

「そう。私もよ」

「奇遇ですねー。なら、互いに穏便に事を済ませ―――」

「という訳で死んでね」

 いきなりの殺害予告な上に10m以上は離れていた距離を一足飛びで詰められた。なんて身体能力だよ。そのまま思い切り腹を殴られる。

「がはっ! ・・・人間の力じゃねぇじゃん。マジで死にそう」

「当り前よ。私は勇者。魔王を討つ存在だもの」

「マジかよ。魔王に勇者ってゲームの世界かよ」

「あながち間違いでないかもね。とにかく、魔王に与する者は死になさい」

 紙一重で避けれた。けど、空を切った拳の風圧で思わず倒れちまった。そして、倒れて空いた胴体に思い切り拳が振り下ろされる。

「がっ! ゲホゲホ・・・ぐが・・・」

「肋骨などが折れているのによく生きてますね」

「な・・・んで、魔王を・・・」

「なぜ魔王を倒すか、ですか。私が勇者だからですよ。神からの命令で魔王を倒すのが私の使命なのです。だから、私は魔王 スカーレットの世界すらも滅ぼしました。正義のために」

 あぁ、正義って何だっけ? 魔王は悪だから世界を滅ぼしていいのか。

 ・・・違う。違うだろ。悪だとか正義だとか関係ない。俺は―――

「正義だからっていくつの命を奪った。魔王だとか勇者だとか知るか。俺は、そうやって何かのためにと間違った力を振りかざす奴が嫌いだ。

 魔王が何をした? 勇者だから何をしてもいいのか? 笑わせるなよ。

 俺は―――」

 そうだ。あの美少女が四天王に入ってくれと頼んできた時の顔はどうだった? 不安と悲しみで染まっていた。誰もに断られたんだろうな。そりゃ、いきなり訳の分からないこと言われたら誰でもそうする。

 けど、俺は違う。俺は、知ってしまった。彼女があんな顔をする理由を。俺は頼まれてしまった四天王になることを。

「俺は、戦う。魔王スカーレットの眷属であり四天王の一角として」

「あれだけの傷が一瞬で回復した? それにその手の甲の印は・・・。魔王と契約した愚か者ですか」

「バーカ。可愛い美少女からのお誘いなら断らないのが紳士なんだよ」

「意味が分かりません」

 勇者はさきほどと同じ要領で一気に近づいて拳をたたき込もうとする。だが、その拳を俺は止める。

「すげぇな。今までに感じたことが無い力を感じる」

「そうやって悪のために力を使うのですね」

「悪ねぇ・・・。あんたはこの教室に来て何をした? 周りを見てみろよ」

 周りで時が止まっている人間が吹き飛ばされている。恐らくこの空間が戻ったら大怪我どころじゃ済まないだろうな。

「正義のための犠牲です」

「ハハハ、どっちが悪か分からないセリフだな。いいか、俺は犠牲を出さずに勝つぜ」

 最小限の動きと最上限の力で勇者に攻撃していく。全て急所を狙った攻撃。そして、勇者は倒れて動けなくなる。

「何が・・・どうなって・・・」

「あぁ、悪い。言い忘れてたわ」

「何・・・を・・・?」

「俺は、忍者の末裔なんだよ。格闘なら任せてくれよな」

 そうして、俺の平穏な日常は壊された。魔王と勇者によって。けど、美少女によって誘われた四天王ってのも悪く無いなって思い始めてる。

 そう、この時までは。まさか、世界の命運を掛けた戦いになるとは思わないじゃん。

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