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現実逃避

きて欲しくないと願っても毎日朝はきてしまうもので。

いっそ夢だったら良かったのになんて思っても虚しいだけだった。

泣き疲れて、身体もだるかった。

休みたいな。


すると、

「香梨菜、起きたの?」

と母さんが部屋に入ってきた。

母さんは何も言わずに私の顔をそっと撫でてくれた。


目線を机に向けてお皿を確認したのだろう。

小さく息を吐き

「休む?」

と聞いてきた。


「いいの?」


「お母さんだって、女の子だったわよ」


と立ち上がって、ポンポンと私の頭に2度手を置いた。

そして、空になったお皿を持って部屋を出て行った。


安心した私はもう一度ベットに潜りこんだ。

でも目をつぶると昨日の楽しそうな今野の顔が浮かんできてあんなに泣いたのにまた涙が零れてきた。


初めから解っていたことなのに


そう、初めから解っていたのだ。

それなのに今野を好きになってしまったのだ。

誰が悪いわけでもない、自分が悪いだけなのだ。


あんなに楽しそうな彼女を彼から引き離そうとしている。

おまじないをしていると言う事はそういう事なのだから。


何度考えてもそこに答えがたどり着く。


学校を休みたかったのは自分なのだが、こう一人で部屋に篭っていると頭がパンクしそうだった。


何か飲もうとキッチンへと向い冷蔵庫を空けた。

よく冷えたウーロン茶をコップに注ぎ一気に飲み干した。


「どう?たまにはおばあちゃんのとこ行こうか。おじいちゃんお友達と温泉旅行行ってておばあちゃん一人なんだって!」

唐突に母さんが言った。


そういえば最近行ってなかったな。

私は直ぐに頷いた。


「そうと解れば、ハイ。」

そういって渡されたのは保冷剤。


目を冷やせって事だね。

「ありがと。」


そういって洗面台に置いてあるタオルにくるんで目に当てた。

ひんやりして気持ちが良かった。


それから30分後、

「どれどれ?」

なんて私の顔を覗き込む母さん。


「まあ、こんなもんでいいでしょ。」

と私から保冷剤を取り上げると、準備準備と私を2階へ押しやった。


まだ、腫れぼったいのは解ったけどしょうがないもんね。

気分を変える為にお気に入りの服を取り出すと鏡をみないように袖を通した。


ふとベットに置いてある辞書が目に入る。

誰に向かってなのか

「ごめんね」

と呟いて母さんの待つリビングへ降りていった。


おばあちゃん家は車で1時間。

道が空いている時には40分位でつくのだけど、今日は平日の午前中。

渋滞は真逃れないところだ。


私の気分とはうって変わって天気は良好。

渋滞さえなかったら最高のドライブ日和だった。


「なんで、こんな道混んでるのかしらねぇ」

なんて言ってるけど母さんはべつにイライラした様子も見せず、ラジオから流れているメロディを口ずさんでいる。

懐メロらしく私にはさっぱりな歌だった。


「あっあんなところにお店あったっけ?」

母さんの言葉に目を向けるとそこにはログハウス風の可愛らしいお店があった。


「寄っちゃう?美味しいケーキあるかもよ!」

母さんは私が断るとは思っていないようで、私が返事をする前にウインカーを出し、車線を変更していた。


「勿論!」

遅らばせながら返事をした。

母さんはにっこり笑った。


お店へ入るとやっぱり正解!

お店の中はまるで森の中の喫茶店?!ん〜表現不足で申し訳ないけど素敵なお店だった。


「どうする?おばあちゃん家までもって行く?それともここで食べちゃう?」

いたずらっ子のように笑う母さん。

ちょっと可愛いなんて思ってしまった。


「今度また食べに来ようよ。おばあちゃんと一緒に食べたいな。」

と私が言うと


「それでこそ、我が子だよ」

とご満悦。


そして、私が選ぶのはやっぱりショートケーキだった。

お母さんは”オペラ”おばあちゃんには”モンブラン”を買ってお店を出た。


久し振りに会ったおばあちゃんはいつもと変わらず優しい笑顔を向けてくれた。

「今日は学校お休みだったのかい?」

と聞かれ、曖昧に頷いてみる。

お母さんも何も言わずにそのまま3人でケーキを食べ他愛もない話をしたりして、おまじないのことは全く思い出さなかったとは言えないけど、ほんの少しだけ気持ちが落ち着いていた。

私を無条件で可愛がってくれるおばあちゃんの家だったからかもしれないな。


楽しい時間もあっという間に過ぎて夕方になってしまった。

おばあちゃんは夕飯食べていく?と言ってくれたけど、明日も学校があるし父さんも帰ってくるから帰ることにした。

尤もおばあちゃんでご飯を食べたとしても、お父さんは良かったなって言うだろうけどね。

そんなお父さんだからお母さんは帰ろうと言ったのかもしれない。

子供の私がいうのもなんだけど両親はすっごく仲が良いんだ。

照れくさいから言わないけどちょっと自慢の両親です。


家に着いたら、お母さんはテキパキと夕飯の準備を始めてあっという間に出来上がった。

見事な手際の良さ!私がそういうとお母さんは香梨菜もそうなるわよとふわっと笑った。


夕飯を食べ終え、お風呂に入りまた寝る時間になってしまった。

ベットに腰掛て、じっと英語の辞書を見つめる。


心苦しかったけどまた枕にしてしまった。

後1週間かぁ。


ただのおまじないされどおまじない。

1週間良心との葛藤は続くんだろうな。

そう思いながら眠りに着いた。














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