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イニシャル

あれから2日後。

やっと私は4葉を見つけられたことをみんなに話せた。

みんな口々に

「良かったね」

と言ってくれた。


でも誰の名前を書いたかは言えなかった。

そもそもみんなは私が先輩以外のイニシャルを書くとはこれっぽちも思っていなかったようなので何も聞かれなかったのだけど。


1ヵ月後が楽しみだね。

なんて嬉しそうに話をしていた。


でも実際は私と愛以外は彼がいたりなんかする。

それでもおまじないをしているのは、ずーっと一緒にいられますように!

と願う事らしく、恋のおまじないという行為を楽しんでいるようだった。


英語の辞書に4葉を挟んで1週間経った。

相変わらず私は渡り廊下に立っている。

勿論先輩を見ることが一番の楽しみではなくなっていたのだけれど、麻耶達に連れられて断る事もできずにそのままこうしている。

いつもと変わらず先輩の後姿を見送っていた。


「あー行っちゃった。」

歩美が呟くと、いつもだったら校庭へと消えて行く先輩が、くるっと向きを変えて戻ってきた。

そして、渡り廊下を見上げて目が合った?!

今までだって、下校の時など偶然を装って近くを歩いてみたりするも、先輩の視界になんて入った事なかったのに。

こんなこと初めてだった。

しかも先輩は少し微笑んでくれたようにも見えた。


麻耶も歩美も愛も良かったじゃん。

と先ほど起こった現実にニコニコ顔だ。


「うん」

言葉すくなに答えてみる。


”照れない照れない”なんて麻耶の声にもどう反応したら思い浮かばなかった。

もう限界だ。

1週間も黙っていた事素直に謝ろう。

心の中で決心した。


放課後思い切って声を掛けた。


「ねぇねぇ、今日さあそこ行こうよ!」


でも返ってきたのは


「「ごめん」」


麻耶と歩美の声が重なった。


「梅雨の晴れ間で天気が良いから出かけようって言われて・・・」

麻耶が言うと


「同じく」

歩美も同じらしい。


そっかぁデートじゃしょうがないよね。

折角勇気を振り絞って声掛けたのに、こんなものよね。


「私空いてるよ。たまには2人で行こうか。」

愛が言ってくれた。


「うんじゃあ今日は2人で行って来るから。」

私がそういうと、ごめんねーと言いつつ麻耶と歩美はささっと教室を出て行ってしまった。


「さあ、私達も行こう!」

愛に引っ張られて教室を出た。


昇降口まで来たら校門の先に誠君と一緒の歩美を見かけた。

後姿でもとても嬉しそうって解った。


「仲良いよね」

愛も目に入ったみたいだった。


「羨ましいなぁ」

勝手に口が開いていた。


「続きはゆっくり聞きましょう」

愛はにっこり笑い


「ねえ、私達もデートしない?こんなに天気がいいんだから!」

と言い出した。


「デート?」


「そうデート!コンビニでお菓子と飲み物買って公園行こうよ」

はしゃぐ愛に釣られて


「いいね!公園デート。行こう行こう!」


そうして30分後、私達はあの公園に来ていた。


「いい公園だね。ここで4葉探しててたんだ」

周りを見渡してきょろきょろする愛。


「そうなんだ」

あの時以来きていなかった原っぱに腰を下ろした。


1つ、2つ呼吸を整えて

「あのね、私好きな人が出来たの。」


愛は私の顔を見て

「その割には、あんまり嬉しそうじゃないね。」

と言った。

やっぱり解るよね。


私は出来るだけ解り易いように言葉を選んで愛に説明した。

ところどころつっかえてしまう私に


「ゆっくりでいいから」

と優しい声を掛けながら背中をさすってくれた。


言い終わると緊張の一瞬。

愛はなんて言うんだろう。

軽蔑しちゃうかな?

彼女のいる幸せそうな相手の名前をクローバーに書いてしまった事。


「そっかぁ。確かに彼女からしてみれば不愉快極まりないけど。人を好きになるって単純じゃないからね。」


軽蔑はされなかったけど、いいとも悪いとも言わなかった愛。


最後に

「だって、香梨菜が一番解ってるみたいだから。1つ言えることは麻耶だって歩美だってずっといられますようにっておなじないしてるでしょ。誰でもこの先の不安はちょっとはあるんじゃないのかな」

と付け加えた。


愛に話せた事でちょっとだけ気持ちが軽くなった。

確かに、彼のイニシャルを書いてしまった事で罪悪感がある。

他人の不幸せを願ってるみたいで自分が嫌いになりそうだった。

先輩のイニシャルを書いたら違ってたんだろうけどなぁ。

ふと考えた。


「あーっ」


問う突然声をあげた私に愛が不思議そうな顔をした。

今野陽人こんの・はると

神田弘樹かんだ・ひろき

2人共イニシャルが同じだった。


今頃気がつくなんて、ちょっと間抜けじゃない。

話を聞いた愛もちょっと抜けてるかも!なんて笑い出した。


いつの間にか辺りも暗くなってきたので一度私の家に行き母さんに会いを送ってもらうことにした。

愛の家まで母さんも交えてのおしゃべりは止まらず、とっても楽しい車内だった。










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