4葉のクローバー
喫茶店から私の自宅までは歩いてもそんなに距離はなかった。
まだ時間は大丈夫。
今なら、日が落ちるまでには間に合いそうだ。
私は自分から今野の手を取った。
「今度は、私に付き合って。」
そういうと
「何処へでも。」
とおどけて返事をしてくれた。
今度はバスに乗る事にした。
時間はあった方がいいからね。
段々と近づいてくる風景に今野も
「なるほどね」
と気がついたようだった。
そこは私達が再会した緑地公園。
そうあの広場だ。
ぐるっと見渡す、今日は弟君いないみたいだね。
きっと今野も同じ事を考えていたみたいで、回りを見渡すとほっとしたように一つ息を吐いた。
「今野とはここから始まったんだよね。」
……
暫しの無言の後
「もう呼んでくれないんだ、香梨菜は。」
それは拗ねたようなそんな声。
見上げるほどの大きな身体がほんの少しだけ小さくなっているように見えた。
本当はまだ追いつかないんだよ、だってもう何年も今野って呼んでたから。
香梨菜って呼ばれるのもくすぐったい。
だけど、やっぱり嬉しくって。
今野もそう思ってくれるのだろうか。
「陽人、一緒に4葉探そう。」
改めて呼ぶその名前にちょっと緊張しちゃって思わず探そうって言ってしまった。
こん……じゃなくて陽人の顔を見ないように芝生に目を落とした。
「4葉かぁ」
そう言って、陽人も私の隣にしゃがみこんだ。
4葉を探しながら、お母さんのおまじないの話をしたんだ。
ずーっと一緒にいれますように
と願いを込めて始めたこの4葉のおまじないの事を。
陽人はその話を相槌を打ちながら聞いてくれた。
そして、話を聞き終えた後はさっきよりももっと芝生に顔を近づけてくれた。
はたから見たら何ておかしな2人だって思うかな。
あの時の陽人じゃないけれど、コンタクトでも探してるって思われるかもしれないね。
2人で這い蹲ってみても中々見つからなくて。
大分、太陽も傾きかけたその時、ひっそり隠れるように揺れる4葉のクローバーを見つけた。
「あった!あったよ。」
根元から摘んだその4葉を得意げに陽人の前に出した。
すると、陽人も
「遅いって。」
そういいながら、私の前に4葉を差し出した。
唖然としてしまった。
確かあの時も弟君に先を越されたのだっけ。
だけど、今私の手の中に4葉があるのは紛れも無い事実。
だってあの時は何日かけても見つからなかったんだから。
でもね、あの時すんなり一日や二日で見つけられてたら、こうやって陽人と会えなかったんだよね。
これも、おまじないのお陰だよね。
芝生にしゃがみこみ、二人の4葉を交換して、カバンから取り出したペンで二人のイニシャルを書いた。
それを英語の辞書ならぬ英語の教科書に挟んだ私達。
まさか、陽人が一緒にしてくれるだなんて思わなかったけれど、結構のってくれたみたいで安心した。
だって、そんなのって一笑されるかもなんても思ったから。
そして、陽人が言ってくれたんだ。
「ずっと一緒にいような。」
って。
私も
「逃げ出したくても逃げられないかもよ。」
と英語の教科書を持ち上げた。
「上等。」
と笑った陽人。
あの時に見た笑顔と同じだった。
4葉のクローバーは恋のおまじないとなって、本当に私に恋をくれた。
4葉のクローバーのおまじない
時代とともに変化して、沢山の人に引き継がれて。
いくつもの友情や恋を見守ってくれていたのだろうね。
きっとこれからも。
ここまで読んで下さってありがとうございました!