おおきな手
「なるほどねぇ」
やけに気になる言いかたじゃないですか。
歩美はニヤついた笑いを浮かべ
「本当にそれだけなの?実はもうー」
その探る視線はなんなのでしょう麻耶さん。
愛に至っては瞳が語るというのでしょうか……
私すごーく居心地悪いんですけど。
今は昼休み真っ最中の屋上だったりする。
お弁当を広げながら、今日何度目かになるだろうそんな会話。
でもまあこれで麻耶や歩美に対しての隠し事も憂鬱な気持ちもやわらいだからそれで良かったのかもな。
「またあんたトリップしているの?いいね〜初々しくて!」
そんな言葉ももう何度目なのか。
だからあんた達事考えていたんだってば!
心の中で反論した。
その時場違いな音楽が―――
私の携帯だった。この音楽は今野からのメールだ。
私はポケットに手を伸ばしそっと携帯をさぐる。
途端に3人の顔が近づいてきた。
「遠慮しなくていいんだよ。見ればいいじゃん。」
「う・うん」
思わずどもってしまう私。
これじゃあ皆の思う壺だと思いつつも、メールが気になる私。
後ろを向きつつ携帯を開いた。
「今日帰り暇?」
それだけ書いてあった。
暇といえば暇なんだけど。
取りあえず
「暇だよ」
浮こうがそっけなければこっちもそっけない。
用件だけを返信してしまった。
それを盗み見ていた麻耶に
「あんた達熟年夫婦みたいだね。とても付き合いたての2人には見えないって。」
「そうそう、私達だってそんなそっけないメールしないって。っていうかそんなメールした日には大ケンカ確実よ。」
と歩美に呆れられてしまった。
そして、ちょっと貸しなさいという麻耶にあっという間に携帯を取り上げられて、何やらボタンを押し始める麻耶。
ちょっと止めてってば!
大きな声を出すも、もう遅し。
帰ってきた携帯にはそれはそれは大量のハートマークと
――何処かに行くの?嬉しいよ。――
の文字が。
顔面蒼白だ。
隣で”ちょっとやりすぎだよ”と愛の声がした。
すると直ぐにまた着信音。
思わずビクッとしてしまった。
携帯をあけてみるとそこには
これまた画面いっぱいのハートマーク!!!
そして
――俺も嬉しい。行く場所は秘密だよ。――
の文字が。
どうしちゃったの今野?!
その謎は直ぐに掛かってきた携帯で解けることになる。
「俺……。今の無理やり友達が送っちゃってその――」
言葉に詰まってしまう今野。
私は今野の言葉を遮り
「私もおんなじだよ。友達がね,送ってくれたの。でも誘ってくれて嬉しいのは本当だよ。」
小さい声だけどそう今野に伝えた。
今野との会話は放課後の待ち合わせ時間と場所を決めて終わった。
甘い雰囲気も何も無く、でもそれは聞き耳立ててるこの人達がいるせいなわけで。
きっと向こうも同じだと思う。
6つもの目が私を凝視していた。
「もう!恥ずかしいじゃない。」
私は、本当に恥ずかしくって、その場を立ち上がり、教室へと走ってしまった。
待ち合わせかー。
誰もいない場所について改めてにやけてしまう私だった。
そして放課後。
何とか3人を振り切って待ち合わせの場所にきてみると、既に今野が待っていたのだった。
「待った?」そう言った私に今野はあの笑顔で
「今来たところだよ。」
と返してくれた。
じゃあ行こうかと歩き出す今野の後ろを着いて行く。
大きな背中を見つめているとふと立ち止まった。
そして、右手を差し出した今野。
私はためらうことなくその手を取った。
大きくてあったかい今野の手。
少し緊張してくれたのだろうか。
しっかりと握り締められたその手は、私の手と同様、少し汗ばんでいるようだった。
そんなことも嬉しくって。
暫く歩くと、一瞬手を緩め私の手を握り直した。
指と指が絡まった、所謂恋人つなぎ。
今野が彼氏になった事を実感した瞬間だった。