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はじまりは公園で

私は今、今野と2人並んで公園のベンチに座っている。

自分で公園に行かない?なんて誘った癖にこの後の事を全く考えていなかった。


ちょっとこの際頭の中を整理しよう。


私は今野が好きだと言ってしまった。


今野は私に俺にしろと言って、私が好きだといってくれた。


樹里先輩と神田先輩は従兄弟で


それで…


黙って座っているこの状況は?

もしかして私から付き合ってくださいと言わなくちゃいけないということなのだろうか?


思わず今野の顔を見つめてしまった。

彼は顔を背けてしまって。


一体この状況どうすればいいんだろう。

もう少し話がしたい。

本当は聞きたい事は山ほどある。

よーしここまできたら同じだよね。

心の中で気合を入れて


「あのね、私。」

そこまで言って一度呼吸を整えた。

今野は私を見て一度ゆっくりと頷いた。


「私、クローバーにね。KとHって書いたんだ。」

伝わりますように。

そう、思ってちらっと今野の顔を見上げた。

彼は少し苦しそうな顔をした。

そして


「やっぱり。弘樹の事…」

そう言って黙ってしまった。


うわっ。

忘れてたよ、自分で気がついてたのに。

思いっきり勘違いしている今野の袖を引っ張った。


「違うよ。私が書いたのは―今野のKと陽人のHだったんだよ。」

思いがけず大きな声になってしまった。

でも今野はまだ曇った顔のまま。


「だって、あの時お前、気がついてなかったって…そう言ったじゃないか。」

私の声とは対称的に呟きともとれる小さな声だった。


そんな今野の顔を見ていられなくなって、恥ずかしいけど、恥ずかしかったけど。

「だから、あの時の今野の笑った顔が頭から離れなくて。目を瞑っても浮かんでくるのは今野の顔だった。神田先輩に話しかけられたってドキドキしなかったの。私が―私が試合で目を追っていたのは今野だけだった。今野にしかドキドキしなかったんだから。」

言ってしまった。

女は度胸とは言ったものだ、でも恥ずかしすぎて顔を上げられない。

今野の足だけが目に入った。

そして、今野は黙ったまま。


どれくらいの沈黙があったのだろう。

さっきとは違った意味のドキドキで私の心臓が加速する。


「凄い情けないんだけど。俺にしとけなんて言っておいて、今更だけどまだ信じられないんだけど。勘違いじゃねえよな。」

そう言う今野に私は頷いた。


「ウオッシャー!」

そう言って突然立ち上がった今野。

私はただただビックリして。


そうしてまた私はいつの間にか再び今野の腕の中にいた。

「大事にするから、一緒にいて欲しい。」

今さっきの雄たけびとは全く違う静かな声だった。


「それって」

そこまで言った私の声は今野の声で遮られた。


「付き合って。俺の彼女になって欲しい。」

私は言葉より先に今野の広い背中に手を回した。そして


「嬉しい。嬉しいよ今野。」

そこまで言うと


タッタラッタ〜♪


と聞える携帯の音。

言わずと知れたルパンのテーマ。

私の携帯だった。


2人で顔を見合わせて笑った。

「でなくていいの?」

という今野に


「大丈夫。メールだから。」

と携帯を取り出して開いて見せた。


解っている、この着信は麻耶たちだ。

2人で画面を覗いてみるとそこには


「ちゃんと報告してね」

という文字と3人でケーキを頬張る姿が添付されていた。


「了解」

と短く返事を打ち今野に向き直る。


「今度紹介していい?」

と聞いてみた。


「彼氏としてなら。」

そう言いながら今野はあの顔をした。


あの公園で見たとびっきりの笑顔だった。


それから、私たちはナンバーとメルアドを交換して。

とりあえず今日はこの辺でと帰ってきた。


ふわふわした気持ちで自分の部屋に入る。

さっきの今野じゃないけど急展開に信じられない気持ちの方が大きかったりして。

携帯を開いて


今野陽人


という名前を確認してしまう。

自然と笑っている自分がいた。

そして、机の中からそっと英語の辞書を取り出した。


531ページ


小さいけれどそれはしっかりその間に挟まっていて。

思わずこみ上げてくるのもが。


ありがとう


小さな声で4葉にお礼を言ってみた。














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