告白?!
私とは違う大きな背中をみながら歩き始めた。
何か話せばいいのに何も浮かんでこない。
すると今野が私の方を向いて
「浅田って歩くの嫌い?」
と聞いてきた。
「嫌いじゃないよ」
と答えると
「じゃあ、天気がいいから、歩いて帰らない?」
と言ってきた。
別に歩くのは嫌いじゃないけど、ここから家までどれだけかかるのだろう?
それに会話が続くかどうか……
私が不安そうな顔をしていたのに気がついたのか
「やっぱりバスで帰るか。」
と言い直した今野。
ちょっとした微笑にも反応してしまう私。
きっとこんなに長く話せるのも最後かもしれない。
そう思った私は
「いいよ、天気もいいし歩いて帰ろうか!」
と返事をした。
今野は一度フッーと息を吐くと
「おう」
と返してきた。
そして暫しの沈黙。
さっきと違うのは私は今野の後ろではなく、隣を歩いている。
それだけでも、嬉しく思ってしまうのだけど、家に着いたら泣いてしまうかもなんて、マイナス思考に囚われてしまう。
「この辺変わらないよなぁ」
「そうだね」
こんな調子で取り留めのない会話が続いている。
どことなくぎこちない会話。
私といえば、この前バスの中からみたこの道。
こんな風に今野と歩く樹里先輩のことを考えずにはいられなかった。
あの時と同じように私達の横をバスが通り過ぎた。
「お前さぁ。」
今野は前を向いたまま話出した。
「ん?」
「お前も、おまじないしてたんだろ。」
唐突な話に心臓が止まるかと思った。
もしかして、私が今野のイニシャル書いたの知ってるの?彼女との仲を裂こうとしてるって非難されちゃうの?
後から考えたら、そんなことばれる訳がないのに、動転してしまって私の頭はパニック状態。
今野はそんな私におかまいなく話を続けた。
「俺、従兄弟がお前の高校にいておまじないの話聞いてたんだ。あの時4葉探してたんだろ。」
優しく語りかける今野に思わず頷いていた。
「上手くいきそうなのか?」
なんでこんな事今野にきかれなきゃいけないだろう。
泣きそうだった。
でも必死で涙を堪えて
「駄目かなぁ。私、好きになちゃいけない人好きになっちゃったから……」
「好きになっちゃ駄目な人なんているのか?」
だから、あんたなんだって。
言ってしまいたい衝動に駆られる。
ぐっと堪えて
「私の好きな人ね、とっても仲の良い彼女がいるの、私の入る隙間なんてこれっぽっちもなくて。」
涙が零れないように上を向いた。
「そんなに好きなんだ。」
今野が言った。
「うん、好きになっちゃった。」
誤魔化すようにぺロッっと舌をだしておどけてみる。
「そんなに、好きなんだぁ。」
もう一度今野が呟いた。
「うん。」
「諦められない?」
と聞く今野、だからあんたの事なのに。
この会話を一刻も早く終わらせたかった。
どうせこれが、今野と話せる最後だったらもっと楽しい話をしたかったから。
「そんなことより今日の試合惜しかったね。凄いじゃん、1年でレギュラーだなんて、それもスタメンなんだもん。びっくりしちゃったよ。」
本当はかっこ良かったよ、って言いたかったけど。
私はさっきの今野の姿を思い浮かべてちょっとトリップしてしまった。
「そんなことよりって、お前。」
折角話を変えたのにまた蒸し返そうとしているのか今野は私に問い直す。
「もしかして、お前の好きな奴ってサッカー部なのか?だから今日見にきたのか?」
少し険しい顔をして核心を突いてきた。
だから、あんたを見にきたんだってば。
喉から出てきそうになる言葉をグッっと飲み込んだ。
「そうなのか?もしかして―。」
そう言ったきり口を噤む今野。
もしかして、ばれちゃった?
今まで以上にドキドキしてきて、何とか話しを逸らさなくちゃ。
「それより、彼女はどうしたのよ。私と一緒に帰って大丈夫なの?私恨まれるのは勘弁だから。」
また自分で言ってて惨めになってくる。
「そんなのいねえよ。」
一際大きな声で今野が叫んだ。
いないって?だってさっき居たじゃん。
まさか他にもいるとか?
頭が混乱してきた。
「いないって、今野私に言ったじゃない、彼女がいるって。」
こなりゃヤケだ。
思ったことを口にした。
「あ、あれは……」
さっきの勢いはどこへやら今野の声は小さくなって。
そして、一息したあと。
「弘樹なのか?お前の好きな奴って。諦められないのか?」
今野はそう言った。
弘樹って呼び捨て?
私は一瞬戸惑って返事を出来なかった。
それよりさっきの彼女いない発言が気になってしょうがない。
大分歩いていたみたい。
辺りは見知った風景で、私の家は目前だった。
最後でいいや、言ってすっきりして振られちゃえ。
大きく息を吸い込み
「今野が好きなの。」
「俺にしとけよ。」
2人の声が重なった。
???
何て言った?今野の顔を見ると向こうもきょとんとしている。
私は、立ち止まり今野を見つめてしまった。