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戦国浪漫  「愛乱武優」  作者: 三ツ星真言
8/20

母上の決死の愛

 満ち足りた幸せな一夜を過ごした二人を、神は斯くも残酷な運命に導いた。


 いつも柔磨より早起きの母上が起きてこない。

 不思議に思って、母上の部屋に行った。

 そこで見たものは・・・・・。

 白装束に着替えた母上の切腹した姿であった。

 豪の者でも難しい十文字切腹である。

「母上~」

 絶叫を上げて母上の体を抱き上げたが、すでに冷たくなっていた。

 そこへ、百合姫が駆けつけて、息をのむ。

 言葉を発することができない。

 

 傍らに、母上の達筆で書かれた遺書があった。

 柔磨が、慌てて読む。

『 我が息子・柔磨へ

  あの小さかったお前が、よくぞ立派な男に成長したものぞ。

  母親として嬉しく思う。

  あの日、お前は私に心配をかけまいと、百合姫との試合を

 告げなかったが、私は知っておった。

  親馬鹿と笑うなかれ、顔を隠して見に行ったのじゃ。

  お前の武芸の腕は十分知っておるが、心優しいお前のことが

 心配であった。

  案の定、お前は百合姫を殺せなかった。

  世間の眼はごまかされても、私の眼は節穴ではない。

  私はあの瞬間、こうすることをすでに決意しておったのじゃ。

  断じて、息子を取られた腹いせではないぞよ。

  母の名誉を汚すなかれ。

  心優しいお前のこと、百合姫を一人で放り出すことはできまい。

  かと言って、年老いた母親を一人置き去りにできまい。

  事が露見した場合、牙王のどんな恐ろしい刑罰が待っていることは

 わかりきっておる。

  それならば、私が先に、亡き夫の元へいくのが一番じゃ。

  お前たち、若い二人は共に手を取り生きるがよい。

  孫の顔を見ることができなかったのは残念じゃが、百合姫、元気な

 孫を産んでおくれ。

  くれぐれも、愚息を宜しく頼む。

  天より、夫ともに見守っておるぞよ。

  達者でな。


                                母・巴美より     』



 母上の遺書を読んだ柔磨は号泣した。

 それしかできなかった。自分の迂闊さを呪った。


 そんな柔磨の姿を黙って見つめていた百合姫が取った行動とは・・・・。



 


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