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戦国浪漫  「愛乱武優」  作者: 三ツ星真言
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魔獣駆ける

 あまりに凄まじい魔獣と化した柔磨の闘いぶりに、武芸大会の辞退を

考えた者は多かったが、それを許す牙王ではないことはわかりきっている。

「臆したか。そんな家来は要らん。」と打ち首獄門、下手をすれば一族

郎党まで害が及ぶ。

 出場者は決死の覚悟で試合に臨むしかない。


 柔磨の二試合目の相手は、棒術使いの斎藤であった。

 「今日も血の雨が降るのか。」と牙王はすごく楽しみであったが、見物客の

心境はかなり複雑であった。

 今だにあの強く優しい色男の柔磨に恋い焦がれる者もいれば、あの変わり様は

よほどのことがあったに違いないと同情する者、いやいや魔獣死すべしと冷たく

言い放つ者、様々であった。

 そんな中、「我関せず。」とばかりの無表情の柔磨である。

 一言も、発しない。


「始め。」

 審判役の田島が号令をかける。

 斎藤は六尺棒を巧みに使い、柔磨の接近を許さない。

 しかも、変幻自在の攻撃で柔磨を苦しめる。

「何が魔獣だ。たいしたことないのう。」

 今日も、柔磨は腰の短刀を抜こうとはしないので、とうとう試合場の角に

追い詰められた。もう逃げ場はない。絶対絶命の危機である。

「仕留めたり。」

 斎藤が自信を持って柔磨の体の中心・水月を狙って突いた。

 かわされたとしても、変化技で仕留める絶対の自信があった。

「何・・・・」

 斎藤は信じられない物を見た。

 柔磨が予備動作なしで宙に飛び、斎藤の棒に飛び乗ったのである。

 そればかりではない。

 体重を微塵も感じさせず、棒の上を疾走して来るではないか。

「・・・・・」

 魔物を見たかのように恐怖心にとらわれた斎藤は、六尺棒を手放すこともできず、

固まった。

ズガン

 柔磨の右膝蹴りが斎藤の顔の中心にめり込む。

 それだけではすまない。

 柔磨は左手で斎藤の頭を抱え込むようにして、全体重を乗せた右肘を脳天に

叩き込んだ。

バキッ

 見物客は頭蓋骨が割れた音を聞いた思いであった。

 斎藤は頭にある全ての穴から血を吹き出しながら、地面に倒れ、動かなくなった。

「勝負あり。」

 田島が試合終了を告げた。


 またもや、試合場は、シーンと静まり返った。

 人間とは不思議なもので、慣れたのか、気絶する者はいなかったが、柔磨に

恋い焦がれる者の数は、確実に減ったのである。



 


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