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異世界クロニクル【改訂版】  作者: 葛西和春
第一章 異世界邂逅編
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第8話 銀の騎士と影の剣

 薬草の採れるニルドネの南にある平原に行くには、ニルドネの街の南門から出ればいい。クラリスからそう聞いていた隆司は、程なくして南門に到着した。

 よく見ればそこは隆司がこの街に入った場所であり、たった一日くらいしか経っていないのになぜか懐かしい雰囲気さえした。


「まぁ、気のせいだろうけど」


 ひとり呟いた隆司は、ゆっくりとした足取りで門をくぐる。厚さ4メートルほどの壁の中をくぐり終えると、そこには昨日見た平原が姿を現した。


「お、兄ちゃん。もう街を出るのかい?」


 突如かけられた声に内心で驚きながら、声の方に目を向ける。そこには昨日この街はお菓子が美味しいと教えてくれた門番の姿があった。


「あ、昨日はどうも」

「おう、パイは食ったか?」

「いやぁ、それがまだなんですよ。お金が無くて……」

「なんだ、そうなのか。それで、諦めてもう旅に出るのか?」

「違いますよ。俺、冒険者になったんで、初仕事です」

「へぇ、兄ちゃんが冒険者ねぇ。ま、頑張りなよっ」


 隆司が冒険者と聞いて訝しげな目で上から下まで観察した門番だったが、何に納得したのか――或いは何も納得していなかったかもしれないが――隆司に頑張れと声を掛けて気持ち良く送り出してくれたのだった。


 * * *


 南門から十五分ほど行った場所、隆司の腰の辺りまで伸びた背の高めの草を掻き分けて進んだそこに薬草の群生場所はあった。ここまでそれなりの距離だったが、毎朝のランニングはしっかりと功を奏していたようで、隆司は汗一つかかずに目的の場所まで来ることができた。


 この場所だけはまるで薬草たちのためにぽっかりと開けているようで、これを見た隆司は、子どもの頃ならここに秘密基地とか作りそうだな、と考えてくすりと笑う。


「えーっと、これか?」


 クラリスが書いてくれた絵を頼りに、薬草を採取していく隆司。最初こそどれがどれやらよくわからなかった隆司だが、だんだん慣れてくるとクラリスの書いてくれた絵を見ないでもどれが目的の薬草でどれがそうでないか判別できるようになっていた。そして、それを判別できるようになっていけばいくほどなんだか楽しくなってくるのだった。


「元の世界じゃ物覚えの悪さで苦い思いをしてきたんだがなぁ……」


 これも夢の中で自称神様が才能とやらを開花してくれてしまったおかげか、とか考えながらのんびり薬草狩りを楽しむ隆司。初仕事ということもあってそれなりに緊張していた隆司だったが、だんだん余裕が出て来ると目的の物(やくそう)以外にも目を向けられるようになっていた。


「これ、タンポポに似てるな」


 ライオンのたてがみのように花弁が密集した、タンポポのような花を見つけた隆司。違いがあるとすれば葉の形が大きく広がった楕円形であることくらいだが、いずれにしてもタンポポに似て可愛らしい花だった。


「……でもこれ、毒草だ(・・・)


 そう呟いて間違って採って帰らないようにしようと思うとともに、なるべく近づかないようにしようと決意する。

 しかし次の瞬間、隆司は胸の中に渦巻いた気持ちの悪い違和感の塊に首をかしげた。


「……なんで俺、これが毒草だって知ってるんだろう……?」


 異世界人である隆司が、タンポポによく似た花を『毒草』と判別するのは難しいだろう。今まで食べることもできる花であるというふうに慣れ親しんできたタンポポ似の花を一見しただけで、触れることすらなく『毒草』と断じるのはあまりにも不可解だった。しかもごく自然に口をついて出たのだから隆司本人も理解不能だ。


「……まぁ、ちょっと気持ち悪い感じだけど、害にはならないからいいか」


 もしかしたらあの夢の中で自称神様が異世界の知識を授けた(余計なことをした)のかもしれないが、間違って毒草を口にするよりはマシかと思うことにして、隆司は薬草の採取に戻ることにした。


 瞬間――がさり、と草を掻き分ける音。

 体ごと音の方を振り返った隆司は、驚愕の表情で固まってしまう。

 隆司の腰の辺りほどまでしか届かない背丈、ぎょろりと剥きだした大きな目、鋭い鷲鼻は何かの匂いを嗅ぐようにひくひくと動き、歪んだ口元からは鋭く尖った牙が太陽光を反射して凶悪な光を返していた。できれば二度と見たくないほど醜悪な顔、体中から悪臭を放つ小人のようなその存在は……。


――ゴブリンか!


 隆司は直感的に理解した。と同時に脚力に任せてゴブリンから離れるように跳んだ。

 しかし、隆司のこの行動に関しては失敗というほかない。

 ゴブリンは大きな鼻を持っているが、それは殆ど飾りのようなものだ。というのはゴブリンがもともと鼻がよくないというのもあるが、何より自らより放たれる悪臭により、だんだん鼻が利かなくなっていくのだ。故にたとえゴブリンが鼻をひくつかせていてもそれはゴブリンにとって何の意味もない行動であり、むしろ鼻より目が、目よりも耳が発達しているゴブリンには、今の隆司の行動は獲物が勝手に姿を現しただけという意味でしかなかった。


 そんなことを露とも知らない隆司は、ぎらぎらとした目で自分を睨み付けるゴブリンをどうするか考えていた。

 倒せるのなら倒してしまった方がいいだろうが、初心者もいいとこな自分に倒せるのか、そもそも攻撃が利くのか、相手の能力はどれほどなのか、コイツ一匹だけなのか……。

 様々な疑問が頭を支配し、答えも出ぬまま積もっていく。やがて、にらみ合いに痺れを切らしたのか、ゴブリンが動き始める。と言っても、隆司から見れば天に向かって何事か叫んでいただけだったが。


「……いや、ヤバくないか?」


 奇しくも正解。ゴブリンはたった今仲間を呼んだのだ。

 がさがさ音を立てながら隆司の周りに姿をあらわすゴブリン達。その数全部で十数匹。


「これ、なんとかなるのか?」


 隆司の疑問はもっともであった。武器も防具も装備していない自分が、十匹以上のゴブリンを相手に勝てるのか、勝てないまでも生きて帰れるのか。

 その疑問には考えるまでもなく無理だと言える。ゴブリン一匹だけならともかく、十数匹となると隆司が一人でどうこうできるレベルを超えているのだ。

 隆司自身もその答えに行き着いたのか、じりじりとできる限りゆっくり後退する。


 それを知ってか知らずか、ゴブリン達は意味不明な言語でこの獲物(隆司)をどうするか、相談しているようだった。

 ぎぃっ! とゴブリン達の一匹が大きな声を上げる。さすがに隆司がだんだんと遠ざかっていることに気付いたらしい。ぎぃぎぃと耳障りな鳴き声を上げながら、隆司の方へ駆け足全開だ。


「くそっ」


 小さく毒づいて、隆司は走った。歩幅のおかげか、隆司の方が足は速い。これ幸いと隆司は一気に平原を駆け抜けた。

 しかし、ゴブリン達は一向に諦める気配がない。さすがにモンスターとの鬼ごっこは初めての隆司は変な緊張感のせいですでに息が上がっている。だが、追いかけてくるゴブリン達も疲れたのか諦めたのか確実に数が減っている。


「もう少し、逃げ回れば……」


 ぐっと気合を入れ直して再び走り始める隆司。まだ、限界ではなかった。


 * * *


 そうして五分間逃げ回った隆司。追いかけてくるゴブリンの数も残り数匹となった頃、さすがに疲労がピークに達し、足が止まってしまった。

 ただ、それはゴブリン達も同じようで頑張って追いかけてきている数匹のゴブリン達もよろよろとその足取りはおぼつかない。


「はっ、はぁっ……くっ、はぁっ。ヤバ……も、走れない」


 思わず立ち止まって膝をつく隆司。やがて、ゴブリン達が追い付いてきて、隆司の前に仁王立ちする。

 ぎぃ、ぎぃ、と肩で息をしながら、隆司を睨み付け、その手には石でできたナイフのようなものを持っていた。


「1、2、3、4匹か。これくらいならどうにかなるかな……」


 最後の力を振り絞って立ち上がる隆司。しかし、ゴブリン達は獲物が自分たちの倍の身長が有ろうとひるむことなく威嚇する。


――否、それは威嚇ではなかった。


 隆司がそう気づいたのは、自分の周囲に存在する茂みの中からがさり、と不気味な音がしてからのことだった。


「……な――」


 驚愕もつかの間、茂みから一斉に出てきた十数匹のゴブリン達は、あっという間に隆司を囲む。

 誘い込まれた。

 瞬間的にそう理解した隆司だったが、時すでに遅く見回せばすでに逃げる隙間もなく取り囲まれてしまっている。

 ゴブリンはずるがしこいのだと月風亭の食堂でそう話していた冒険者の言葉が頭をよぎった。


 所詮はゴブリン、ゲームやマンガの中に登場するそれはどれだけ強くても結局は駆逐される存在だ。

 いざ遭遇してもなんとかなるだろうとタカをくくっていた隆司は、統率のとれた動きで狩りをするゴブリン達を見て、自分がどれだけ彼らを――モンスターを侮っていたかということを痛感させられていた。


「うそ、だろ……」


 絶望感に襲われる隆司のことなどお構いなしで、ゴブリン達は手に持った武器を掲げた。逃げ場のない隆司にはもう何もできない、武器も持っていない隆司には何の抵抗もできない。それを理解しているゴブリン達は、体全体で喜びを表すかのように飛び跳ね、両腕を天に上げ、雄叫びのように声を張り上げた。


――故に、ゴブリン達はその瞬間、何が起こったのか理解できなかった。


 隆司の後ろにいた三匹の同胞の首が、胴体から離れて宙を舞った事実は、驚きによる喧騒ではなく、理解の追いつかないことを示すような静寂を生み出していた。

 隆司にしても、騒がしかったゴブリン達が自分の背後を唖然と注視していなければ何かが起こったことにさえ気付かなかっただろう。


 音の消えた平原に、三つの首が落ちる音が静かに響いた。

 刹那、それまで静かだったゴブリン達が騒ぎ始める。逃げ惑うもの、怒りをあらわにするもの、それぞれが一斉に動きだした。


「よぉ、ボウズ。大丈夫か?」


 渋い声に振り向くと、そこには短めの銀髪に鋭い眼光の黒い瞳、顎には無精ひげを生やしたナイスミドルが立っていた。


「あ、はい……ありがとうございます」

「よし、とりあえず立て」


 言って、銀髪のナイスミドルは隆司に手を差し伸べた。隆司がその手を取ると力強く腕を引かれ、疲労で力の入らない脚でもなんとか立つことに成功する。


「怪我はなさそうだな。ちょっと待ってろ」


 銀髪のナイスミドルはそう言うと、着込んだ鎧を鳴らしながら一歩二歩と前に出る。その姿はまるでゲームやマンガの中に登場する騎士のようで、臆することもなく異形の者(ゴブリン)達と対峙する姿に隆司は目を奪われた。


 一方ゴブリン達は、突如現れて同胞の首を撥ね飛ばした闖入者を獰猛な獣のような目で睨み付けていた。その数はいまだに十匹以上。手に手に武器を持って今にも襲い掛かりそうな雰囲気だ。

 ざり、と銀髪のナイスミドルが距離を詰める。それを合図にしたかのようにゴブリン達は一斉にナイスミドルへと襲い掛かった。


 しかし、そんなゴブリン達の強襲にも焦った様子もなく、銀髪の騎士はにやりと口の端を歪めて見せる。

 瞬間、銀髪の騎士の右手から眩い光の奔流が溢れだした。

 目を開けていられないほど強い光。強烈な光にゴブリン達は一匹残らず目を閉じ、光が収まるのを待っていた。


「……!」


 視界の全てを余さず塗りつぶす光の中、隆司は強迫じみた衝動によってその光から目を逸らせずにいた。

 初めて見る現象。だが、隆司はこれが『魔法』であるということを確信する。

 やがて、光が収束する頃、それまで光に塗りつぶされていた影が再び現れる頃、それは起こった。

 銀髪の騎士の影が、まるで意志を持ったようにうごめく。そしてそれは光の中に躍りだし、銀髪の騎士の右手へと集まっていく。


「これ……!」


 驚く隆司の目の前で、次第に影は確かな形へと変わっていった。

 影と同じ色をした剣。

 銀髪の騎士は自らの手に現れたソレの感触を確かめるように二、三度握り直す。そして、満足のいく出来だったらしい影の剣を一番近くにいたゴブリンに向けて振り切った。


 ぎぎゅっ、と悲鳴らしき声をあげて絶命するゴブリン。材質が良くないとは言え、革鎧を着たゴブリンの胴体を鎧ごと真っ二つにするほど鋭利な切れ味を持つ影の剣。これが魔法の力か、と隆司は驚愕し、そして感心していた。


「うっし、こんなもんかな」


 一言、銀髪の騎士は満足そうに言い置いて今度は逆サイドへ踏み込んだ。隆司の視界の右から左へ、まさに一瞬で移動した銀髪の騎士は次の瞬間には五匹のゴブリンを仕留めていた。

 速すぎる。

 隆司の抱いた感想はそれだけだった。動きが速すぎて、隆司には何をしているのかさえ分からないのだ。銀髪の騎士が移動したと思った時にはすでにゴブリンの数が減っている。

 そうして、隆司が次に銀髪の騎士の姿を捉えた時には、十数匹のゴブリンは全て動かなくなっていた。


「危ねぇとこだったな」


 銀髪の騎士が隆司の方を振り返って言った。右手に持った影の剣がまるで氷が解けるようにゆっくりと形を失っていき、騎士の影と同化する。


「あ、ありがとうございます……助かりました」


 いつの間にか息切れも収まった隆司は心の底から感謝を伝えた。この銀髪の騎士がいなければ、自分は無事ではすんでいなかっただろう。


「……お前、新人だな?」


 先ほどのゴブリンから不格好に逃げ惑っていた隆司を見たからだろうか、銀髪の騎士は断言する。


「あ、わかりますか……」

「あぁ、雰囲気でな」


 さっきも同じようなことを言われたなぁと思いながら、隆司は力なく笑った。


「ま、最初は誰も似たようなもんだ。そのうちこなれていくさ」


 言って、銀髪の騎士は辺りを見回す。隆司もつられて周囲に視線をやった。


「……ゴブリンがこんなとこまで来てるとはな」


 ため息混じりに呟く銀髪の騎士。その言葉に疑問を持った隆司はすかさず銀髪の騎士に尋ねる。


「珍しいんですか?」

「珍しいなんてもんじゃねぇ。そもそもこの辺りにゴブリンがいること自体がおかしいんだ」


 そうなのか、と一人納得した隆司。


「ところでお前……そういや自己紹介をしてなかったな。俺はセランだ。セラン・ノーブルブラン」


 と、銀髪の騎士――セランが隆司に向けて右手を差し出した。こっちにも握手の文化があることを頭の隅で確認しつつ、隆司も右手を伸ばす。


「俺は隆司と言います。よろしくお願いします」


 自己紹介しながらセランの右手を握ると、それに応えるようにセランも隆司の右手を握り返す。同時に、よろしくな、と爽やかに笑ったセランの笑顔は親戚とかに居そうな気さくなおじさんみたいだなぁという感想を隆司の中に生み出した。


「ところで、お前はなんでこんなところにいるんだ?」


 本当に不思議そうにセランが訪ねた。その問いにハッとした隆司は自分が依頼をうけて薬草の採取をしていたのだということを思い出す。


「あ、薬草の採取をするためにこの辺りに来てたんですけど……」

「なるほどな。その途中でゴブリンどもに出くわしたってことか」


 セランの言葉に「はい」と頷いて隆司はナップサックから麻袋を取り出す。その中にはさっきまで一生懸命に採取をしていた薬草がいくつか入っていた。しかし、依頼を達成するにはまだ少し足りない。


「うーむ」


 突然唸り始めた隆司に訝しむような視線を送ったセランは、堪えきれず疑問を口にする。


「どうしたんだ?」

「え、あ、薬草の数が依頼の必要数にはもう少し足りなくて……」

「なんだ、そんな事か」


 セランはそう言うとおもむろにしゃがみこみ、足元の草を何度か掻き分けたかと思うと、いくつかの草を引き抜いて隆司に見せた。


「これは《上薬草》って言ってな。その名の通り、お前が今持ってる薬草よりも効果の高い薬草だ。調合の仕方によってより効果の高い薬にもなるし、煎じて液化した原液を希釈すれば薬草で作る薬と同じレベルの効果の薬にすることもできる。もし、お前の受けてる依頼が、ただ単に『薬草を取ってきてほしい』って依頼なら、薬草を何十本も持って行くより、これを何本か持って行った方が調合の自由度も上がるし報酬にも色が付くから、依頼者も引き受けた方も得するぞ」


 セランがつらつらと並べる言葉を聞き、隆司は感心してしまう。


「よく、ご存じなんですね……」

「当たり前だろ。俺だって冒険者だ。お前よりも何年も先輩のな。薬草採取なんて新人の頃に何度やったかしれねぇ」


 そう言って笑うセラン。次いで隆司に視線を向けたかと思うと、何事か納得したように「うんうん」と何かを懐かしむように繰り返し頷いたのであった。

 そして、


「ほれ、持ってけ。上薬草が五本もありゃこれで依頼は達成だろ」


 立ち上がったセランは、手に持っていた上薬草を隆司の方へ放り投げる。慌ててそれをキャッチした隆司は、目を白黒させながらセランと上薬草に視線を行ったり来たりさせていた。


「い、いいんですか?」

「悪いわけがあるか。それに何も、お前のためだけじゃないんだ」


 セランが言った「隆司のためだけじゃない」という言葉に、隆司は首をかしげる。そして、一つの可能性に行き当たる。

 まさか、上薬草を見つけてやったんだからそれなりの対価をよこせ、みたいな感じで吹っかけられるんだろうか……。

 などと隆司が考えていると、それを敏感に感じ取ったのか、セランが一つため息をついた。


「お前なぁ、なんか失礼なことを考えてないか? 上薬草のお礼に何かとんでもない要求されるんじゃないか、とか」

「あはは……」


 あまりにも的確な言葉に隆司はひきつった笑みを返す事しかできない。それを見て、再びため息をついたセランは隆司のその考えをきっぱり否定した。


「んなわけないだろ。こっちの仕事を手伝ってほしいだけだ。っても、大したことじゃねぇけどな」

「仕事?」

「あぁ、今からギルドに報告しに行くんだよ。この辺りに出現したゴブリンの動静報告をな。だから、お前には一応目撃者ってことで付いてきてほしいんだ」

「あ、なるほど」

 それは確かにちんたら薬草採取なんてしてる場合じゃないな。と、セランの行動の意図を察する隆司。

「よし、わかったら行くぞ」


 急かすようなセランのセリフに戸惑いつつも返事をした隆司は、一足先に街に向かうセランの後を追った。

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