ラノベの出会いはいつも突然じゃないか! (9)
「痛い! 一体何なの」
「うるさい! 内申点のため生徒会に入ることを決めたけどあなたに手を貸すのがなんか癪に障るから殴っただけよ」
「それって僕が理不尽じゃね!?」
大淀は南森と顔を合わせないようにそっぽ向いた。
「この通り、大淀さんは生徒会に協力してくれることになったわ」
「……はい。私は長柄先輩『だけに』手を貸したいと思います」
「なんでそこを強調するのかな?」
うるさいと南森の足を踏みつける。
「と、とにかくこれで執行部のメンバー確保ができたわけだ」
「えぇ。後で中津先生に執行部を作っていいか確認しないと駄目ね」
中津先生とは主に2年の社会科を担当している人だ。2年2組の担任を持ち副主任。そして南森達生徒会役員の顧問を務めている。
「それで……このゆゆしき部活問題に関して何かいい案が思い浮かんだ?」
「いや? 全然思い浮かばないや」
「そう……」
「だから直接部活を監視してどうすればいいのか聞いてくるよ」
そして南森は大淀の手を掴む。
「そう。それじゃ、いってらっしゃい」
南森は大淀を引っ張る。その勢いがあまりに急で思わず大淀は体を動かしてしまった。そしてそのまま教室の外へ飛び出した。
「ふぇぇぇ!? ちょっと……一体どこに!?」
廊下に飛び出した後も大淀の悲鳴は聞こえる。
「絶対あの子は南森君のいいパートナになるわ」
エクセルを閉じ、パソコンに刺さったUSBを取る。実はこの資料を作ったのは長柄ではない。30分で資料を作成した。嘘に決まっている。ただこれを渡されただけだ。そう、大淀に。
大淀は強烈に後悔する。確かに内申点が向上するにしても、楽しい学園生活を送ることが出来なければ意味がないのではないか。
「一体、あなたはどこに連れていくの!?」
「部活調査だよ」
「部活調査? それなのにどうして体育館の方に向かっているわけ?」
「そりゃ、体育館で行っている部活だし」
「嘘でしょ!? 私を体育館裏に呼びこんで……」
南森は大淀の手を離して耳を抑えたい気分だった。それほど大淀は彼の耳元で金切り声をあげていたのだ。まるで注射を嫌がる子供だ。しかしもし手を離したら今度は逃げるに違いない。
(ここは僕が安心な男であることを証明しないと)
そうすれば少し大淀は静かになるだろう。そう考える。
「安心しろ。俺はどちらかと言えば年上に縛られたいタイプだから」
南森にとってこれは最大限のフォローだった。しかし彼がそう発言した瞬間ゾワッと大淀の手から汗が湧き出る。
そして静かになる。しかしこれは安心したから静かになったのではないことは南森もすぐに分かった。
「……きもい」
冷静な声で、氷の刃のようにつぶやく。
南森の走っている足場が氷のように感じだ。
それからしばらく走り続ける。基本的に廊下を走ることは禁止されている。しかし放課後は人通りがなくなるためそれを守る人がほとんどいない。教師だって走ることがある。更に、グラウンドの使えない運動部が練習場所として廊下でインターバル走をする。
その廊下を通りぬけたら、橋を渡る。これは廊下と体育館を結ぶ渡り廊下だ。体育館の中に入る方法はこの渡り廊下を渡るか、体育館1階から外にでるかしかない。
そのため、朝礼が終わった後、ここは生徒による渋滞ができる。
渡り廊下を渡り終え、体育館の中に入る。そこでようやく南森は大淀の手を離した。
「ここは……?」
大淀の目に入ったのは三面のコート。二人一組で打ち合うシャトル。バドミントンの練習光景だった。
「ちょっと……。バドミントンは風の影響が受けやすいのさ。だから早く閉めるのね」
その二人が入って来るのを見てある少女がその元へ行く。
「それにここは体育館シューズじゃないと駄目なのね」
その少女は男である南森より身長が大きい。しかし後ろに結った紙が女性らしさを引きだしている。
「悪いな。バドミントン部部長」




