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普通の公立高校をラノベのような高校に変えてみる  作者: 北神 柳椰
ラノベの出会いはいつも突然じゃないか!
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ラノベの出会いはいつも突然じゃないか! (8)

「それでは始めましょう。リミットエクセルを」

 その次の日は長柄の意向により今度はパソコン室を使うことになった。

 この学校は情報の授業が1年生しかない。そのため、南森にとってみればもう二度と来ることのない教室だと思っていた。

 そのパソコン室は遮断カーテンが閉められており暗い。

「それはいいとして、どうしたんだ? そのテンションと服装」

 キャラが昨日とは全然違う。そう南森は感じる。何よりも服装。長柄は校則をキチンと守る。そのため制服だってシャツはスカートの中にいれ、スカートの長さはちゃんとした長さにしている。

 その長柄が今日は制服の上に白い制服を着ていた。これは別に校則違反ではないにしてもやっぱり意外だ。

「たまにはテンションをあげようと思ったのよ」

「テンションね……それで今日は」

「あなたの『ラノベみたいな学校にしたい』という願いをかなえるために昨日30分ほどエクセルで作成したデータをみてもらうわ」

「そこまで長い時間じゃないんだ」

 長柄がボタンを押す。すると上からスクリーンが降りてきた。そして次にパソコンを操作する。コンピュータを押し、USBのデータを開く。

 そして画面にはカラフルに染まった円グラフが出てくる。

「これは昨日までの在校生の部活参加率よ。まず全体からみてみるわ。まだこの時期だからこれはそこまで信用できないけど1~3年生合計で約6割が部活に入部」

 このデータが信用できないというのはまだ仮入部期間であるからだ。

 この期間は体験入部として一日だけ簡易入部することができる。入部届の必要はない。つまり生徒はこの仮入部期間が終わってから入部届を出そうとする人が多いのだ。これは例年のことであり、しょうがないことだと思う。

「だからこのデータはほっといて。次。2年生~3年生で部活を入っている割合は約7割」

「まぁまぁ……なのか?」

「部活に入っている理由入っていない理由とかのデータがあるわ。まず入っていない理由として一番多いのは勉強したいから。入っている理由で一番多いのは仲間を求めて、二番目に内申点」

「ここでも内申点が出るのか」

「そうね。まぁしょうがないことだけど」

「次のデータに1年生の仮入部率。なんと今年の仮入部率は40%」

「はいっ!?」

「因みに去年も同じくらい」

 南森のみた範囲ではそこまで少ないように感じていなかった。どこの部活を監視しても新しく先輩となった人達が張り切って新入生を教えていたりしていた気がする。

「どうして仮入部しないかという理由で一番多いのはどの部活に入ればいいのか分からない。運命の部活に出会えないから。何故か南森君には分かる?」

「何故って……」

 南森は考える。ラノベとこの学校の違いを。

 ラノベの主人公は春になると変人に出会いそして強制的に変な部活に入部。またある主人公はバスケ部に入ろうとするが休部。結局女子小学生のコーチをすることに。

(うらやましいぞ)

 という南森の声。そういえばラノベの部活はどれも活発だ。中には全員入らないと何か罰が下される学校だってある。

「そうだ。罰がない。強制的に部活を……」

「そんなことこの生徒会ができるわけないでしょ。それにたとえ強制的に入部しても形だけの部活が増えるだけ。それ以外で……運命の部活に出会う方法は?」

 もう一度ラノベの世界に行ってみる。

 春になるとどんなイベントが待っているのだろうか。桜の門を通り抜ける。すると風が吹き……

「水玉のパンツ!」

「一体、どんな想像をしたのかしら……」

(そうじゃなかった)

 もう一度想像する。桜の門を通り抜ける。するとそこには大量のビラ配り。

「そっか。勧誘だ。この学校はラノベの学校に比べて勧誘が少ない」

「そう。だから別にやりたいことがない人はどこの部活に入っていいのか分からないで結局そのまま三年間過ごすことになるわ」

 中崎西高校の勧誘というのは地味だ。校門で並ぶことがない。新入生にとってみれば安全かもしれないがやはりどこか風物詩としては寂しいものがある。

「因みに勧誘が少ない理由としては、別にしなくても一定数入ることが約束されている部活が多いから。特に運動部」

 中には放送部のような廃部……というより絶滅寸前の部活もある。しかしそれ以外の運動部などはどこの部活も比較的安定した人数を保っていた。

「人数が増えすぎると迷惑になることだってあるし」

 この学校は公立だから練習場所が限られている。陸上部だって常にグラウンドを使えるわけではない。サッカー部などとお互い譲りあって使用しないといけない。そのためあまり人数が多すぎるとそれはかえって邪魔になるということになるのだ。

「つまり、言ってみればどこも寡占状態」

「そういうことになるわね」

 寡占とは少数の企業が特定の産業に集中することだ。これによって『暗黙の了解』というものができ、その産業の値下げや値上げも他の企業と合わせるように決定する。

「だから部活を活発化させる作戦として考えられる方法は……」

「勧誘の活発化」

「そういうこと」

 ニヤリと長柄は笑みを浮かべる。

「それにしてもこれだけのデータ量をどうやって集めたんだ?」

 南森はこれを長柄が集めたのではないことを知っていた。彼女はデータを集めるという作業が苦手なのだ。

「それは監視委員からこのデータを借りたに決まっているでしょ」

「監視委員って誰から?」

「そんなもの」

 ガラリと扉が開く。暗い部屋に眩しい光が差し込みそこだけ輝いて何も見えない。

 しかし扉を閉めると徐々に人影がはっきりしてくる。髪を二つに結んだ少女。

「大淀!?」

 彼女は顔を赤くしながら南森の頭を殴った。

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