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普通の公立高校をラノベのような高校に変えてみる  作者: 北神 柳椰
ラノベの出会いはいつも突然じゃないか!
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ラノベの出会いはいつも突然じゃないか! (7)

「ごめんなさいね。本当は南森君を処分するためのワサビ入りクッキーを食べるとは」

「ちょっとそのクッキーには悪意しかないように思えるんだが」

 長柄は大淀の背中を揺する。その大淀はゴホッゴホッと咳き込んでいた。

「安心しなさい。ここで吐いても南森君が喜んで処理してくれるから」

「……喜びはしない」

 それに流石に女子だからここで吐くのは恥というものがあるだろう。ラノベのゲロインと呼ばれる人たちは普通に人前で吐いているけど。アニメだとそれが綺麗なお花や謎の万能光で隠されたりするが。

 しばらくして大淀の席は収まる。そして目を赤くして顔をあげた。

「大丈夫?」

「大丈夫です。ただ綺麗な川が見えましたが」

「それって本当に大丈夫なのかしら?」

「淀川大橋みたいな橋もかかっていましたし」

「……思ったより三途の川って都会にあるんだな」

 ちなみに淀川大橋とは十三、中津、梅田を結ぶ橋である。鉄道オタクなら有名な三複線路がある場所だ。

「うるさい! これも全てあなたのせいじゃないの!!」

 大淀はヒュッと立ち上がり南森の方を指さす。

「えぇ、俺なの!?」

「そうね。南森君のせいね」

「ちょっと! 長柄まで!?」

「だから蹴らせろ!!」

「それで済むならいくらでも」

「やっぱり気持ち悪いから嫌だ」

 蹴ろうと足をあげたが、大淀は全身に悪寒が走りその足を降ろした。

「取りあえず、このクッキーを食べて落ち着きなさい」

 長柄は大淀にクッキーを渡す。しかしそれを手のひらにのっけたまま大淀は固まってしまった。

「この中にまたワサビとか入っていませんよね……?」

 そのクッキーを訝しい表情で見つめている。

「大丈夫。多分。入っていても死にはしないわ」

「無責任だな!」

 面識が薄くても一応先輩後輩の関係だと大淀は感じている。だから、手に渡されたクッキーを要らないと言いづらいと感じていた。

 さらに、そのクッキーからは甘い砂糖、苦いチョコレートの匂いがする。これが大淀の口の中をよだれで満たす。

 覚悟を決めてギュツと目を閉じ、それを口の中に入れる。

 そして……大淀は涙を流した。

「おい!? またワサビ入りだったんじゃないか!?」

「そんなはずないわ。だって南森君を仕留めるには二発でいいはずだし」

「おい、僕を仕留めるには二発でいいとかなんだよ!?」

 大淀は顔を綻ばす。そして頬を桃色に染めた。

「とても美味しいです。先輩」

 どうやら美味しさのあまり泣いてしまったらしい。これには思わず長柄もホッと胸をなでおろす。

「もう一枚食べてもいいですか?」

「勿論。いいよ」

 すると動物のように素早くクッキーを取る。そして大きな口を開けて一口で食べた。

「それよりもお前は監視役員なんだよな」

「そう。じゃんけんに負けたから」

 完全に長柄の時とは対応が違う。南森に対しては塩らしい態度だった。

「それならこの生徒会の執行部としてでも仕事してみないか?」

「嫌だ」

「何で!? この学校の為に働こうよ!?」

「めんどくさい。それにあなたの元で働くのが嫌だ」

「何でさ。この学校に愛着はないの!?」

「ない」

「漫画のような生徒会を作ってみたいと思わないわけ?」

「思わない」

「内申点上がるよ」

 と、その言葉と同時に大淀は黙りこんだ。そしてしばらくして口を開く。

「ちょっと考えさせて」

 そのまま、立ち上がり教室から出ていく。

 三人が二人になっただけで南森は静かになったなと感じる。そして机に頬をつきながら思ったことを口に出した。

「やっぱり公立校で一番大切なのは成績と内申点だな」

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