ラノベの出会いはいつも突然じゃないか! (6)
「えっと……」
南森は少女の方を指さして名前を言おうとするが分からないので何も言えない。
「どうしたの? 大淀さん」
その後ろで長柄が少女の名前を呼ぶ。
「料理研究部の予算申請書を持ってきました」
大淀は教室に入って、一枚の紙を長柄に渡す。
「ありがとうね」
「あれ? 二人は知り合いなの?」
南森がそう口を挟むと、大淀はピクンと背筋を伸ばす。
「知り合いっていうほどじゃないわ。この子は一応この学校の文化部委員庶務」
この学校には生徒会の一個上に学生部というものがある。要は生徒指導部だ。これを仕切っているのが学年主任。そしてそれを補佐する役員として運動部委員と文化部委員の二つがある。
運動部委員は主に運動部を中心に、文化部委員は文化部を中心に監視という役割を果たす。またその委員会に入るのに特定の部活に入る必要はない。
「っていうか生徒会長の俺でも文化部委員庶務のこと知らなかったのだが」
「まぁ、部活に入っていないと接点なんてないしね」
「それでは……失礼します」
紙を渡し終えた大淀はクルリ回れ右をして、そのまま教室の外に出ていこうとする。その大淀の腕を南森が掴む。
「な、なに」
「いや、折角ここまで来てくれたんだ。ゆっくりしようぜ」
「へぇぇ!? 流石にそんなことされたら『小説家になろう』で作品が消されてしまうから。やめてよ」
「何を言っているのか分からないし、多分大きな誤解を受けているから一応言うがここでお菓子でも食べないかっていう意味だぞ」
「お菓子ってなに? 麻薬!?」
「大丈夫よ。確かにその男は信用できないかもしれないけど、私の作ったお菓子だから」
すると胸を抑えホッと安堵の息を吐く。
「それと南森君はいつまで彼女の手を握っているの? 離しなさい」
そう言われ南森は手を離した。
「長柄先輩の作ったお菓子なら安心して食べることができます」
「長柄が先輩ということは……僕の一個年下」
長柄と南森はクラスが違う。しかし同じ学年だ。
「確かに校章の色は緑だ」
この学校の校章は楪の葉の形をしている。そしてそれはブレザーの襟あたりにつけられる。
南森と長柄は赤色。大淀は緑。因みに青色は3年生、赤色は2年生、緑色は1年生となっている。
「つまり昨日南森君は年下の高校生を苛めていたと」
「違う。別にイジメていたわけじゃ……」
大淀は目をキラキラさせながら机の上に置かれたクッキーを選んでいる。そして一番上のクッキーをヒョイと取る。そしてぱくっとクッキーを一齧り。
「でも本人はそう思っているでしょ? そうでしょ? 大淀さん。大淀さん?」
大淀の目からは涙が出ていた。それはポタポタと机の上に落ちる。口は半開き。
「ふぇぇぇ」
そして弱々しい悲鳴。鉄板の上に置かれた齧りかけのクッキー。そこから飛び出る緑の物体。
「もしかしてだけど……ワサビ入りクッキーを食べたんじゃないかな」
「もしかしなくてもそうね」
やってしまった。そのような表情を見せて、長柄は頭を手で押さえた。




