このイベントは私が頑張ります(14)
今度は外野へ飛ぶ。
「今のはイチローならアウトでしたね」
「いや、HRだろ」
「いえ、フェンス激突でとっています」
この学校にはフェンスがない。だからHR判定があいまいになってしまう。
そのボールは取りあえず放置。後でいっぺんに回収するらしい。
そしてまた新しいボールを駒川から渡される。それを大きく振りかぶって投げた。
カキン。そんな音とともに外野の方へ飛ぶ。
「今のは絶対にヒットだろ!」
「ウィリーメイズならアウトになっていました」
「おい! とうとうメジャーのレジェンドをだしてきているぞ!」
「流石に日本の選手のネタはつきましたし」
かれこれ、日本人選手を20人以上言っていたから。
大淀はワインドアップの構えをとる。そして投げた。駒川は無表情でボールを打った。それはグラウンドの奥にあるネットのはるか上にあたる。
「……こ、これは……佐賀君なら」
「今度はゲームの世界に言ったぞ。しかもそいつは守備力はBじゃなかったっけ」
桃太郎に関係しそうな名前の高校にでてくる外野手である。ちなみにパワーミートなどはAというチート。一体どのゲームかは言わないが。
「そうですね……」
もう流石に負けを認めるしかない。そう思っていた。
「ま、今のは引き分けでいいよ」
しかし駒川は勝ちを認めない。明らかな勝利も負けとかは言わなかった。
「今のは……ファールだ」
そんなはずはない。どう考えてもセンター方向に飛ぶ球。
「何? その顔。私がファールと言ったらファールなの。いいね?」
駒川の表情には笑みが出来ていた。
「ほら、早く投げて来い」
そしてまたバットを構える。
「分かりました。いきますよ」
どうやらこの勝負はまだまだ続きそうだ。
そして……そのまま時間が流れ、カラスが上で鳴き始めている。
校舎の窓は夕日が反射してキラキラと輝いていた。電気をつけた教室は次々へと消していく。
もう何球投げただろうか。大淀の身体は既にボロボロだった。
肩で呼吸をして、もう手にボールを持つのかやっとだ。
「もうそろそろ負けを認めたら」
「……そうですね。残念ですがここは認めたいと思います」
そしてマウンドの上で倒れる。その大淀の身体を駒川はゆっくりと肩を手にかけ起こす。
「まったく運動になれていないのに……お前はアホだな」
「そう……かもしれませんね」
「それにお前は嘘つきだ」
これには思わず大淀は嘲笑してしまう。
「ばれていたのですか」
「当たり前だ。予算を0にするなんて……中津先生が出来るわけない」
「ですよね」
そう。ソフトボール部の予算は0になんてなっていない。あの時、大淀は中津にこの提案を断られていたのだ。
「……どうして、こうもして私を説得しようとしている」
「それは……私は生徒会としてあなたに楽しい学校生活を過ごしてもらいたいと思いまして」
「バカバカしいな。詐欺師になってまで頑張って……」
「そうですね。バカバカしいですよね。私もどっかの馬鹿に汚染されたようで」
その馬鹿は校舎からずっと二人の様子をみている。このことには大淀も気づかない。
「このソフトボール部どう思う?」
「どうって?」
「くそだろ?」
苦笑いをしながら駒川は言う。
「今日だって誰も練習にこなかったんだぞ」
二人が対戦している間に誰も来なかった。ずっと二人きりで独占した状態だった。そのせいで大淀はそれ以外の部員の存在を半分頭から消えていた。
「そう……ですね」
「私はこんな学園生活を送るつもりなかったんだ。もっと楽しいものになると思っていた」
「それなら」
二人の目の前に夕日の光が丁度当たる。そのせいか頬が熱く感じる。
「あなた自身の力で楽しい学校生活を作ればいいじゃないですか」
そして……駒川に手を差し伸べる。
「そのために私がいくらでも力を貸しますよ」
その手を駒川はガッシリと掴む。
「……そうだな。それなら私もお願いしようかな」
二人は手を繋ぎながら太陽が差し込む方へ歩き出す。
「私も……次の球技大会のイベントに参加させてください」
「勿論です」




