このイベントは私が頑張ります(13)
「とういわけでまた来ました。先輩」
次の日。軽い足取りで大淀はソフトボール部部室前に来た。昨日ほど緊張はしていない。そして……今日は駒川を説得させる自信がある。
「だから球技大会のことについては……」
「そのことはどうでもいいのです。ただ悲しいお知らせがあるのです」
「悲しいお知らせ?」
「そう、ソフトボール部の予算が0円になってしまいました」
「なっ」
これには普段ぶっきら棒の駒川も口を楕円形にして驚いた。
「それって」
「そのままです」
「もしかしてお前が」
「生徒会には予算を操作する資格はありません」
そう。もっと言えば監視委員にだってそんな資格はない。予算というのは部長会で先生と部長の会議できまるものだ。
「だから……私じゃなくて先生が予算を減らすことを決意したのです」
昨日、大淀が中津に相談したことはこれだった。
「だからこれから大会費を申請しようがソフトボール部には一切のお金がおりません」
「もしかしてお前中津に」
「まぁそうですね。確かに私は中津先生に助言しました。ソフトボール部の予算を減らしてくれと」
「そんなことをして……」
「大丈夫です。私は強制というものが嫌いです。だから強制的に球技大会に参加させたりしません。ただ……お願いがあるのです。私はどうしてもソフトボールがやりたくて……だから私とソフトボール対決をしませんか?」
「ソフトボール対決だと。お前はなめているのか。こっちは本職だぞ」
「知っていますよ。でも私にはハンデとか必要ありませんからね。あなたが勝てば予算が復活します」
「……わかった。やってやるよ」
「ありがとうございます。先輩」
にやりと笑みを浮かべる。大淀にはこのソフトボール対決に対して勝ち目がちゃんとあった。なかったらこんなことを提案していないだろう。
そして、ソフトボールの練習場所に向かう。そこはマウンドとベースはキチンと用意されていた。
「さて、勝負しましょうか」
「あぁ。いつでも来い」
対決方法は簡単。バッティング勝負だ。投手は大淀。バッターは淀屋だった。
「あと、ソフトボール投げは無理なので上投げでいいですか?」
「あぁ、特別だぞ」
プレイボール。大きく振りかぶって第一球。
それはど真ん中。そしてそれを打った。2塁と3塁の間を抜けた。これはヒットだろう。そう思い安堵の息を吐いた駒川。
「ほら、私の勝ちだぞ」
「いえ。私の勝ちです」
「なんだと」
ニヤリと笑みを浮かべる大淀。それに対して不服な表情を浮かべた。
「小坂誠ならアウトでした」
「そこでプロ選手の名前をだすな。しかもそれ野球だし」
そう。大淀の作戦はいたって簡単なものだった。とにかく負けを認めないことだった。
笑みを浮かべながら窓の外でじっと見ている人物がいた。
南森だ。
「どう? 大淀さんは」
それを後ろから長柄が様子を聞いてくる。
「あぁ。初めは無理矢理ここに入れたという感覚はあったけど……だけどあいつは楽しそうだぞ」
「本当に大淀さんが好きなのね」
「あぁ。本当に理想の執行部だよな。アイツは」
「そうね。あなたと南森君は似ているし」
「そうか?」
「そうよ。 とにかくみんなを楽しませようとしているところとか。まっ私はそんな二人が大好きなんだけど」




