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普通の公立高校をラノベのような高校に変えてみる  作者: 北神 柳椰
このイベントは私が頑張ります
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このイベントは私が頑張ります(11)

「それでどうして図書室なんかに」

 大淀が長柄に連れていかれた場所は図書室だった。相変わらず閑散として誰もいなかった。

「敵を知り、己を知る。つまり勝つためにあなたは敵を知らないといけないわ」

「それでこの図書室に来れば敵を」

「まぁね。この学校の記録帳は優秀でね。流石に詳しい個人情報とか分からなくても出身中学ぐらいは知ることが出来るはずだわ」

  そして、また分厚い本を棚が持ってきて机の上で広げた。

「まずこれを見てもらおうかしら」

「これは……? ソフトボール部部長のページ」

 そこにはぶっきら棒な顔を浮かべる部長の写真があった。

「そう。この部長は駒川朱音というらしいわ。そしてここを見てちょうだい」

 長柄はとあるページに指を指した。そこに出身中学の名前があった。

「彼女は中崎光中学校出身」

「中崎光って……」

「そう。あなたは良く知っているよね」

 大淀は頷く。

「だって私の母校ですもの」

「えぇ……。あなたと駒川さんは同じ中学出身なの」

「そうだったんだ」

「それであなたは駒川さんのことについて何か知っているかしら?」

 ブンブンと首を横に振る。

「ま、そうでしょうね」

「無理ないと思いますよ。私は先輩とほぼ接点なんてなかったし」

 大淀は中学の時、部活動というものをしたことがなかった。だから先輩との接点が一切ないのだ。

「だけど……この人は実は生徒会に入っていたのよ」

「……それは確かに有名人ですね」

 中学の生徒会と言えば必ず朝礼で一人づつ挨拶をする。これが中崎光中学の恒例行事だ。だから光中学校出身の人は名前、顔どれかを知れば生徒会としてちゃんと思いだせるはずだ。しかしそのようなことはなかった。ピンッともこなかった。

「さらに中学のソフトボール部部長」

「結構有名なんですね。それでも私は知りませんでした」

「そうでしょうね。多分無理ないはずよ。だって彼女は……幽霊なのだから」

「幽霊って……? 急にオカルトな話になってきましたけど」

「そうね。彼女が幽霊ということを証明するから今度は私の教室に戻ってみましょう」

 そして再び二人は長柄の教室に戻る。まず自分の席へとついた。そこで鞄の中をあさる。

「……これね」

 そこからまた分厚い本を取り出した。これには中崎光43回生卒業アルバムと書いてあった。

「……どうして先輩が持っているのですか?」

 長柄は大淀達とはまた違う中学校だ。だからこのように持っているということが大淀にとって不思議に感じられた。

「南森君から借りたのよ」

「アイツは……私と同じ中学校でしたっけ?」

「ううん。南森君はあなたともジュリーとも私とも違う中学校……東浜中学という場所だわ」

「そこって……市内外じゃないですか」

「そうね。市内外。だけど私たちの世代から入試制度が変わって市内外からでも特定の学校が受験できるようになったの。東浜中学がそのいい例」

 東浜中学は実を言うと、中崎高校が一番近い。だからこの学校には意外と東浜中学出身の人がたくさんいる。

「その例として淀屋さんがその例ね」

「淀屋さん……バドミントン部の部長ですよね」

「そう」

「なるほど。だからあんなに仲が良かったのですか」

「そうね。南森君は中学の時はバドミントン部だったし」

「バドミントン部……つまり経験者だったということ」

 それでようやく大淀はどうしてあんなに南森が強いのか納得する。

「そう。しかも近畿大会に出場するほど」

「それって……かなりすごいじゃないですか! それなのにどうして生徒会に」

「野望を叶えるためだってね」

 本当にどうしようもないのだからと笑みと一緒に漏らす。

「それでどうしてアイツが光中学の」

「あぁ、その話だったわね。南森君はあなたが思っている以上に色々な人と交流があるの。だから光中学出身の人にアルバムを借りたらしい。確か陸上部部長って言っていたかな」

 その人に心覚えがあった。昨日、交渉をした人だ。身長が小さい。

「アイツって色々と凄い人なんですか?」

「それは既にあなたが知っていることじゃないかしら?」

 フフッと不気味な笑みを浮かべた。ともあれ、その文集を捲っていく。

「それじゃ……あなたにミッションを与えるわ。このイベント写真に駒川さんを見つけてちょうだい」

 そしてそれは大淀に渡された。

「一つでもいいのですか?」

「勿論」

 そしてそのミッションが始まる。

 イベント写真は中学三年間の様子が写されている。入学式、文化祭、体育祭、遠足、修学旅行などだ。ちなみに部活動はまた別の場所にそういうコーナがありそこに収められている。

 じっくりとその写真たちをみつめる。大淀にとってみれば知らない人たちの顔がたくさん。何人かは委員会でお世話になった先輩とかいるけどそれでも8割がたは初めてみる顔だ。

 そして彼女にとってみればそれはどれも一緒の顔に見える。まるで

「鳥取県と島根県みたいだ」

 それは本当にもういい。兵庫に隣接しているのが鳥取県。ちゃんと覚えてください。

 知らない顔がたくさんあるということはある意味大淀にとってみれば見つけやすいということにもなるだろう。その中で知っている顔を見つけるだけだから。

 まだ1度くらいしかあったことはない。しかし彼女はちゃんと頭の中に駒川の顔をインプットしていた。

 しかし、どこのページをめくっても彼女がいない。駒川が見当たらない。

 楽しそうに海辺で写真を撮る修学旅行写真。そこにはいない。

 リレー、組体操、応援団がうつっている体育祭の写真。そこにもいない。

 入学式には……いない。

 これは異常だと大淀は感じる。彼女が中学時代でも1、2枚は必ず写真に写っていたはずなのに。だけど駒川に関してはどこにもいない。何十枚も写真があるのに関わらず。

「これって……一体どういうことなんですか」

「おわかりいただけただろうか」

「はい。ここには駒川さんがいません」

「そう。だから次は特別ね。集合写真を見てもいいわよ。流石にそこでは発見できるかもしれないわね」

 集合写真もこのイベント写真とはまた違う欄にある。

 ペラペラとページをめくりそこまで辿りつく。

「これは……」

 これには何度も瞬きをして確認してしまう。

 2年生の集合写真。修学旅行の集合写真。そのどれもに駒川がいなかった。その代わりに別枠で一つも笑いもしない写真が貼られていた。

「そう。もしかしたらあなたと共通点があるのかもしれない。いや、あなた以上かもしれない」

「もしかして駒川さんは……」

「あなたの予想通りよ。駒川さんはね……幽霊なのよ」

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