このイベントは私が頑張ります(5)
次の日の生徒会。一般教室で黒板には大きくドッジボールという文字が書かれていた。
「さて、このドッジボールを楽しくさせる方法は」
昨日、大淀が提案したことはドッジボールを楽しい物と皆に認識させるというものだった。
「……ドッジボールじゃなくてボ○バーマンをやるかしら」
今日も眠そうな目をこすりながら長柄が提案する。
「いきなり、論外の意見はダメ」
「それならドッジボールの中に爆弾を仕掛ける」
生真面目に大淀が答える。
「そんなテロ的ことは禁止!!」
「oui。それなら鉛を中に仕込むのデース」
「ドッジボールはそんな殺人的なスポーツじゃないから!!」
「もう、簡単なことよ。ドッジボールの小説を今から書いて面白いということを広めるのよ」
「それなら主人公は高校生でヒロインは小学生がいいですね。ロリコンもつれそうだし」
長柄の提案に乗るかのように大淀は発案する。
「そうね。だけど突然高校生が小学生の学校に侵入するなんてあれじゃないかしら? 不自然というか犯罪臭がするというか」
「それなら簡単ですよ。コーチで学校に侵入することになったという感じで」
「なるほど。その手があったか。だけど犯罪臭は対して消えていないような」
「はい、そこ! まず球技大会が始まるのは数週間後だからね! それとその設定どこかで聞き覚えがあるから!!」
「それならフランス式で行くのデース。そう、例えば景品を用意するとかデース」
「どこがフランス式なのか分からない」
「それぞれの球技大会の順位で修学旅行の行き先が決まるのデース。1位はフランス旅行、5位は町田旅行、最下位は伊丹空港が修学旅行先になるのデース」
「それは嫌だな。最下位はここから数分で行けるし……ってか流石にそれは予算とか色々まずいから。後、町田はいい場所だからな」
正直、多摩地区に住んでいた人として町田は横浜に行くついでに通った記憶しかない。後、住んでみたら案外便利そうだなと思いました。
「私的には1位は遠足はバスで移動でき、最下位は現地集合がいいな」
「それはよくラノベとかで見られるよな」
因みにこの学校は全校現地集合だ。バスとか乗らない。だって遠足先が京都だもの。関東の人から見たら京都はスゲーという風になるが関西の方ではまた京都かという感じになる。関西の高校にもなれば、京都で現地集合する学校がそこそこある。だって電車で1時間だもの。電車で1本だもの。
「だけどそれも予算が足りないな」
「予算、予算っていうけど一体何円まで使えるのよ?」
「えっと……大体3000円まで」
少ないように思えるが、これは中崎西高校にとってかなり多い量だ。というのも元々予算に1円もかけなくていいイベントに3000円ももらえるのだから。
「それならそれで何か景品を付ければいいのデース」
「あぁ、そうだな。僕もそう思っている。だけど出来るなら球技大会の順位で景品はつけたくない」
「why? 何故です?」
「相変わらずフランス語じゃないな。WHYは英語だぞ」
取りあえずお決まりの突っ込みは入れておく。これがないと少し気持ち悪く感じてしまうのだ。
「まぁ……簡単に言うとそれだと戦犯というものが出てしまうんだ」
「戦犯? よく最強に理不尽にもボコボコにされる人デースか?」
「あぁ、漫画やアニメにおいてはそんな感じだな」
例えば……麻雀に置いて点を0点にされたり、例えば戦車もので出番が数秒しかなかったりそんな感じだ。
「景品をつけるというとそれはただの球技大会じゃなくなるんだ。勝敗が大事になっていくまるで部活に似た感じの意識になってくる」
「non、部活は勝敗だけが重要じゃないのデース。仲間とどれだけ協力するのかが大事なのデース」
「確かにな。だけどそれが言えるのは沢山汗水、涙を流したから。だから悔しさとかはそれが全て流してくれるんだよ」
だけどなと一呼吸を置く。
「球技大会はそうも行かない。その理由は大して練習をしないから」
中崎西高校で球技大会の練習をする人はそこまでいないだろう。そもそもそのような時間を学校側が設けていない。
「すると戦犯とうのがはっきりしてしまうの。いや、ここは戦犯ではない。負けた時の言い訳。または犠牲」
「確かに……ここでは運動神経が悪い人が責められるね」
まるで過去に同じような経験をしたかのように思慮深そうに大淀が相槌を打つ。
「そう、景品をつけるとなると争いは激化する。そして負けた時には言い訳が必要になって来る。その矛先が確実に運動神経が悪い人達になるんだ。運動神経のいい人たちにとってみれば当たり前なことが出来なくで、逃げているように見えるからね」
「でも……流石にそれは考えすぎじゃないかしら」
と長柄が口を挟む。
「この学校に置いてそのようなことは考えにくいわ」
この中崎西高校は偏差値の割りに倍率が高い。その理由はいじめがないみんな仲良し雰囲気だからと言われている。これは決してイジメを隠ぺいしているとかではない。監視委員たちがそれぞれ見回ってもイジメらしいものがない。というよりこの学校には不良らしい不良がいないのだ。
「……確かにそのような意見もある。僕だってこれで戦犯の押し付け合いが始まるだなんて考えたくないさ。でもね……少しでもそのような可能性があるのなら避けたいでしょ」
薄ら笑みを浮かべる南森。それを見た大淀は心臓を高く鳴らす。
何故かその言葉が大淀の心に強く突き刺さったのだ。そう、かつて球技大会で戦犯として扱われた大淀の心に。
「とにかく球技大会の順位で商品をつけるのは無しの方向で行きたい」
(それならどうすればいいのか?)
大淀はそう考える。これは自分で何かを閃かないといけない。そんな気がしたのだ。
(それなら個人的に景品を渡せばいい)
大淀は南森の言い分がかなり納得できる。彼女が中学の時、何故球技大会に順位があるのかとか考えたからだ。
(それなら……個人成績で……いや、それも違う)
個人成績の為にはチームの成績が重要になっていくことだってある。例えば今の1番人を当てている人がの数が8人としよう。そこでまた8人当てた人が出てきた。その現在1位の人にとってみればこれ以上誰にも当たって欲しくない。しかしそれに当たった人が同じクラスの人だったらどうだろう。結果、その人を恨むことになる。
(流石にそれは考えすぎかもしれない)
だけど、大淀の経験ではこのようなことを考えないといけないのだ。普通にこのようなことが起こり得るから。それは僅かな確率でも。
(それなら……みんなが等しく景品を得るようなシステムにしないといけない)
と、大淀は教室内にあるボールに目がいる。それはテニスボールだ。練習用ということもあり表面はかなり柔らかい。
大淀は椅子から立ち上がりそのボールを手に取った。そしてそれを南森の方に向かって投げてみる。
それはそのまま南森の顔に当たった。
「おい、何を」
そして……大淀は閃く。
(これだよ……これ。多分一人は犠牲になるけど……でもその人は頷いてくれるのかもしれない)
だから、大淀の閃いた意見に対して首を縦に振ることは既に知っていた。
「景品をつけよう!!」
大淀が閃いたこと。それを教室中に響き渡るように言う。確実に教室の外に漏れてしまっただろう。もしかしたら上の階にまで響いたのかもしれない。
「だから景品は」
「違うよ! あなたに当たったら景品をあげるシステムで……いや、あなただけじゃない。私も」
それこそ大淀が閃いた意見だった。




