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普通の公立高校をラノベのような高校に変えてみる  作者: 北神 柳椰
このイベントは私が頑張ります
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このイベントは私が頑張ります(3)

 結局南森は彼女達に近所のファミリーレストラン……じゃなかった。近所の高級レストランを奢ることになる。

「……僕の野口英世が」

「リア充になるためにはレディーに奢ることデース」

「それなら僕はリア充にならなくてもいいかな」

 強くそう思う南森だった。

 そして18時を過ぎ、南森達は外に出る。そしてレストランへ向かうことになった。

「そういえば……お前たちは家に帰らなくてもいいのかよ?」

 大淀や堂山に聞いてみる。今は帰らないとという返事を期待している。それで野口英世が守られるのなら十分すぎる結果だ。しかしその期待は外れる。

「大丈夫よ。私は夜の学校にまでついてきたほどなのよ」

「oui。私もデース」

「……ですよね」

 なんとなく分かっていた。だからそこまで酷い落胆はなかった。

 そして彼女たちはレストランに向かう。はずだが、長柄は訝しい表情をしていた。

「サンゼイヤはこっちじゃないわよ?」

 彼が向かおうとしているのは市街地から反対方向に通じる道だったからだ。学校から一番近いサンゼイヤ市街地の大きな国道沿いにある。

「知っているよ。だけどこっちにもサンゼイヤあるだろ?」

「えぇ、そうだけど……だけどそっちは少し遠いわよ」

「あぁ。バスで移動するからな。お前らならバス無料だろ」

 というのも、定期があるからだ。中崎西高校の人達がもっている定期は500円区間までどこを乗っても無料というものだ。ちなみに南森だけは定期を持っていないためバス代は自腹となる。と言っても市街地の方は210円均一だが。これが少し離れると距離によってバスの代金が変わる。

「確かに私たちはバス代を払わなくてもいい。だけど南森君はバス代を払ってまで遠い方のサンゼイヤに行くメリットはあるのかしら」

「大丈夫。なければいっていない。まず近くのサンゼイヤは中崎西高校生が誰もバイトしていないだろ」

「えぇ。確かにそうね。そもそもこの中崎西高校はバイト禁止でしょ」

「うん。原則ね」

 原則というのは学校の先生の許可があればバイトをしてもいいということだ。

「だけど……無断でバイトをしている人がほとんどだし。私のクラスでもいるよ」

 大淀が南森に実際の現状を教える。と言っても南森自身もそれを知っているし当然長柄や堂山だって知っている。この学校でそれを知らない人はいないだろう。

「うん。バイトの許可を取る人なんてめったにいない。だから少なくともどこのサンゼイヤに行ってもバイトをしている中崎西高校生はいないと思うよ」

 それは表で顔を出してしまうからだ。もし先生にバレたら説教だけではなく停学の危機もある。だから大抵はバレないように荷物運びなど表に顔が出にくいところでバイトをするのだ。

「それなら遠い方のサンゼイヤに行っても何も変わらないじゃないかしら」

「いや、そっちのサンゼイヤには他所の学校の生徒がバイトをしていて。それが僕の知り合いで……」

「女?」

「うん? 近くに住んでいる子だけど」

 すると大淀は頬を膨らます。

「また、女……」

「どうしたんだ?」

 その頬を膨らました理由を南森はまだ分からない。


 バスで揺られ20分。ファミリーレストラン(もう訂正するのがメンドクサイ)サンゼイヤについた。流石低価格(高級レストランなんかじゃないよ)で気軽に楽しめるファミレスということもありこの時間代は人が一杯だった。

 待たずに禁煙席に案内された南森達は運がいいのかもしれない。

「それで~そこの人達彼女?」

 そのウエイトレスに南森は聞かれる。栗毛のショートカットの女子だ。

「そんなわけないだろ。同じ生徒会にやっている人達だよ」

「生徒会!? あぁ三嶺君は高校生でも生徒会やっているんだね~」

「それ、去年も説明したよね?」

「いや、ここは小説的に少し驚いておこうかなと思って」

「小説的にってなんだよ」

「さぁ?」

 もしかしたら彼女はこっちに対して気をつかっているのかもしれない。こっちでどっちだよと突っ込みたくなるが。

「それで注文は何~? またいつものやつ?」

「いつものやつって?」

「DXハンバーグセット」

「僕はいつもそんなの頼んでいたっけ!?」

 パラリと栗毛の少女はメニュー票を捲る。そこはハンバーグセットの書かれた場所だった。そしてそこに一つDXハンバーグセットがある。ちなみにお値段の方たった1200円。かなり高い。いや、高い分量も結構あるのだけど。

「ねぇ? 高い物を頼ませようとしているでしょ!?」

「当たり前でしょ。バイトと言え私はここと心中を誓ったのよ」

「いや、だからって僕に高い物を注文させようとするなよ!?」

「うるさいね。大人しくこれとドリングバーとワインを頼みなさいよ」

「そこまで僕はドリングを飲まないかな。それに僕は未成年ぶって」

 と、ピンポンとコール音が聞こえる。

「ほら、別のお客様がお呼びだぞ。取りあえずそっちに行ったら?」

「いやだ。私はダーリンと一緒にいるの~」

「ダーリンって」

 その二人のイチャつきに三人は死んだ魚のような目で南森を見つめていた。

「私は三嶺君と心中する」

「ちょっと。さっきここと心中すると言ったでしょ!?」

「いや、そんなことは言っていないよ~私は昔三嶺君と結婚すると約束したし~」

「それは昔の話だろ。とっくに時効だ」

「知っていた? 今は時効改正でそれは撤廃されているんだよ?」

「あくまでも重大犯罪のみにだ!! 軽犯罪とかは時効がちゃんと存在するからな!!」

「三嶺君が私の心を奪ったのは重大犯罪だよね~」

「やかましいわ」

 ちなみに、現在でもお金を貸したりした時の時効はちゃんとある。つまり一年、お金を貸していてその間に何も言わなければ返済権を失う。だからお金を貸した時は気を付けよう!!

「と言っている間に他のお客さんは注文決まったかしら?」

「私はDXハンバーグセット、ドリングバーとワインセットで頼もうかしら」

 長柄は低い声で言う。

「ちょっと待った!? 何ちゃっかり高い物を頼んでいるんだよ!!」

「別に問題ないでしょ?」

「僕の財布に問題があるんだけど!!」

「あっ、私も同じく」

「私もデース」

 その後に続くかのように大淀と堂山も注文する。これならそこそこの高級レストランで何か注文できそうな料金になるだろう。

 そして結局、三人はドリアを注文することになった。ドリングバーセットで。

「それで……何もの。あの子にはただの人間には思えないけど」

 長柄はひそひそと南森の方に話す。

「長柄先輩の言う通りよ。アイツはまず人間じゃない」

「そうデース。彼女は人間じゃないデース」

「ちょっと君たちは急に異能バトルが始まりそうな感じで会話をするのは辞めよっか」

 長柄はチラリと栗毛少女の方を向く。彼女はウインクを決めてきた。

「彼女は梅北奏。僕と同級生で同じ中学出身だよ」

「そんなの知っているわ。私が聞いているのは彼女とあなたは一体どんな関係なのかっていうこと」

 長柄はドンドン南森の方に近づいてくる。もう少しで耳と口が触れ合いそうだ。

「いや、だから何も関係ないよ。彼女は近くに住んでいる幼馴染的存在で」

「それなら負けフラグね。ほらよく言うじゃん。幼馴染は負けフラグだと」

 確かに少女漫画、ラブコメ、少年漫画、ラノベの鉄板法則でもある。まず幼馴染の女子がいた。そんな主人公の周りに突如美少女が転入。なんやかんやで仲良くなる。そして幼馴染は次第に主人公が好きなことに気づくけど結局それは遅くそのままエンドというのは結構ある。

 と、カチャンと乱暴に皿が机の上に置かれる。

「お待たせ。ドリア四つ分ね」

 南森の分を含めたら四つだ。

 そして梅北は去ろうと背を向けた。しかし少し足を止め後ろへ振り向く。

「えっとお客さん。幼馴染にも勝ちフラグはありますよ」

 にこっと笑って見せる。これはアルバイト特有の営業スマイルだ。しかし一瞬でそれは闇に包み込まれる。

「ようは転入生が、病気か何かでお亡くなりになったらそれは幼馴染フラグじゃないですか」

 丁寧な口調でかなり怖いことを言う。

「それでは失礼します」

「何。アイツ?」

 そうつぶやき大淀は近くにあったお客様意見シートを取り出した。そして全ての項目に大変不満というところにマークする。さらに詳細の意見で『ウエイトレスが糞』と書いた。

「あの……大淀さん?」

 彼女の筆圧はとても濃くそこから怒りというものが感じられることが出来た。

「とにかく私はもうここにいかないから」

 どうして大淀がこんなに怒っているのか。それを知るのはかなり先になりそうだ。結局そのまま食事をして会計をすませようとする。梅北が気を利かせたのか、ドリングバーは全員分無料となっていた。

「もう帰っちゃうんだ」

「まぁな」

 寂しそうに梅北は言う。

「そう。それならしょうがないね」

 そして南森達は店に出る。ありがとうございましたとアルバイトらしく彼らを見守った。しかし一番後ろに歩いていた大淀だけは違った。

 梅北は大淀の裾を掴んだのだ。

「少しいい?」

 そして白い歯を見せながら彼女は大淀を睨む。

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