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普通の公立高校をラノベのような高校に変えてみる  作者: 北神 柳椰
このイベントは私が頑張ります
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このイベントは私が頑張ります(2)

「でさ、もし球技大会が水泳に決まったらお前は喜ぶだろ」

「あのなぁ……」

 南森は野球部部室の中にいた。そこにはいつの日かお世話になった野球部員がいる。

「俺を変態枠に入れないでもらえる!?」

「いや、だってよく漫画とかでは変態扱いされるじゃん。野球部」

「それは野球部の風評被害だからね!?」

 南森は彼に今回の球技大会についてどうすればいいのかを相談していた。

「でも本当に水泳じゃなくていいのかよ」

「だからいつ水泳がいいって言ったんだよ?」

「いや、野球部だから」

「だから俺は変態じゃねぇ!!」

 野球部員の叫びが部室の外にまで漏れる。

「それじゃさ……もし大淀や長柄の水着姿が見れると言ったら」

 しかし野球部員に向かってそれを言うとさっきまで叫んでいたのが嘘みたいに大人しくなりう~んと唸り始める。

「それなら……少し考えてしまうけど」

「やっぱり考えるんだ」

 南森も思わず考えてしまう。そっちの方がラノベにとって美味しいのだがと。しかし残念なことに南森達のストーリーにはそんなイベントなど存在しない。

「球技大会でドッジボールというより変態というレッテルを貼られてでもでも水泳大会の方がいいでしょ?」

「うん、確かにな」

「さっきまでの変態じゃないという否定が行方不明だけど」

「勘違いするな。俺達は変態というレッテルを貼られてでもドッジボールが嫌なだけだからね。別に水泳がいいとかじゃないんだからね」

「どんなツンデレだよ。でもドッジボールが嫌なのは本当らしいな」

 取りあえず南森はメモをしておこうと考える。

 ドッジボールは嫌だという人が多い。それと野球部は変態が多い。ということを。


「球技大会? そんなのバドミントンがいいに決まっているでしょ」

「知っていた」

 今度はバドミントン部にお邪魔をしていた。南森はいつもの如く、部員に混じってバドミントンをしていながら淀屋と会話をしていた。

「だけど……それ以外のスポーツで」

「それならインディアカかな」

「何も変わっていない」

 インディアカというのはバレーとバドミントンを合わせたスポーツ。簡単に言うと手で打つバドミントンだ。

「それにインディアカは絶対に無理」

「なんで?」

「だってそれ専用の羽がないもん」

「それなら買ってよ」

「……お前はこの学校の予算を知らないだろ。一回見たらちびるぞ」

 大抵、生徒会の予算使用道方向書は四桁あれば多い方になる。五桁とかは絶対にない。そのせいか彼らは近所にある100円ショップが宝の山に見えてしまう。

「そんなに予算がないんだ」

「あぁ。バドミントン部から年貢を納めてもらおうか考えてしまうほどだぞ」

「もしそうなったら三嶺君を不信任で解任するようにするけどね」

 突然、淀屋はスマッシュを打ち始める。それをあっさり取り相手コートへ。そこからまたキャッチボールのようにゆったりと打ち合いをする。

「それでドッジボールはどう思う?」

「嫌いなスポーツではない。だけど球技大会にするのはもういいかなと思ってしまう」

「だよな。多分そう思っている人の方が多いよな」

「うん。中にはドッジボールだから休むという人もいるよ」

 中崎西高校はイベントとかに休むとそれは大きく進学に響く。この学校を留年する理由は赤点が一定以上ある他に学校の出席日数が足りないというものもある。球技大会などのイベントを休むとそれは普通の授業を10日休んだ扱いになる。それでも休みたいと思うのはかなり……なんだろう。

「まぁ、これでラノベらしく世界を救うために休んだとかだったら許すけどそうじゃないんだよな」

「当たり前でしょ」

「だよな。この学校案外というより一人も留年する人いないし」

 留年が都市伝説レベルだ。

「それにしてもこんなにドッジボール反対派が多いのにどうしてそれになるんだろ」

「支持なし民主主義の暗だよ」

 あるアンケートがあるとしよう。それは太陽光に関するものとする。それで海上の上で巨大太陽光パネルを作るのに賛成か、反対かと質問する。これは質問の仕方で賛成派も反対派も増える。

 例えば太陽光でCO2が減ると初めに言っておけば『なんとなく』賛成派が増える。逆に海の上で太陽光を設置することで生態系が壊れるということを先に言っておけば『なんとなく』反対派が増える。何故か。それは一般の人がそこまで太陽光の知識がないからだ。分からないことに対しては『なんとなく』でしか投票するしかないのだ。

「今までずっとドッジをやってきたしそれ以外のスポーツが見当たらない。だからなんとなくでドッジボールに決まってしまうの」

「なるほどね。だから反対派が多くてもそれ以外の競技を球技大会でやることがないんだ」

「うん、安全面とか競技人口とか考えたらやっぱりドッジボールが一番になるしね」

 淀屋はもう一度スマッシュを打つ。角度のついたシャトルはそのまま地面に突き刺さった。

「でもやっぱりバドミントンしたいな」


(やっぱり……ドッジボールをやりたくないという人がたくさんいるな)

 他にも南森は色々な部活をめぐる。そしてそこで話を聞く限りドッジボールよりやりたいスポーツがあると答えた人が半数以上いた。

(……確かに僕も他の競技をやりたいけど)

 それでもやはりこの学校で一番多くの票を獲得したのはドッジボールだ。

(もうドッジボールはほぼ決定かな)

 そこからまた違う競技へ逃げるということは恐らくしにくいだろう。

(それならドッジボールを楽しくさせるしかないかな)

 南森が最終的に下した決断はそのようなものだった。

 そして、今日の生徒会会議を開催する場所である教室の中に入る。

 そこには楽しそうにトランプをする三人の姿が。

「……何をやっているの?」

「ババ抜きよ。見ないと分からない?」

 と、大淀からカードを引きながら長柄は言う。

「……うん、知っているけど。どうしてトランプ?」

「だって、あなたが中々来ないもの。暇でしょ?」

「フランスではトランプはメジャーですし」

「……それは本当なのか?」

 さぁと首を傾げる。

(ま、お互い仲良くしているのは悪いことじゃないしな)

 厳密な生徒会の仕事はない。それなら別に何をしてもいい。それが南森の考えだった。

「それなら次、僕も入れてよ」

「別にいいけど……私強いわよ?」

 自信満々にそう言う長柄。よく見ると長柄のカードは既に3枚までへっていた。この三人の中では一番枚数が少ない。

「ババ抜きなんて運ゲーだろ。それで強いとかあるのかよ?」

「残念ながらあるのよ。今は丁度4連勝中だし」

「ほう、それで何をかけるんだ?」

「決まっているでしょ」

 貞操とかだろうか。と南森は思ってしまう。もう、それラノベを超えているような気もする。エロ小説だよ。

「私がもし南森君と3連勝したら高級イタリアンレストラン、サンゼイヤで私に何かを奢ること」

 あぁ、本当に地味だ。ちなみにあの緑の店は関係ない。あくまでも『高級』なのだから。決してミラノ風なんちゃらとか売っていない。あくまでも『高級』なのだから。

「えぇ、あそこか。今金ないしな」

「299円あればドリアを奢れるでしょ」

 何度も言う。299円であろうが関係ない。

「……そうだけど。僕の小遣いはこの学校の予算並みだし」

「それに負けらければ何にも問題がないはずでは?」

「確かに。勝てばいいのか」

 と言っている間に長柄はカードを揃えあがる。一番抜け。これで5連勝だ。

「そうよ。カモよ。早くしなさい」

「カモって僕のことかよ」

 結局、大淀が最後まで残るという形になってしまった。それが決定した瞬間、大淀は南森をキリッと睨んだ。

「ま、僕が入ろうと結局大淀は最下位になると思うけど」

 それがラノベの黄金パターンじゃないか。昔の阪神のJFKより黄金展開だ。そしてそこで大淀が顔を膨らまし、可愛いシーンを見せる。これがお決まりではないか。

 だけど実際に顔を大きく膨らましたのは南森だ。お前のそんなシーンはいらない。

「いや、強すぎないか?」

 まず長柄が2連勝。そして南森は2連続最下位。

「そうね。ババ抜きは運ゲーとか言ったでしょ」

「あぁ、言った」

「そう、確かに運ゲー。だけど麻雀のように完全な運ゲーじゃないの」

 南森にとってみれば麻雀も完全な運ゲーだ。

「まず、こういうゲームには必ず人間の心理というものが存在するの」

 つまりどのカードを取らせるのかとかどんな配置にするかとかだ。

「だからね。これを利用して相手にババを引かせたら絶対に勝てるの」

「そんな馬鹿な話があるか」

 理論上はそうである。ババを相手に渡せば勝利。このゲームはそういうルールだから。だけど実際にはそんな上手くいかないことを南森は知っている。自分の手元に渡されたババは中々相手に渡せないものだ。

「ミスディレクションという言葉を知っている?」

「あぁ、手品師とかが良く使うあれか」

 ミスディレクションとは、簡単に言うと相手を惑わし判断力を操作することである。一番分かりやすい例は、よく漫画で『あっ、UFO』とか言い相手をそっちへ向かせようというシーンが見られる。これこそがミスディレクションだ。

 これは一番多く使われるのが手品。相手を惑わすことにより如何にも魔法を使ったという思考にさせるのだ。

 他にもスポーツの世界でもよく使われる。例えば野球。フォークなどでボール球を空振りさせる。これはミスディレクションだ。

「そう。あれって不思議よね」

 正直、ミスディレクションというのは心理学でも色々と深い話がある。

「それを利用すれば私だってずっと一位を獲得するのは余裕よ」

「そんな馬鹿な話……」

 と言っている傍から南森は長柄からババを引く。このままだとまた長柄が勝ってしまう。そうなったら『高級』イタリアンレストランで何かを奢らないといけなくなる。

「そう。そんな馬鹿な話は存在するのよ」

 長柄のカードの枚数は後、三枚。彼女は隣にいた大淀からカードを引く。

 その瞬間黒い笑みを見せる。頭に角が生えた魔王そのものだ。

「……どう?」

 長柄は二枚のカードを南森の方に公開する。スペードの2とハートの2。それを捨て場に捨てた。そして残り一枚を南森に渡す。

「参ったよ」

 当然だがババ抜きはこうカードを揃える行為もある。だからババを相手に渡せたとしてもカードを揃えるという運の要素も存在するのだ。しかし彼女はそんなことは物ともしなかった。

「これは完全にお前の勝ちだ」

「それなら驕り決定ね。今日の夕飯はこれで」

「それなら私も」

「私もデース」

 長柄の後に何故か大淀、堂山も続く。

「おい、待て。お前らは違うだろ!?」

「いえ、ぜひ奢ってもらうのデース」

 このまま行けば本当にちょっとした高級レストランとほぼ同額のお金を払うだろう。南森は財布の中身を確認した。そこには大切な大切な野口英世が数人眠っていた。なるべくなら起こしたくないところだろう。



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