現実世界に幽霊はいるのかな?(4)
「ラノベにおける学園内におけるイベントとは何か」
「封絶または結界が張られそこで戦闘。何故か主人公はその中に入れる」
長柄はイライラした状態で南森の質問に答える。
「実は担任OR教頭が黒幕でその人たちと異能バトルネ」
そのイライラの原因であるジュリーを長柄はキリッと見つめた。絶対にこいつが何ものか調べてやるという闘志に燃えていた。
「主人公が取りあえずトラックに轢かれ取りあえず転生。だからいっぺん死んでみる?」
と大淀の辛辣な言葉。
「あの……なるべくなら学園ラノベでお願い」
「それなら『皆さんには今から殺し合いをしてもらいます』的なかしら」
「この中に一人死者がいるみたいなのもいいね」
「長柄さん? 大淀さん? 出来るだけ平和なものでお願い」
「ホラーね。それならこれはどうですか? 肝試しトカネ」
「そう。そういったもの!! 流石ジュリー!」
「えへへ。それほどでもないネ」
「そう。やっぱり真夜中に学校に忍び込んで肝試し」
「それは病弱な少女の思い出作りだったという話かしら」
「できればハッピーエンドなお話でお願いします」
「それならバイクとか必要ね」
「大淀さん? 僕は免許を持っていないよ?」
「ラノベや漫画、アニメには免許は必要ない!!」
「必要だよ!! 二次元の世界でも十分必要だよ!!」
確かにラノベで時々、幼女や明らかな高校生が運転している時もあるが。
「それならハワイの親父にでもバイクの云電の仕方とか学んできなさいよ」
「残念だが僕にはハワイの親父がいないものでね。というかまた話が前に進んでいない」
話を前に進めたいときには咳払い。というわけでゴホンと咳払いをしてみる。
「とにかくだ……今日の夜肝試ししようと思う。というわけで深夜1時にこの学校に集合しようかと」
「今日じゃなくて明日ね。あと私は無理だわ」
「私も流石に母が許してくれないと思うけど」
「ジュリーもデース」
「それにあなたのは市の条例に違反しているわ。生徒会がそんなことで言いの?」
市の条例というのは高校生(18歳以下)が一人で23時以降にうろちょろしてはいけないというものだ。勿論塾などは別にいいがそれでも警察の職質対象になる。
「それなら……20時ぐらい」
「えぇ。私の情報によると今日はそれぐらいには全員学校からいなくなるみたいね」
「というわけで今日の20時に肝試しをしてみよっか」
南森にとっては随分早い時刻の肝試しとなってしまった。果たしてそのような時間からお化けさんが出てくれるのだろうか。お化けよりも通り魔の方が確率的に高いような気もするが。
「でも変態と二人っきりというのは……」
それでも抵抗を見せたのは大淀だ。
「ジュリーは行くネ」
「勿論私も行くわ」
しかしそれ以外の二人はあっさりとそう宣言。
「わ、私も行くよ。私だけ一人ボッチにしないでよ!!」
いとも簡単に流されてしまった大淀。結局生徒会メンバー全員は突如の肝試しに参加することになった。
この後、生徒会メンバーに降り注ぐ悪魔のような悲劇をまだ知らない。と適当に言っておけばなんとか気になる引きになるだろう。
……と言ったもののこの話はまだしばらく続けようと思う。
さて、時刻は午後20時。街中はまだ灯りがあちこちに灯っていて不審者が出るには少し早い時刻だ。ファミリーレストランなどは恐らくこれからが繁盛の時間だろう。
しかし、こんな浅い時間でも学校の周辺は少し陰気くささがあった。というのも中崎西高校は市街地にあるわけではない。いや、バスで数分も移動すれば市街地に行けるのだが、少し高台にある。まるで市街地を上から見下ろすような場所だ。
夜景大三景と言えば函館、神戸、長崎。もし違っていたら謝るが多分そうだ。その内神戸は市街地から少しすれば六甲山や甲山などの山がある。そこには数多くの展望台が作られ素晴らしい夜の神戸が見える。夜景などなら大阪からだって見える。しかし神戸の夜景というのは六甲アイランドやポートアイランド、その周辺のメリケンパークなど正面を見れば神戸の街並み。横を見れば阿倍野や梅田のビル、天気が良ければ西の方向に明石海峡大橋だってみれる。
中崎西高校もそこら辺の高台にあるので、流石に明石海峡大橋や姫路の町までは見れなくても三宮などはキチンと見える。
南森達の後ろを振り返れば夜景。そのような感じだ。
そして彼らは校門前に集合していた。
「……眠いわ」
「まだ20時だよ!?」
長柄は眠そうに目をこすっていた。多分南森が何も話かけらければ後数分以内には寝てしまうだろう。
「そうね……でも眠いのは生理現象だからしょうがないわ」
「お前は僕がここで変態行為をしてもそれは生理現象だからしょうがないってすましてくれるのか?」
「……ごめん。何を言っているのか分からないわ」
ふぁぁと大きな欠伸をする。ちなみにどうして長柄がこんなに眠そうにしているのか。それはジュリーにあるだろう。
いつも長柄は昼休みを休眠時間としている。しかしジュリーのことを調べているうちにその睡眠時間が取れなくなっていたのだ。
「……私も早く家に帰って眠りたいから出来るだけ早くお願いね」
「お前もか」
しかし大淀の欠伸はどこかわざとらしい。
「正直あまり夜の遅くまで男と一緒にいるのが嫌なだけだけど」
それはひどいなと突っ込もうとしたがそれは当たり前のことかもしれないと南森は気づく。正直、高校生が20時以降に塾とか関係なしに一緒にいるのはよろしくないことだろう。
「フランスでは夜の20以降の逢瀬は普通ネ」
「フランスの知識が何もないくせに変なことを言わないでくれるかしら?」
実際にはフランスでも普通ではない……はず。
「とにかくみんなよく集まってくれたね」
と言っても誰も家に帰っていないらしく全員生徒会の時と同じ制服だ。
「それじゃ……今回出没する幽霊について語るね。今回は戦前の時の学生がここに……」
「一応言うけどここは現在創立20周年と結構浅いわよ」
中崎市内では一番新しい学校だ。しかしそれが痣となったのが中崎市内で一番施設の古い建物になっている。
どういう事か。例えば隣の中崎北高校というものがある。そこは創立50周年である。しかし建物は圧倒的に中崎北高校の方が新しい。というのも約10年前に建物の老朽化などを理由に建て替えたからだ。
中崎西高校が不幸なのは創立20周年で建物の老朽化がそこまで進んでいないこと。そのせいで今でも中崎市では中崎高校と共に2校しかない冷房のない学校とされている。
「それならニクソンショックの時の霊」
「だから創立20周年だって言っているわよね!? 第一ニクソンショックの霊って何?」
「そうだここは元々墓場で……」
「ここは元々何かの工場だったらしいよ」
何かの機械工場だ。というより流通施設のようなものだったが。将来的にここに高速が敷かれ都市化が進むと思われていた大手の会社が工場を構えていた。しかしその結果は散々なもの。港から遠く経営苦戦するばかり。当時、高度経済成長期にはこのような『発展するかもしれない』という少しの希望だけで住宅街や工場が作られることが多かった。
「ところでどうして墓場の跡地に学校はよく出来るのでしょうか?」
思わず思ったことを口に出す。
「それは……土地代が安いからでしょうね」
墓場に学校というのは学校の怪談でもおなじみである。しかし実際にはそのような場所は沢山ある。多分知らないだけで。どこか遠いとある人の母校もついその人が生まれた時まで墓場だった小学校というのもある。
「それなら……ここで無念に死んだ人の霊が」
「随分雑になったわね。それでここ周辺でどのような死に方をしたのかしら」
「そこの川で溺れて死亡」
南森が指さした先には川があった。まるで雨が降ったあとの水溜りのような……
「ほとんど流れていないわね」
「私もこの川が流れているところ見たことない」
「OH……これで溺れるのは無理ネ」
「……そうだな。これは無理だな。それならここで銃の誤射で……」
「それ、銃規制されている日本では可能なことかしら」
「熊とかがでると言われているじゃん。だからその誤射で……」
この中崎西高校のすぐ上は山だ。市街地にイノシシが出たらニュースになるがここ周辺で出てもニュースになど一切ならない。
学校側も恐らく紙で注意しかしないだろう。トイレの便器が荒らされていた方が中崎西高校にとっては重大事件だ。
「だけどここら辺で銃を発射している人を見たことある?」
「ないな」
「さて、次はどんな霊が出るのかしら」
ニヤニヤと楽しそうに笑みを浮かべている。どうやらさっきまでの眠いという感情を忘れてしまったらしい。
「とにかく中に入れば分かるだろ」
中崎西高校の門は固く閉まっていた。ここは18時の時点で完全に閉まってしまう。
「ここを飛び越えるか」
門の少しの出っ張りを足場にして上に行こうとする。そして南森は無事門の向こうにいくことに出来た。
そのすぐ後ろから長柄、ジュリーが着地。そして残るは、大淀一人となる。
しかし彼女は運動神経が悪い。なかなか門を飛び越えることが出来なかった。ベランダに干している布団のように門に体をつけ、大淀に手を差しのばしてみる。
その手を取った。そしてそのまま後ろへ引っ張る。しかし、あまりにも勢いが強すぎたため南森はバランスを崩してしまった。そしてそのまま後ろへ転んでしまう。
さらには大淀も釣り上げられた魚のように南森の方に飛ぶ。そしてそのまま南森の頭に尻をつく。
その瞬間に南森は大淀のパンツを見てしまう。
(ピンクのクマさんマーク。相変わらずラノベヒロイン検定合格だな)
大淀はすぐさま立ち上がり大淀を蹴った。
「この変態!! 死ね」
「安心しろ。もうすぐ僕は死ぬ」
上から大淀が落ちた衝撃により軽く唇を切った南森。しかし奇跡的にも(?)南森からしてみればラノベ主人公補正で何とかそれ以外は無事だった。
そして立ち上がり、校舎の方へ向かう。
「そういえば長柄先輩」
長柄というところを強調している。どうやら南森に頼る気は0らしい。
「この学校って……警備員とかいるのですか?」
真面目な大淀にとってそれは重大な問題だった。もし、警備員がいて叱られるようなことがあれば明日精神的に学校にこれなくなるだろう。
「大丈夫よ。安心しなさい。よく夜の学校では警備員がいるけど……あれは一昔の話。今は機械による警備が主流よ」
毎回言っている気がするが……勿論例外がある。例えば、昔雇った警備員が今も定年退職していない場合はまだ現役で夜の学校をウロチョロしている。また、公共事業として仕事を増やすためにあえて警備員を雇っている市町村もある。またより安全な確保のために機械以外の人力でも警備員を雇っているところもある。例えば天体部など夜の活動が多い学校などがそうだ。
あくまでも雇っていない方が多くなっているというだけの話だ。だからもし、夜の学校に行くときは事前にそういう確認が必要だよね(キラリ)。まぁ機械警備を任せる理由は当然、それでも人力と同じくらい仕事をしてくれるからだけど。例えば猫一匹入っただけでアラームが鳴る学校だってある。さて、この学校はというと……
「おい、昇降口の鍵が閉まっているぞ」
当然そのようなセキュリティーは万全。ちなみにこの学校の警備システムは、もし昇降口が閉まっている場合に窓ガラスが割れたら自動的にセンサーが鳴るシステムだ。
「……なんとなくこの展開は読めていたわね。ま、安心しなさい。この昇降口を開ける方法は簡単」
長柄は指先で入口付近にあるボタンを指す。まるで電卓のように数字が並んでいる。
「ここに正しい暗証番号をいれればいいのよ」
「なるほどね」
「で、その暗証番号は?」
「確か1023ね」
「世界恐慌か」
「そうね。この世界の誰かが経済学を勉強するときあまりにも23という数字がたくさんでるからそれに呪われた人もいるけど」
「……誰のこと?」
本当に誰のことか分からない。ただ決まって23分に投稿する人がいるらしい。
「とにかくそのボタンを押せば中に入れるわ」
「よし、それなら」
1023とボタンを押す。しかし何も反応はない。
「……おかしいな」
長柄は顔を赤らめ南森から顔を背けた。
「あの……もしかしてだけど長柄先輩。この暗証番号って毎日変わるのではないのでしょうか?」
「確かにそういうシステムの鍵もあるわね」
事前に鍵担当の先生が暗証番号を設定するというものだ。ちなみにその暗証番号を忘れても渡された鍵で普通に開ければいいだけなので問題ない。もしその鍵をなくしたのなら……もう、知らん。そんなレベルだ。
「それじゃ……一つ一つやっていくしかないのか。それじゃ……0915」
これはリーマンショックの日にちである。
「これじゃない。それなら1991」
これはバブルが崩壊した年である。ちなみに教科書によってはさっきの世界恐慌もそうだが日にちが微妙に違うことがしばしばである。例えば世界恐慌で暗黒の木曜日と言われるが実際に株価が大幅に下がったのは日曜日または月曜日だったりする。と誰も聞きたくない経済の話。
「1992」
これはBIS規制が本格的に導入された年だ。BIS規制って何という人もいるかもしれない。その人はぜひ経済学部へ。
「どれも……開かないわね」
「うん。もう諦めるか」
結局、南森の提案により諦めることになった。
この選択は果たして正しかったのか。詳しい解説は次の行。
はい、解説すると正しい。この学校のセキュリティーシステムは鍵が開いた時間など細かく記録されているからだ。もし鍵を開けていたら不審に思った先生たちが色々と調べるだろう。なのでリアルではあまり夜の学校に侵入するのは進めない。なんだ、みんなを正しい方向へ導くこの超優良小説は!! ま、その前に高校生が夜遊びをしている時点でアウトなんですけどね。
「結局幽霊に会えなかったのか」
あぁ、と嘆く南森。
「とても残念デース」
「私もわざわざここに来たのに」
プイッと頬を膨らます大淀。どうやら彼女はまだあの事を根に持っているらしい。
「私ちょっとトイレに言って来るデース」
と、言って走っていくジュリー。ここ近くの公園に公衆トイレが用意されている。恐らくそこの方に行ったのだろう。
「あいつ一人で大丈夫か」
いくらここ周辺が平和といえ、やはり一人で公園に行かせるのは抵抗があるのだろう。
「それなら私が様子を見に行って来るわ」
「いや、ここは男である僕が行った方がいいんじゃ……」
「男であるあなたが女子トイレにいってどうするのよ」
「ごめん。それはごもっともだわ」
そして結局長柄がトイレの方へ行くことになった。
トイレの中。公衆トイレとはいえあの独特の鼻に刺す臭いはない。その鏡の前でジュリーは立っていた。
「それでトイレじゃなかったのかしら?」
そのジュリーの後ろに長柄が立つ。そしてビクリと体を揺らした。
「そして質問があるわ。現実世界に幽霊がいるのかしら」
その質問をした途端ジュリーは笑い声を漏らした。
「流石に幽霊はいないんじゃないかな……それってまるでメルヘンの世界の登場人物がいるみたいな感じになるでしょ。それはまるであのネズミ」
「それ以上はまずいわ」
主に遠い世界の誰かが。
「とにかく……あなたは幽霊……なんでしょ? この学校には実在しない」
ピューと冷たい風が二人を襲った。




