ラノベの出会いはいつも突然じゃないか! (3)
少女は急いでスカートを抑える。そして南森の方に振り向き目があってしまう。
黒髪ツインテール。目は威圧的な釣り目。身長は高くすらりとしている。それでもどこか幼い。
その時、南森は心臓をドクンと鳴らす。
(こ、この人だ)
脳内でこの少女に竹刀を持たせてみる。
(うん、どうみても執行部だ)
この少女に対して運命というものを感じる。ついさっきまで求めていた人が脳内から外へ飛び出した。そのような感じだ。
(この人はなんとしてでも執行部に入れないと駄目だ)
これ以上の出会いは恐らくない。これは神様の贈り物だと考える。
少女は歩道橋の階段を一段、二段と降りてくる。そして歩道に足を着いた瞬間走り出し南森の方へ。そのままグーで握られた拳を南森の頬に当てた。
コンクリートの塊がそのまま当たったかのようだ。南森は後ろへ吹き飛ばされる。そして地面に伏して思わず……笑みを作っていた。
(そうだよ。このパンチだよ。これも執行部にふさわしい)
「何、笑っているの?」
低い声で尋ねる。
「いや、運命という言葉を知っている?」
「馬鹿にしているの? それぐらい知っているよ。形容詞で」
「あっ、名詞ね」
ここでこんな間違いされるとは南森も思っていなかった。
「うるさい」
今度は腹部に蹴りが入る。
「いいぞ。うん、これこれ」
昼食が胃袋から飛び出しそうなくらい強い衝撃が襲う。
それでもこの蹴りは南森が求めていたものだから……白い歯を見せる。流石の少女も一歩後退する。
「なんなの? そんな趣味があるの?」
「あっ、いや別に僕はドMとかじゃないよ。ただ嬉しいだけ」
「やっぱりドMじゃん!!」
「いや、違う。気持ちいいとかそんなことを感じていないから」
「うるさい! もっと痛めつけるわよ!」
「おっ、いいぞ」
「何こいつ……気持ち悪いんだけど」
周囲から見ればそうだろう。天から見てもそうだろう。遠くから見ても気持ち悪い。
「君だよ、君なんだよ!!」
「何が?」
「生徒会執行部にようこそ!!」
南森が立ち上がると、少女は三歩ほど後ろへ後退する。
「ちょっと意味が分からないんだけど!」
少女は手に拳を作っていた。そしてその拳から汗が流れ落ちる。
「大丈夫。初心者大歓迎。アットホームな職場だから」
「何? そのブラック企業の定型文」
少女は肩を震わす。
「とにかく生徒会に入ってくれ!!」
「嫌よ!」
南森が大きく一歩前に歩く。すると少女は磁石のように後ろへ一歩後退する。
「無理だから!」
こんな変態のところにいたら何をされるのか分からない。少女からしてみればそう思ってしまう。
「これ以上近づくと警察呼ぶわよ」
「警察に捕まっても君を勧誘する」
「えっ、ちょっと。へぇぇぇ!?」
警察という単語を出せば絶対に諦めてくれるだろう。そう思っていた少女にとってみれば誤算だ。学生生活どころか人生すらも終了した。そう覚悟した瞬間だ。
少女は南森に背を向け走りだす。彼女はそこまで足は速くない。スタミナもない。しかし今日はいつもよりもかなり速く感じた。そして500メートル以上走っても息が途切れることがなかった。
少女の頭からはホラーゲームのBGMが流れる。とにかくしばらくホラー系の物を見ないようにしよう。そう誓った少女だった。




