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これが本物のラノベ高校だ(7)

「それでさ、派手なイベントをやりたいと思って」

 GWが終わった朝一番。南森は中津に予算のことを聞いていた。少しでも多くの予算を引き出そうと考えたのだ。

「だから予算を倍増して欲しいななんて……」

 中津はいつも通り、がぶ○みを机の上に置いている。

「1万円ぐらいなら増額を考えてやる」

「いや、僕がいったのは倍増。つまり予算を倍に……」

「無理」

「ですよね」

 南森自身もそんな答えが返って来ることをしていた。別にこれでそうだね、倍増をしてやろうという答えが返って来ることを期待していなかった。

「第一、何故いつも俺に聞く」

「いつも暇そうにしているからです」

 中津は授業がないのではと思うぐらい、いつもここにいる。

「俺だって、ちゃんと授業とかあるんだぞ。ここで準備をしたりとか色々忙しいんだぞ」

「でもここにノーバソどころかノートなどの紙もないじゃないですか」

 あるのはがぶ○みだけ。

「だからここで休憩することによって精神統一というものをだな」

「分かりました。とにかく予算の倍増は無理なのですね」

「あぁ。もし倍増とかして欲しかったらまず校長先生とかに当たるんだな」

「もうあたっています」

 その答えは勿論無理というものだ。

「そうか。それなら俺のところに来る必要なんてないな。もう帰れ。二度度こっち来るな。来たら欠点にするぞ」

「僕は先生の授業をとっていないので大丈夫です」

 結局中津に教室の外へ追い返されるような形になってしまった。

「ま、そんな簡単に谷町高校のような祭りをつくれるわけないよね」

 南森はこの結果はすでにしっていた。

「それなら取りあえず今できることを……」


「というわけで今日から執行部を育てていきたいと思う」

 そしてその日の放課後、今日の生徒会活動は一般教室。長柄と大淀の前で本日の活動内容を発表する。

「執行部ってもしかして私のこと?」

 自分の方に指をさす大淀。

「もしかしなくてもお前のこと」

 そして、南森も大淀に指を差す。

「とにかくやっぱりラノベ高校は生徒会が強い。そしてどうして生徒会が強いかというと執行部がいるから。これによって色々と監視されて生徒会に歯向かうことが出来なくなる」

「確かに……そうね。そうラノベなら」

「だけど……ここはラノベとは違うのよ。現実なのよ」

「……それを言い出したら全ての終わりで……でも谷町高校見たらリアルでもあのような学校があるっていうことが分かったでしょ?」

「あれは……私学で生徒数も予算も違うじゃない」

「そう。だから勿論真似をすることができない部分だってある」

 例えば、外に出している予算。例えば多種多様な部活動の出店。これらはこの学校の予算をみても生徒数をみても多分真似をするのは相当難しいだろう。

「だけどその反面、真似をすることができる部分だってある。例えば執行部が周囲を監視する。元々生徒会の仕事は監視することだ。それをちょっと活性化させるだけで変わる」

「そうね。だけど知っていた? こういう政治的なものを強めるには『悪者』がいないと権力が強まらないのよ」

 相変わらず、長柄は本を読んでいる。今日はラノベではなく社会学の本か。

「知っている」

 悪者を作るというのは『殺人』や『強盗』を増やすということではない。『知識人』や『学者』など今まで普通に生きていた人たちを『悪者』として認定することだ。そしてそれらを始末することによって自分はチカラがあると見せしめることができる。

「南森君は中世のような魔女狩りをして生徒会権力を高めようと考えているのかしら」

「まさか。そんなことをしてしまったら僕が目指している高校とは逆方向に言ってしまうよ」

「そうね。ま、私的にはどこかのサバイバル小説みたいな学校も面白いと思うけど」

「でも悪者を作るというのはあっている」

「校則を変えて今日まで校則違反じゃなかったことを校則違反にするの?」

 大淀が聞いてくる。

 確かに権力の見せしめとしてそのようなことも考えられる。というよりこれが一番批判を少なくして権力を見せつけることが出来る。

 どういうことだというと元々グレーだったのを完全に黒にするのだ。これによってこれが法律違反だということがはっきりとして納得する人が多い。

「この学校では生徒会が校則を変えるのはかなり難しいからそれはしないよ」

 というよりほぼ不可能。日本国憲法を変えるのより難しいと言われる。

 まず朝礼で発案し、投票した人の9割以上が賛成しないといけない。この9割がかなり大きな壁になっている。何故なら9割というのは生徒だけではないからだ。先生の投票を含めた9割だ。つまり生徒が有利な校則も教師が反対するから絶対に可決することはない。だから歴代の生徒会は誰も校則を変えようとはしなかった。南森もさっきまで校則を変えられる制度があったのを忘れていたぐらいだ。

「だからもう単純。これは執行部の訓練みたいなものだし……どこかの部活にお願いして悪者になってもらう」

「それって……どういう事?」

「だから……」


「というわけで執行部を育てるために長柄を誘拐してください。お願いします」

 南森は野球部の前で頭を下げていた。

「いや、よくわからないのだが」

 その野球部は呆然とした表情を見せている。

「いや、だから……野球部が長柄をさらうじゃん」

 うんうんと野球部は頷く。

「そうすると野球部が悪者じゃん」

「いや、ちょっと待った。そこでもう意味が分からないわ!!」

「なんで!? 誘拐したら悪者じゃん」

「そうだけど……いや、そうだけど違う」

「だから誘拐して。もう誘拐したらなんだってしてもいいから」

「で、その後の処分は?」

「行為によっては退学、休部かな」

「ほら、ダメじゃん!!」

 南森は野球部に何度も頭を下げていた。これを後ろで聞いていた二人はあきれた表情をしていた。

 長柄に至っては目が死んでいる。

「南森君は人を売って一体何をしようとしているのかしら?」

「別に売っていないさ。だってこの交渉に一つもお金動いていないじゃん」

「それはもっと嫌なことなんだけど」

 奥のグラウンドからは野球部が練習をしている声が聞こえる。南森と交渉している野球部たちは今すぐそっちの練習を行きたそうにしている。

「とにかく……無理だ。俺達を犯罪者にするんじゃねぇ」

「分かった。予算を増やしてあげるから」

「それでその後は」

「行為によっては退学、休部」

「それは意味ねぇじゃねぇか」

 大淀は欠伸が出てしまう。かれこれ、この交渉は10分以上している。しかし平行線。いや、当たり前なんだけどね。

 と、長柄は南森の首元を掴み後ろへ追いやる。そして前へ出て野球部の元へ行った。

「本当に南森君に迷惑をかけてごめんなさいね」

「いや、こいつが変な事を言うのは今に始まったことじゃないんだからいいけどさ」

「そうね。私も普段から困っているわ」

 この野球部と南森の関係は同じクラスだ。

 普段から南森にノートを見せたりと色々と世話をしているため、よくくだらない依頼をされてしまう。

「私も……正直南森君のこの案に対しては『何言っているんだ。このボケナスは。アホじゃねぇか。○ねや』と思っているわ」

「えっと……それはいくら何でも言い過ぎじゃないですかね……?」

 その後ろで大淀はウンウンと頷く。

「だけど南森君にも何か考えがあるはず。いや、考えがなければ○すけど」

「……あの、今日はやたら不機嫌ですね? 長柄さん?」

 当たり前と言ったら当たり前だろう。本人に何も相談なしに野球部に誘拐をしてくれと頼んだのだから。

「だから私を誘拐するフリだけでもいいからして頂戴」

 長柄本人の願いにより、野球部は腕を組みう~んと唸る。

「まぁ、本人がいいなら。でもその後の処分は?」

「何もしなければ何もないわ。でも行為によっては南森君と一緒に島流し」

「あれ……僕も!?」

「当たり前でしょ。南森君は神戸空港上空から飛んでもらうわ」

 ニッコリと微笑む。その後ろにははっきりと一つの影が見えた。


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