これが本物のラノベ高校だ(6)
「お前もいずれあれぐらい威圧感をだせるようにならないと」
「いやいや、あれは天性のものでしょ。転生しない限り無理だよ。天性だけに」
閉めきったまどから寒い風が吹いてくる。
「……とにかく私は無理だよ。あんなの。っていうか性別が違うし」
「そうだな。お前は女子だから鞭をもって廊下を叩いてくれればいいよ」
「それもやらないからね!?」
「えぇ、お前ならやってくれると思っていたけどな」
「絶対にやらない。私はあなたにしたドロップキックとかしないし。そもそも私はそこまでSじゃないし」
「それは僕がMじゃないと言っているようなものだぞ」
「何自分でMであることを認めているのよ」
嵐のような執行部はそのまま廊下を進んでいく。そして下の階に消えていった。
「それにしても何なの? アイツはまるで悪者じゃん」
「当たり前だろ。執行部なんて昔から悪者として扱われているし」
「それって……私を悪者にしようとしていることじゃ……」
執行部が通り過ぎた後には再び人が廊下に群がる。また平和な祭りが開催される。
と、思ったら下から怒声のような声が響く。それは窓ガラスを揺らす。二人の心臓……いや、この廊下にいた人たちの心臓を銃で撃ったかのような衝撃が襲う。
「何かが下であったみたいだね」
その雷のような怒声は近くの階段を伝わって上まで届いている。
「とにかく行ってみるか」
と、南森は階段を下って行った。
そして三階。そこには沢山の人だまりが出来ている。
「一体何が起こったのですか?」
南森はその人だまりの一番外側にいる少女に話かけてみる。
「えっと。なんやら規約に触れる屋台を出していたみたいで」
当事者ではないその少女も震えていた。南森はその人ごみをかき分け中に入っていく。大淀もそのかき分けてできた隙間を利用して前に出る。
「ワレ、ふざけているのか!?」
そして先頭辺りでその事件の全貌が明らかになっていく。
まず、眼鏡の男が四つん這いになって蹲っていた。土下座をしているのではない。殴られたのか痛がっている。そして、廊下にはバラバラにちぎれた紙が落ちていた。今もなお雪のように舞っている紙もある。
「これは規約違反やぞ!?」
その眼鏡の少年を教室から怯えながら見守る人が数人。どうやら眼鏡の少年が部長で教室から見ている人は生徒らしい。
「こんな不健全なのを出しよって!!」
南森はパンフレットを見て、ここが何部なのかを確認する。
どうやらここは二次創作部らしい。そして話の流れからしてエロ同人誌をみんなに配布。それが執行部にばれてしまったということだろうか。
執行部は眼鏡の少年の頭を踏みつける。
「ほれ、頭が高いぞ!!」
不思議と、執行部の周辺には人ごみができているのにやけに静かだ。
「あれがお前の完成形」
南森は執行部に向かって指をさした。
「いやいや、無理だから」
何故なら、大淀自身もその執行部に対して足を震わしているからだ。
執行部は何度も、眼鏡少年を踏みつける。
「ほら、お前が隠しているもんをだしてみ?」
どうやら蹲っている体の下にまだ何かを隠しているらしい。
「やっぱり私には無理だ」
ボソッと大淀はつぶやく。
「早く出せば楽になるんやぞ!!」
何度も何度も踏みつける執行部。
「だってこんなの執行部じゃないもん」
そう。確かに執行部は校則には厳しくなければならない。だけどこれは何かが違う。違和感しかない。
大淀は一歩前に踏み出す。自分は今から何をしようとしているのか。本当はこんなことをしたくない。だけど救わなくては。目の前の少年を。だってこれは間違っていることなんだから。
だからこれを何とかしてもとめないとならない。一歩前に踏み出した。だけど……体は震え、肝心の声が出ない。
と、南森が代わりに一歩ほど前にでる。そして
「流石に暴力はダメだと思いますよ」
この緊迫した空気の中、そういう。
「あっ、ちなみに僕は中崎西高校の生徒会長です」
それを聞いた執行部は軽く舌うちを鳴らし、その場を去って行った。
(私は何もできなかった)
しばらくしてそこはまた元通りの騒がしい祭りへと戻る。
そしてそのまま、二人は夕方まで色々と周り観察する。
「そろそろ帰ろっか」
「そうだね」
既に時刻は18時を回っていた。谷町高校は中崎西高校みたいに絶対下校時間があるというわけではない。しかしどこの部活も自主的に解散し始めていたため閑散とした雰囲気になりはじめていた。
外も完全に祭りの後みたいになっており、ボランティアの人が床に落ちたゴミなどを拾っている。
その谷町高校を二人は後にして、また住宅街を歩く。
「それにしてもどうだった? 今日の谷町高校?」
「やっぱり私学だなと思ったよ」
「そうでしょ。あれが僕の目指す学校だからね」
(目指す学校か)
大淀もド肝を抜かすほどの規模の大きさだ。正直言って南森自身あそこまで祭りを盛り上げられるとは思っていない。
それに一つ疑問というもの。または生徒会で違いというものを感じた。
「でもやっぱり生徒会の執行部だけは違うと思う」
大淀にとってこれは絶対に否定したいことだ。
「あんたもあれでいいわけ? みんなで楽しくワイワイする学校を作るとしたら……あれはまた違うのではないかな」
大淀は自分でも驚いていた。ここまで自分の意見を言うなんて。それを聞いた南森はプッと笑い声を漏らす。
「私は何かおかしいこと言った?」
「いや、まさか大淀から正論が出るとは思っていなかっただけだよ」
脇にある線路から電車が通過する。
「お前は執行部と言ったらどんなのを想像する?」
「そんなの学校の規律を取り締まる」
「そうだよね。だからあれはちゃんと仕事をしていたと言えるのではないかな?」
「そうだけど…でも。あれは何か違う」
南森は立ち止まった。そして大淀の方に向き頭をポンッと叩く。
「その何かって説明できるの?」
「いや……」
「うん。説明は別にしなくていいや。多分大淀の思っていることはあっているから」
そして頭をぐしゃぐしゃと撫でまわす。
「やっぱりお前をここに連れて来て正解だったよ。今日で僕の目は正しかったと思う。お前は立派な執行部になるよ」
南森は頭を離しそのまままた歩き始めた。
大淀の身体は火照っていた。
(なんで……こんな体が熱いのよ)
そしてまるで魔法にかけられたかのように動けなくなっていた。
(可笑しい。これも多分あの変態のせいだ)
南森は振り向く。そして首を傾げた。
「あれ、どうしたの?」
「うるさい! 私の頭を勝手に触るな」
そしていつも通り彼に向かって一発蹴りをぶちかました。




