ラノベの出会いはいつも突然じゃないか! (2)
この学校は普通の公立校だ。部活だって県大会二回戦まで進めればいい方だ。彼らにとってみれば部活より安全に帰宅すること……また家での勉強時間の方が大切となる。
だから中崎西高校は日が沈む前の18時には生徒を全員帰らせる。それ以降学校にいることを禁止されている。残業のない優しい世界だ。36協定のない優しい世界。ホワイトカラーエグゼンプションが適用されない優しい世界。こう考えると学生っていいなとも思える。部活さえしていなければ休日出勤とかもないしな。
というわけでその校則に従い、南森達も下校することにする。といっても南森と長柄の家の場所は全くと言ってもいいほど違う場所にある。
そのため下校するときは二人別々だ。
南森は徒歩で最寄りの駅まで行き、その後は電車に乗らずそこから歩く。
バス停6個分は離れており歩くにしては少し遠い。しかし定期代を浮かせるために歩くことにした。
その帰路でも南森はどのようにラノベ高校を作ろうか考える。
(今の生徒会に足りないものは何だ? 多分お金だろうね)
お金があれば色々派手なイベントが出来るのであろう。しかしそれに頼ることは不可能だ。何故なら公立校だから。生徒会が動かせるお金は高校生のお小遣いくらいしかない。
(お金は無理だからそれ以外で……何よりも生徒会を変えるところからしないと)
そもそもどうして生徒会の権力が中崎西高校では小さいのか。まず用務員などが予算の全てを管理しているから。それもある。なんと行っても最大の特徴は風紀委員などの委員会が独立している。これによって風紀委員などの活動に生徒会が口を挟むことが出来ないのだ。
また、体育祭とか各イベントはイベント管理委員が作られ、そこで決定をされる。本当に生徒会というものは監視するだけなのだ。
(監視するだけじゃなくて……取り締まることもしなければ。例えば執行部のような特別な組織を作ったり)
とサイレンを鳴らしながらパトカーが道路を高速で走る。そうだ、あのような感じだと南森は思った。
(そのために執行部として必要な技術は……ドSで威圧度の高い人。まるで長柄のような)
今日、長柄は大人しいように思えたが普段はそんなものではない。殴ったり蹴ったりという暴力行為は少ないが嫌がらせレベルのことは普通にしてくる。
(アイツなら)
と、教室での長柄を思い出す。教室での長柄は周りの人間に慕われていて先生からも信用されている。とても嫌がらせをする人とは思えない。長柄は南森に対してだけ厳しいのだ。
(駄目だな。一般的なアイツは執行部のイメージがない)
ここで南森はある諺を思い出す。と言っても自分で作ったのだが。
『竹から美少女、空から美少女、転校生も美少女』
これはある時、南森が作った諺。意味としてはかぐや姫のように竹から美少女が現れる。またラノベのように空から美少女、転校生としてでも美少女がやってくるときがある。つまり運命の美少女と出会うのはある時突然という意味だ。
それを信じて南森は空を見る。青い空に伊丹空港から飛んだ飛行機が残した一本の雲。太陽は南森の目の中に突き刺さる。
流石に空から女の子はない。
視線を少し下に落とすと歩道橋があった。そこの階段に一人の少女が昇っている。制服からして同じ学校。
頑張ればスカートの中身が見える。だから身を小さくし、腰を曲げて下からのぞき込むような姿勢を作ってみた。
すると南森を応援するかのように強い風が吹く。そして少女のスカートがめくれる。
まだ幼い背丈に似合わず黒だ。これは運命の出会いと言ってもいいのだろうか?




