ラノベの出会いはいつも突然じゃないか! (14)
「とにかくネガティブキャンペーンはなしだ」
「心配しなくても大丈夫よ。この掲示板を見ている人はごくわずか。そこまで部活動の影響に与えられていないから。本当に部活に入りたいと思っている人は入部するし、これを見て入部するのをやめる人はすぐ辞めるタイプだわ」
中崎西の掲示板は基本、1レスに対して返信されるのが1日~4日かかる。つまり長柄が立てた(とされる)スレは異常な伸びの速さだったということだ。
「そうじゃない。ネガティブの法則でマイナスをプラスに変えるのにはもう一つマイナスが必要なの」
これは数学で見れば分かるだろう。-5×1は-5である。しかし-5×-1だと+5になる。つまりマイナスをプラスにするにはもう一つの-が必要だ。そして……
「そのもう一つの-というのは『犠牲』のこと。一般的にネガティブキャンペーンを成功させるには自分も何か『犠牲』を背負わないといけない」
例えば政権批判をする。すると、その人は全員から称賛されるというわけではない。当然政権賛成派からは批判の声が来る。また論破されボロが出てしまうことがある。大抵ネガティブキャンペーンをしている方が論破されやすいと言われている。
「下手すればお前にも危害が加わるぞ」
「そんなわけないでしょ。匿名掲示板だし」
「匿名だろうが、なんだろうが駄目だ。この生徒会関係で犠牲になる可能性が少しでもあるのなら絶対にやるな」
「一応言うけど……私は楽しんでやっていたのよ」
さっきの笑みを思い浮かべる。これを言われると確かにその通りなのかもしれない。南森は一瞬何も言えなくなる。
「それでも……もうやるな。「犠牲」だろうがそうでないだろうが。お前がそれによって傷つくのが嫌だから」
「過保護ね」
「過保護じゃねぇよ。普通の女の子に対する普通の配慮だろ」
「私はあなたの前では普通の女の子じゃないわよ?」
「いや、普通の女の子だ」
と窓から蜂が入って来る。ネズミぐらいの大きさがある。
この静かな図書室ではその蜂の羽ばたく音がはっきりと聞こえた。
中崎西高校のすぐ後ろには大きな山がそびえ立っている。だから夏になれば沢山の虫が校舎内に侵入する。クマバチのような蜂だって一週間に一回は授業中に窓から入って来る。そうなったら授業も一旦中止するほど大騒ぎになる。この学校の一種のイベントみたいになっている。
「ほら、普通の女の子だ」
その蜂を見て、長柄は立ち上がり足をブルブル震わしていた。
そして蜂が長柄の方に飛ぶと、彼女は床にしりもちをついた。
「……南森君……なんとかあの蜂をなんとかできる?」
「あいよ」
取りあえず窓を全開にして開ける。こうすれば蜂は外に逃げるだろう。そして次に図書室の電気を消す。南森は生物に関する知識は乏しいものの、虫は明るいところに向かおうとすることぐらいは知っている。
ま、朝だから恐らく外の明るさも教室の明るさも変わらないけど。
どうやら近くに巣があるらしくもう一匹蜂が入ってきた。
そして長柄は全身わなわなさせている。今にも泡を吹きそうだ。
「……とにかくこの教室からでよっか」




