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普通の公立高校をラノベのような高校に変えてみる  作者: 北神 柳椰
ラノベの出会いはいつも突然じゃないか!
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ラノベの出会いはいつも突然じゃないか! (12)

「思ったより早かったわね」

 結局あの後、二人はパソコン室に戻った。

 長柄は一番前の席に座ってラノベを読んでいる。それはとあるネット小説発のラノベだ。ホント、気づいた時にはとある小説サイトからかなりの量の本を出版して驚いた。

「あぁ、ちょっとした調査をしただけだからな」

「その顔を見る限り対した成果を得ることはできなかったようね」

「お前の言う通りだ。中津先生にあってきたけど予算の増額は無理と」

「ま、当たり前ね。これでもこの学校は色々と投資させてもらっているほうよ」

 中崎西高校は去年耐震工事をした。これはエアコンをつけるための工事らしい。中崎西高校にはまだエアコンがついていない。しかし中崎市は数年後にはつけると明言した。

「どう? 大淀さん。こんな風に意味のないことをするのが私たちの仕事」

「え、いや……」

 何か考えに老けたような表情をする。

「でもやっぱり部活が活性化するのはいいことだし……」

「そうね。だけど私たちの力ではそんな意味はないの。ポスターで犯罪防止を呼びかける程度だわ」

「それでも少しでも効果があればやっぱり何だってしたいし」

 長柄は相好を崩した。

「ま、確かにそうかもしれないね。だから必死になって考えないと」

「僕が思うことは、一つの部活に新入部員が殺到したら流石に慌てるのではないかということ」

 と南森は自分の考えを口に出した。するとなるほどと納得したように長柄は頷く。

「そうね。元々数人以上は入部すると腹をくくっていたのに他の部活に殺到したら焦るでしょうね」

「だから一つの部活だけ大量に新入部員を呼び込めばいいのではないかと思うんだ」

 経営学的に一番してはいけないタブーは安易に値段を下げること。出来ることなら利益は多く確保するのが基本だからだ。しかし寡占状態に置いて一つの企業が大幅に値段を下げたらどうなるのだろうか。客はその企業を頻繁に利用するだろう。すると他の企業も値段を下げないといけない。このように相乗効果が生まれる。南森はこれを狙いたいと考えたのだ。

「つまり他の全ての部活に特別なことをするのではなく一つの部活に対してだけ重点的にする。これによって予算もかからないし……」

「それでその一つの部活に何をするの?」

 南森は過去に呼んだラノベや漫画を思い起こす。あの人たちは他にどのような方法で部活を勧誘していたのか。お金以外で入りたいと思うのは? 内申点? 確かにそうだけどこれだと南森達には無理だろう。

 もう一度南森は想像する。桜舞う四月。校門を抜けると風が吹き水玉のパンツが……

「そうだ! お色気を!?」

 これを言った瞬間、南森は無言で大淀に脛を蹴られる。

「いい? 南森君。それは逆に部活を鎮静化することになるの」

 長柄も困りはてたように眉を降ろす。

「えっ、でもラノベとかでは」

「例えばタケノコとキノコのお菓子があったとする」

「……それってあれじゃないよね? うん。あれは関係ない」

「タケノコ厨とキノコ厨は仲が悪いとする。そんな中タケノコとキノコのコラボ商品が決まった。さてどうなる?」

「それは……」

「両方好きな人なら問題ないけどそうじゃない人にとってみれば多分買わない。それどころか従来の商品にも影響が出る。ま、これは極端に二つの勢力が争っている場合だけど」

 実際、(多分)その二つの勢力は仲が極端に悪いというわけではない。つまりコラボしても売り上げが落ちるというのは考えられるかどうか分からない。

「この場合、女子のお色気で入部した男子はいいけど女子は一体どうなる? そんな性欲にあふれた場所には入りにくいよね? それどころかそれまで部活をしていた女子まで部活をやめるかもしれない」

「なるほど。色々と難しいものだな」

「そうね。だけど南森君はいい線をいっている。一つの部活に重点的に置くというのは。だけど逆を考えるの。一つの部活をあげるのではなく、それ以外の部活を下げることを」

「というと」

「ネガティブキャンペーンね」

 やっぱりかと南森は思わず声が漏れてしまいそうになる。

 ネガティブキャンペーンとは、その名前の通り。主に敵となる政党の悪口を言って評判を下げることだ。

「他にも色々と考えられそうね」

 頬を釣り上げた笑みを長柄は見せる。これを見た南森は背筋から寒い風が裾の中に入っていく。

「ちょ、ちょっとトイレに行ってくる」

 そして、スッと立ち上がりそのままパソコン室から出ていく。

 その後ろ姿をジッと長柄は見つめていた。

(南森君……)

 長柄は知っている。南森はトイレに行っていないことを。そして時計を見る。時刻は午後17時50分。運動部は絶対下校時刻より10分早くに解散するという暗黙の了解がある。つまりこの時刻になると校門から次々へと人が出ていく。

 南森は四階の廊下の窓からその様子を見ていた。

 ある一人の女子生徒が気になるのだ。

(似ているよな。大淀に)

 大淀ではない。だけど大淀のその女子生徒を。

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