ラノベの出会いはいつも突然じゃないか! (11)
「で、今度はどこに誘拐する気?」
体育館を後にした南森は、再び校舎の中に戻る。
大淀も嫌々ながらもついて来ている。
「誘拐とか人聞きの悪い」
「確かにそうかもしれない。でもあなただから……」
「僕は別に誘拐したりしないよ。どちらかと言えば監禁されたいほうだし」
なんていう事を言うから南森の信用はなくなる。残念なことにそのことに関してまだ南森は気づいていない。
「とにかく僕はお前に危害を加えたりしないから安心しろ。もし加えたら僕は六甲山に埋められる」
「個人的にはポートアイランドに沈められて欲しいけどね」
それからしばらく歩き、廊下の端まで来る。
「……ここは? 地理準備室?」
地理準備室はその名前の通り。地理教室の準備教室。教室ではなく『準備』教室なので面積はかなり狭い。横に3人並ぶのが精いっぱいだろう。
「なんでこんな場所に?」
「先に言っておくけどいかがわしいことをするんじゃないからな。流石にポートタワーや通天閣のてっぺんから落とされたくないし」
「長柄先輩ってそんなに恐ろしいの……」
コンコンと南森はノックをする。しかし返事はない。代わりにポチッと灯りがついた。
それを確認した南森は扉を勢いよくあけ、中に潜入した。
「よぉ、お前さんか」
そこには眼鏡をかけ、だらしなく髭を伸ばした白髪の男性がいた。
「中津先生。やっぱりここにいたのですか。よかったです。職員室に行かなくて」
「あぁ。無駄足になるところだったな」
大淀は少し遠慮した態度で教室内にはいる。
「その後ろにいるお嬢ちゃんは?」
「あぁ、大淀です」
「そんなことは知っている。俺の授業で何回か一緒になっているはずだし。そんなことじゃなくて」
「新しい生徒会メンバーで僕の……」
チラリと大淀の方をみる。彼女は拳を握りしめていた。それが一体どこに飛ぶのか。当然南森は分かっていた。
「えっと新メンバーです」
「そうなのか。ついに二人きりの生徒会を卒業したか」
準備室にある机の上にはがぶ○みミルクコーヒーが置かれている。外見は意識高そうだが実際はそんなことない。中津は結構子供の部分がある。
「それで少し中津先生に確認したいことがあります」
「なんだ?」
「予算についてです。部活を活性化するために例えば……新入部生一人につき数万の部費アップとかしたいのですが?」
「無理だな」
「そんな即答!? 無理って」
中津ははぁと長い溜息を吐く。
「高校生にもなれば高校の予算はどこから来ているか分かるだろ」
「そりゃ、色々と制限がかけられたりしているのは知っているけど。だけどこの地区は高校配分については自由裁量性と聞いていますからそれぐらいは」
自由裁量性とは予め高校の予算が配られることである。つまり2000万円渡されたらそのお金は領収書をつける条件でどんなことに使ってもいい。勿論常識の範囲だけど。
「そうだ。だけどそんなところに使う金がないって言っている」
「それなら学校の金がなければ僕のお金で」
「アホか。この学校はバイト禁止だ。だからそんな金用意できるのか? それともお前のために汗水流した親からもらった金を学校のために使うのか」
それを言われると南森は黙り込むしかない。
「それなら先生のお金で」
「それはもっとアホ。なんで俺の金をガキに使わないと駄目なんだよ。がぶ○みシリーズが買えなくなるだろ」
「学校の予算をFXで増やすというのは」
「ロスカットしたらどうするんだよ。ただでさえ今日、フランが大暴騰したりと難しい状態になっているのに」
中津は机にあったがぶ○みを口につけ、ゴクゴクと半分近くまで飲み干す。
「とにかく予算については諦めるんだな」
そして飲み終わったら、シッシッと南森達は厄介払いされた。




