ラノベの出会いはいつも突然じゃないか! (10)
「バドミントン部部長?」
「あぁ、そう。この人はバドミントン部部長の淀屋参月だ」
「もしかして三嶺の隣にいるのって新しい生徒会候補なの?」
淀屋は南森の下の名前で呼んだ。
「あぁ……この子は僕の補佐の大淀で」
そういった瞬間ズンッと南森の背中を叩いた。
「誰が補佐よ」
そして鷹のような目つきで南森を睨みつける。
「可愛らしい新人さんだね」
その光景を微笑ましそうに淀屋は見る。
「それで、一体今日は何の用事なの?」
「ちょっとね。聞きたいことがあって」
「聞きたいこと?」
「あぁ。今年の新入生が一体何人入ったかっということだけど」
「0だね。まだ仮入部期間だし。因みに仮入部なら10人くらい」
淀屋は檀上の方を指差す。そこには10人くらいが素振りをしており、それを先輩らしき人がアドバイスをしている。
「なるほどな。もしこのまま誰も入部しなかったらとかの不安はある?」
「いや、流石にないかな。確かに確約している人は誰もいないけど……例年10人以上は入部希望者がいるし」
「意外だな。バドミントンってテニスと違って中学から継続する人は少ないだろ。ほとんどが新規だろ?」
「うん。中学はバドミントン部が少ないからね。こんなに面白いスポーツなのに……なんだが私もバドミントンをしたくなってきたね。三嶺。ちょっとコートに入るって」
「またかよ。俺はバドミントン部じゃないんだぞ」
「別に他部活じゃなくても問題ないの。そうだ、大淀さんもバドミントンしようよ」
「えっ、私!?」
突然指名されて驚く大淀。
「うん。少しだけプレーしようよ」
「私は……遠慮しておきます」
「なんでさ!? 絶対に面白いのに」
壁に寄り添っているラケットを手に持ちそれを軽く振る。
「一緒にやろうよ」
「いや……私は」
「なんで!?」
「淀屋さん。流石に無理矢理やらせるのはダメですよ。俺が相手しますから」
「バドミントンの面白さを伝えたっかのに……」
頬を膨らましながら不満げにコートの方へ向かう。その後ろ姿を大淀はじっと見つめていた。
(もしこれがラノベの世界なら恋に落ちていたのかもしれない。だけど……)
南森と淀屋の二人はコートの中で打ち合いを始める。高く遠くへ飛ぶクリアーと呼ばれる打球をそれぞれ打っている。
(あいつが強制的に誘わなければこんなことにならなかった気がする)
大淀は南森の好感度が上がるどころか、ますます敵対心を強めてしまった。
(なんか、大淀に睨まれている気がする)
南森は現在大淀に背を向けるようにコートの中でバドミントンをしている。
「それで、淀屋さんはもっと部員が欲しいと考えている?」
シャトルを打ちながら質問する。
「うん。そうだね。部員は出来るのならもっと欲しいかな? でもそこまで欲しくないというのもあるの」
「それは何故?」
「だって部員が増えて予算が集まったとしてもこの学校はプール制だし」
プール制とは中央勢力がそれぞれの子グループから一旦お金を採取。そこから一定割合で配分しなおすことだ。この学校では合宿や大会費、備品などの必要経費から予算が決定される。
部活に入っている人は全員部費という形でそれぞれの部活で徴収される。
「だから部員が増えても予算が増えるだけだし。それにコートを自由に使える時間もなくなる」
現在バドミントン部は体育館で練習をしている。しかしいつもしているわけではない。バスケ部やバレー部とそれぞれ話し合って交互に使用しているのだ。だから体育館の練習はかなり貴重となる。
「どうしたら部員を増やす気になる?」
「やっぱり金かな?」
南森は空振りをしてしまいシャトルを床に落とす。
「ニヒヒ。私の勝ち」
「っていうか勝負だったのかよ」
南森にとってはとても貴重なことを聞けた気がする。やはりお金は大切だということを。




