ヒーローへの憧れ
学校の成績はいつも半分より上、三分の一より下という特徴のないものだった。成績表の先生からのコメントはいつも「優しい」「協調性がある」と書かれていた。それは決して褒め言葉ではない。反抗も自主性も見られなかった私に対する先生なりの気遣いに違いなかった。
履歴書に書かれた人生が私のすべてであれば、なるほど順風満帆な人生である。地方の国立大学に進学し、地元に帰って就職。年収も自分の世代と比較すれば平均的なものだ。このままいけば結婚し子供が生まれ、定年まで働き老後を迎えることになるだろう。
だが私はそんな自分に不満があった。いや、正しく言えば平凡な私は非凡さというもの、あるいは非日常というものに強い憧れがあった。
例えば白馬の王子様がいる。女性は自分を非日常へ連れ去る王子の姫になりたいと憧れるが、私は一人の人間を夢の世界に連れ去ることができる王子にそのものに憧れた。他にも魔王を倒す勇者、悪の組織に戦いを挑むヒーローなどなど子どものような願望があった。
だからそのニュースを見たとき、私は衝撃が走った。私がやるべきことは一つだった。
『僕にできることはこれくらいですが、みんなで手を携えて頑張りましょう!
伊達直人』
手紙の文言を何度もチェックし後部座席にランドセルを詰むと、深夜の国道を北に向かって車を走らせた。