初恋はあなたです
「私は心に決めた人がいるのだ。すまない」
初夜でレックータ公爵家当主のアンドロにそう言われて、内心面倒臭いと思った。
なら貫けばいい。何故それをしない。
公爵家当主にもなりたい。心に決めた人とも結ばれたい。
なら貫けとリーリアは思う。
これは政略結婚であり、契約結婚ではない。
契約結婚でそれでもいいと言う相手を探せよと思う。
スカスカの下着が馬鹿らしくなってくる。
リーリアも初恋の人がいた。だがそれだけである。
「ちなみに誰ですか?」
「それが捜しているのだが、なかなか見つからなくてな」
「付き合っている訳ではないんですか?」
「それは違う! 彼女とは子供のときに出会ってな」
「どうして私と婚約してそのまま結婚したんですか?」
「それはすまないと思っている。父に逆らえなくてな」
知るか、とリーリアは思う。
「私とは白い結婚ということですね?」
「君にはすまないと思っているが、そうしてもらいたい」
「分かりました」
アンドロはどこかホッとしたようだった。
部屋からアンドロは出ていき、リーリアは涙を流した。
政略結婚だったが、幸せになれると思っていた。
アンドロに似た子供を生みたかった。
そんな未来はやってこない。
応接室で義理の父親とリーリアは紅茶を飲む。
「という訳で、三年経っても子供ができないのは白い結婚なんですお義父様」
「何故もっと早く言わない?」
「子供について言われなかったので」
前公爵家当主ドリューは深い溜息をついた。
「アンドロは何を考えているのだ」
頭を掻き毟る。
「今も捜してます」
「あいつは駄目だ。すまなかった」
「責任取って下さい」
「ああ。責任を取って次の結婚相手を見つけよう」
「違いますよ。初恋はあなたです」
「は?」
目を丸くする姿に、リーリアは思わずクスリと笑う。
「奥様が出ていかれて十年以上経ちますね」
ゴホンと咳き込むドリューは頷く。
「そ、そうだ。仕事で家を空けていたからな」
「家のことは私に任せて下さいな。子供たちと一緒に家を守ります」
「子供たちとは?」
「もちろんお義父様との子供ですわ」
「……」
「ちゃんと責任取って下さいね。ドリュー様」
ドリューは天を仰ぐのだった。




