第23話:ミジンコみたいな体力でした……
皆の健康状態の確認を終えた頃辺りで、もぞもぞと荷物の山が動き出した。
「んんっ~あれー? ろうして真っ暗なの?」
「檸檬なのか? あの山……」
「あー、佐伯君! 今すぐ出て行って! 早く!!」
棚橋さんに圧をかけられ押される、荷物もまとめて無いしいきなり出れる訳無い。
「わ、ちょ!? 棚橋さん押さないで!」
「んー……とりゃ!」
一気に荷物の山が崩れる、そして現れる半裸の檸檬。
「わぁぁぁぁぁ!! 佐伯君向こう向いて!」
――パアンッ!
「ひぎゅう!?」
破裂音と衝撃で視界がグルんと回る、あの天井の木目、凄い人の顔に見えるな……。
「ひゃう!? 何で私、下着なの!?」
「アホ檸檬! アンタが風呂から帰って来てから、そのまま爆睡してたからでしょ!!」
ぎゃあぎゃあと言い合う檸檬達、どうでも良いけど早くしてくれないかな……。
「ほら、早く服着ちゃいなさい! 佐伯君が居るんだから!!」
「へっ? 何で翔がここに!?」
「だからほら! 早く服着る!!」
「ひゃあぁぁぁあ!? 私の服どこぉ!?」
とりあえず、顔にタオル掛けておこう……。
顔にタオルをかけて両手を握り合う、これで何も疑われるような事無いだろう。
「あった! よし着た!! って翔が死んでる!?」
「あ、あれ? つい思い切り叩いちゃたけど……まさか打ち所悪かった?」
かなり打ち所は良かったぞ、もう脳ミソが震えたもん。
「いや、生きてるよ。それよりちゃんと着替えは終わったのか?」
「終わったよー」
そう言いつつ顔の上のタオルを取る檸檬。
「わかった、じゃあとりあえず、仕事しちゃうか……」
それからというものの健康状態を聞いたり、身体の調子で気になってる部分が無いか書き込んでいく。
「オッケー、これで大丈夫かな」
「了解! じゃあ私走って来るね!」
「いやいや、もう夜だし。危ないぞ?」
「大丈夫大丈夫! ほんの少しだし!」
「あっちょ! 檸檬!!」
部屋を出てしまった檸檬、どうしようこれから。
「あー佐伯君、後は私達でやっとくから、檸檬に付きあってあげて」
「良いのか?」
「うん、私達が行くより全然防犯になるだろうし。それとも佐伯君が行った方が危ないかな?」
ニヤニヤと笑う棚橋さん達、流石に狼じゃないわい。
「それは無いから……ともかく行ってくるよ」
立ち上がり、荷物を渡すそれから慌ててろうかに出る。
「はーい、行ってらっしゃーい」
「頑張ってね~」
「骨は拾ってあげるからね~」
皆に謎の応援され俺は檸檬を追いかけた。
◇◆◇◆
走り出して30分、これでも毎日ランニングを欠かして無いのに、合宿所の外に出てから檸檬の背中をずっと見ている。
「はぁ……ひぃ……れもぉーん……」
切れ切れのの息で呼ぶ、もうそろそろ限界だ……棚橋さん達、頑張れとはこういう事だったのか……これはかなりしんどいぞ。
「あれ? 翔は何でここに?」
「はぁ……はぁ……そりゃ……檸檬をがこんな夜に走るって言うから……」
息を整えつつ、理由を口に出す……体力お化けめ……内臓がひっくり返るかと思った。
「たはは~……でも、まだ9時半だよ?」
「あのなぁ……明日は試合が無いとはいえ、朝早くから開会式なんだから……」
「そうなんだけどね~さっき寝ちゃったから、多分眠れないんだ」
「だからって、こんな夜道を走ったら危ないんだけど……」
「えーでも、誰も居ないよ?」
それに補導される時間……だけど、檸檬の言う通り周囲には誰も居ない。
「いや、誰も居ないなら余計に女の子が独り歩きしちゃ駄目だろ……」
額から汗が流れ落ちつつ言う、心臓も未だに早く動いている。
「女の子……そ、そうだね! 私も可憐な乙女でしたわ!」
顔を赤くした檸檬が言う、それに俺は乙女とか言ってないぞ。
「いや、乙女とは言って無いし……まぁ良いかそろそろ戻ろう」
「はーい、じゃあ走ろうか!」
「いや、流石に死ぬ……」
こちとら、まだ足も笑ってるんだぞ!
「仕方ないなぁ……マネージャーやってるのにその体力の無さは駄目だぞー」
「いや、体力はあると思ったんだけど……」
「確かに?……それに、私の後走ってたって事はそれなりに体力あるのかな?」
「というより、檸檬のスピードが速すぎるんだよ……あー足が笑ってる……」
明らかにジョギングの俺じゃ追い付けないスピードだ。
「えー? 仕方ないなぁ……」
そう言いながら手を出してくる檸檬。
「いや、流石に少し待てば歩けるし……」
「でも、時間は良いの?」
「あ……」
固まる俺、今の時間が9時半だとすると後30分でアウトだ。そして今走って来たのが30分……。
「間に合わないね……」
「すまん……膝が……」
「ありゃりゃ~ほいっ」
「すまん……」
差し出された檸檬の手を取り立ち上がり、震える膝に気合を入れて歩き出す。
「あはは、私も時間に気をつけとけば良かったね」
「というか、そんなに走って大丈夫なのか?」
「うん、だいじょーぶ!」
力こぶを作る檸檬、そこは腕なのだが……まぁいいか。
「何にしても、先に先生へ連絡しないとな……」
「あーそれなら私がするよ。翔は私を追って来てくれたんだし、事情の説明は私がするよ。翔はそれでも飲んで体力回復してて」
途中のベンチに降ろされ、隣の自販機で買ったスポドリを手渡される。
「あぁ、すまない……」
檸檬が少し離れた所で飲み始める、何か先生と話しているが少し遠くて聞こえない。
「まぁいいか……それにしても、星が綺麗だな……」
見上げると満天の星空である、地元じゃ明るすぎるからこの風景は凄く貴重だ。
「ちょ!? 先生帰りますから!! それじゃあ!!」
星空を堪能していると檸檬の大きな声が聞こえた、どうやら何か言われたのかもしれない。
「どうした檸檬?」
「イヤ、ナンデモナイデス……」
頬を赤くした檸檬を見ると、恐らく先生にからかわれたのだろうなと予想して、残りを一気飲みをした。
作者です。
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