遠征初日終了
「はぁぁぁぁ……疲れたぁ……」
簡単な練習と複数の学校との練習試合を終えて宿に戻って来たのだがとても疲れた……。
「いやー翔君たいへんだったねぇ~」
「あぁ、部長さん……練習お疲れ様です」
ロビーで伸びている俺にスポーツドリンクが差し出される。
「はい、先輩のおごりだ」
「ありがとうございます」
蓋を開けて口を付ける、疲れた体に甘酸っぱさが染み渡る。
「しかし、凄い人気だったね」
「すみません、お陰で全然仕事が出来なかったですよ……はぁ……」
練習先の会場は女子校だった、そしてひたすらに他の部活の子や、夏期講習で来ている生徒さん達に声をかけられ、色んな人に捕まってしまっていた。
「はははー私は十分楽しんだよ、ウチの部員の士気も上がってたし」
「え? どういうことですか?」
「おっと……そうだとりあえず、部員の皆のケアお願いね。やり方がわからなかったら、香澄先生に聞いてくれ」
立ち上がり手をひらひらとしながら戻って行った。
「ケアって、俺がやる事なのかな?……とりあえず先生の所に向かうか」
ロビーから一番近い部屋、つまり香澄先生の部屋の前に立ちノックをする。
「だれだーい?」
間延びした先生の声が聞こえる。
「佐伯です、部長さんから皆のケアを頼まれたんですが、何すればいいかわからないので……」
「おー、じゃあ入れ入れ~」
「失礼します……って凄い荷物ですね……」
部屋に入ると、いくつものノートパソコンが置いてあり、絶賛稼働中だ。
「ありがとね~。今、手が離せなくてさ」
画面に迎いながらキーボードを叩く、どうやら論文か何か書いているようだ。
「えっと、それで俺は何をすればいいんですか?」
「そうだねぇ、そこに機材というか必要なものを入れた段ボールがあるんだけど。基本的には体調に変化が無いとか、どこか痛めて無いか、みたいな簡単な問診と。ストレッチなんかの手伝いだね……」
指差された段ボールを見るとノートからシップ、サポーターまで大量の品が入っている。
「あれ? でもこれいつも使ってるのじゃないですよね?」
「うん、私の研究室から懇意にしてる製薬会社に直接委託して作ってもらったやつで特注品みたいなもの。大丈夫ドーピングになるような物とかじゃないから」
「はぁ……そうなんですか……だから名前とか入ってるんですね」
「うん、だからそれを皆に渡すついでに様子を見て欲しいんだ、出来れば話なんかもして無理して無いか見ておいて欲しい」
「わかりました」
「あぁ、台車もあるからつかって良いよ、腰を痛めない様にね」
「はい、ありがとうございます」
そうして台車に荷物を積んで出発するのだった。
◇◆◇◆
「ありがとね~佐伯君」
「あー肩が軽い~」
「うんうん、足も楽になったぁ~」
「力になれてよかったです、何かあったら早めに言って下さい」
「「「はーい」」」
2年生の部屋を出る、部長さんに言われたのは各部屋を回り部員のマッサージやストレッチを手伝い、怪我や痛めた部分が無いかのチェックを行っていくというものだった。
「とはいっても、素人目だからちゃんと質問に答えてもらってるだけなんだけどね……」
ノートに健康状態を書いて、後で先生の所に持っていくのだ。
「それにしても、俺が男子なのに皆平然としてたな……」
お風呂上がりだからなのか、各部屋シャンプーやらボディケア用品やらのいい香りで心臓がバックバクなのに……。
「でも、だからってあんまり警戒されないのはどうなんだ?」
いや、下心がある訳じゃないから良いんだけど……まさか見透かされてる?
「深く考えたら負けだ……とりあえずやる事やっちゃおう、それで次は1年生か……」
檸檬達を除き試合に出ない人が殆どなので練習試合にも力を入れてたみたいだし、それによーく見といてと2年生の先輩にも言われたからな。
――コンコン。
「はーい」
「開けて大丈夫ですか?」
「えっえっ、佐伯君!? ちょちょちょっと待ってて!!」
中からドタバタと音が聞こえる、この部屋の人たち大丈夫か?
「ほら、檸檬起きるの! あぁ、服掴まないで!?」
「ちょ、力強い! ほら早く起きて!」
どうやらこちらの部屋には檸檬が居るようで……なんか起きてといわれていたけど……。
「あー都合が悪いならもう一つの部屋へ先に行こうか?」
今だにドタバタしているので、もう一つの大部屋に行こうか聞く。
「だ、だいじょうぶ~」
「ささっ入って入って」
扉を開けられ中に引っ張り込まれる、ぱっと見綺麗だけど部屋の隅に不自然な感じで荷物が積まれていた。
「やっぱり、後回しにしようか?」
「あー大丈夫大丈夫」
「うんうん大丈夫! で、佐伯君はどうして来たの? 夜這い?」
一年女子の棚橋さんがニヤニヤ顔で聞いてくる。
「違う違う、部長さんから皆のケアと健康状態の確認を頼まれたんだ、はいこれ」
棚橋さんの名前が書かれた袋を取りだす、それを手渡しながら健康状態を聞いて行くのだった。
作者です。
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