第17話:蕾と写真と……
すみません、昨日すっかり忘れてました……。
◇蕾side◇
夏休みに入り1週間、今私はとてつもない危機に面していた。
「こまったなぁ~全然真っ白だよぉ~」
それは毎年恒例の悩みでもあった……。
――――♪♫♬♩♬~
「おー、真白から連絡だぁ~もしも~し」
『あ、蕾ちゃん? 最近会えてないけど元気にしてる?』
「うん~おねぇーちゃんのお仕事を手伝ってて~昨日帰って来たのぉ~」
『そうなんだ、相変わらず大変そうだね』
「まぁね~ 今回は~お給料も奮発してくれるから~頑張って来たよ~」
デスマーチの様な仕事場を思い出しつつ答える、姉の手伝いとは言え会議室に3日閉じ込められてたのだ。
『そっか、夏休み後半は旅行もあるからね。それで本題なんだけど……進捗どう?』
ましろが緊張した声色で聞いてくる。
「あはは~けっこうやばいねぇ~」
『そうなの? 前に言ってたアイデアは?』
「あーあれねぇ~微妙に膨らまなかったんだぁ~」
『ありゃりゃ……じゃあ今は書き直ししてるんだ』
「そ~なんだよ~でもいいネタが出て来なくてねぇ~」
『うーん……そっかぁ……うーーん……』
「ど~したのぉ? 体調でもわるいのぉ~?」
『いや、そうじゃないんだけどね……』
電話口でましろがうんうん唸っている。
『背に腹は代えられぬ……蕾ちゃん!』
「ん~? どうしたのぉ~?」
『私ね。この前、翔君のお母さんがデザイナーやってる、服のモデルに行って来たんだ』
「うん、知ってるよ~」
『そこでね、私達がやってるゲームとコラボするらしいのよ』
「へぇ~、でもそれって言ってよかったの?」
『あぁ、うん。 明日には発表されるから大丈夫だって』
「そっか~ それでその衣裳のビジュアルがあるとかぁ~?」
『うーん……それもあるんだけど、ちょっと違うかなぁ……あはは……』
「???」
『取り敢えず写真送るね』
そう言って真白から写真が送られて来た。
「こ、これはぁ~!」
そこにはゲームの中から出て来たとしか思えない程のクオリティのコスプレイヤーさんが居た。
『そう……翔君が向こうのメイクさん達にやってもらったの」
「え~これは~翔なのぉ~?」
よく見ると面影があるというか……肩とかもいつもの高さじゃ無いのでわからなかった。
『そうだよ。そこで働いてるメイクさんが凄い人でね、別人か!? って程に出来るんだ~』
「ほうほ~ぅ……うむぅ……もうちょっと写真無いのぉ~?」
『それなら……恥ずかしいけど、これなんてどうかな?』
送られてきたのはコスプレをした翔とましろと檸檬ちゃんが映っていた。
「おーこれは~いい資料だねぇ~」
『う、うん……構図とかなら使えるかなぁって……』
「これはいいねぇ~、でも何でウェディングドレスなのぉ~?」
『それはノリというか……乗せられたというか……』
「ほほぅ~ そのシチュも詳しくおしえて~」
そうして私は真白からアレコレ聞き出してる内に創作意欲が湧きだし夏のお祭への作品を取りかかるのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
◇翔side◇
モデルのアルバイトから数日後、部活のマネージャーの手伝いを終え帰る途中前方にフラフラと歩く影が見えた。
「あれは……蕾?」
あの身長とツインテールは蕾だ、まだ暑いとはいえ何をしてるんだろう?
「とはいえ放っておくのは危ないし声掛けるか、近くなら案内ぐらいは出来るだろ」
フラフラ歩く蕾に近づき声を掛ける。
「おーい蕾」
声を掛けるとこちらを振り返り喜色を浮かべる……いや、顔色悪いな。
「お~しょー、こんにちは~」
「こんちは……って夕方だし、こんばんはが正しそうな時間だけどな」
「あはは~そうだねぇ……」
「それで、蕾はどうしてここに居るんだ? 顔色悪そうだけど?」
「あはは~しょーのお母さんに話があってねぇ~、顔色悪いのは~締め切りに追われてたからぁ~」
ふらふらする蕾を捕まえて支えておく、危なっかしいから心配になる。
「締め切り?」
「そうだよ~まぁおねーちゃんとの約束でねぇ~、コ〇ケの1週間前には入稿できる様にしなきゃ行かせてくれないからぁ~」
ん? 今蕾の口からコミケとか入稿とか聞こえたんだけど……まさかな……。
「悪い、聞き間違いかもしれないけどコミケとか入稿とか言った?」
そう聞くと目をぱちくりさせた蕾がにへらと笑う。
「そ~だよぉ~」
「つまり蕾は毎年コミケに出してるのか……」
「えへへ~そうだよ~とは言ってもぉ~、おねーちゃんが手続きとかやってくれてるんだけどねぇ~」
「そうか、それでウチの母さんに何の用が?」
「それはねぇ~これだよぉ~」
ゴソゴソとショルダーポーチを漁ってスマホを取り出して画面を見せて来た。
「それは……マジか……」
そこには先日、モデル撮影の際に撮った真白と俺が写っていた。
「いやぁ~これがしょーだと、初めて聞いた時は驚いたよ~」
「うっ……」
「それでぇ~ましろが~この衣装の事も教えてくれたし~」
「つまり衣装を借り受けたいという事か……」
「せいか~い!」
「わかった、なら一緒にウチまで行くか」
「頼んだ~」
蕾がそのまま手にぶら下がって来る。
「ちょ!? 歩きづらいんだけど!?」
「いやぁ~中々道がわからなくて疲れたから~だめぇ?」
「前に来てなかったか? まぁいいけど」
「その時は気付いたら、しょーの家だったから~」
「そっか……じゃあこの際に覚えてくれ」
「りょうか~い」
そうして帰る途中に拾った蕾を伴い家に帰るのだった。
作者です。
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