第11話:テニス部のお手伝い①
その後、檸檬達は練習へ行った後、香澄先生にボランティアについて聞いていた。
「あは~ごめんごめん。キミが部活の手伝いに来てくれる佐伯君かぁ~、最近校内で不審者が出たって連絡が来ててね」
「いやいや、変質者がこんな堂々としてる訳ないですよ……」
「確かに、そうだね!」
能天気に答える香澄先生、本当にこの人が顧問なのか。
「でも大学の教授で高校部活の顧問やってるなんて珍しいですね」
「そうだねぇ~珍しいと言われるよ。まぁ~丁度お世話になってた先生が定年退職しちゃってね~、恩師の代わりに暇だったからなったんだよ~」
割とまともな理由だったんだな……。
「そうだったんですね、それでなんで俺が?」
「いやーイケメンだって聞いてたからさ、マネに居たら部員達のやる気上がるかな~って思ってね」
思ったよりも理由が軽いな……。
「旅費まで出すのにそんな理由で良いんですか……」
「まぁ、これも実験だよ。君が居るだけでメンバーの実力が上がるとか、大会で良い成績が出るかとかね。もしこれが功を奏したら私の研究にも役立つかな~って」
「何の研究してるんですか……」
「今は思春期の高校生の心理とスポーツについてで、実験の一つとして『イケメンにマネージャーしてもらえば部活への身の入り方が変わるのか』って奴だね」
「えぇ……なにそれ……」
ちょっと引くわ……。
「出来れば大会までちょこちょこ顔出してもらいたいけど……そこまでは強制できないからねぇ」
「まぁ、暇な時なら手伝いに来て良いですよ」
そう言うと先生の口がニヤリとする。
「そうか! そうか! ならば予定を出すから参加できる日は来てくれるとありがたいよ!」
そう言って先生はスマホを出す。
「連絡先の交換といこうじゃないか!」
「突然元気になったな!?」
先生は喜びながら連絡先を交換すると一通りの説明をしてくれた。
「どうするかい? 今日は手伝いをするかい?」
ニヤニヤしながら見てくる先生。
「あー、じゃあ少しだけ手伝わせていただきます」
「じゃあ、念の為ジャージに着替えて来てきてくれぇ」
そして校舎に戻りジャージに着替え再度部室に行くと、先生では無く檸檬が待っていた。
「あれ、檸檬? 先生は?」
「あーそれが……香澄せんせー急用で戻っちゃって、私が仕事内容を教えることになっちゃったんだ」
「そうか、それじゃあお任せするか」
「りょうかーい、それじゃあねぇ……」
それからは部室倉庫にあるボールの位置やウォータージャグの準備の仕方、フォーム確認用のビデオの準備や充電器やパソコンのパスワード等、実演やメモできる範囲での事を逐次メモしながら説明を聞いていた。
「という訳で、臨時のマネージャーが来てくれました」
「「「「「お~(パチパチ)」」」」」
「普通科1年の佐伯 翔です。臨時なので来れる時だけではありますが皆さんのお手伝いをさせていただきます」
「よろしく~」「マネージャー!?」「遂にウチにも……」
と割と好意的な反応が返って来る。
「えっと……佐伯君で良いのかな? 私は三年生で部長をやってる明仁って言いうんだけど。どうしてマネージャーを?」
眼鏡をかけたショートカットの先輩が聞いてくる。
「えっと、先月末に訳アリで怪我をしてしまい体育の授業を休んだんです、。それで欠席分を学内ボランティアで賄うことになって。その内容がテニス部の大会の時にマネージャーをやるって事だったんですよ」
「そうだったんだ……でも、なんで大会前もマネージャーをやってくれるの? 高1の夏休みなんて遊ぶに最も適してるじゃん」
「特に理由は無いですが……まぁ出来るだけ参加してほしいと、先生に言われたからですかね?」
過去の檸檬がやってしまった怪我の理由を、出来れば止めておきたいし
「そうだったの……ありがとう、助かるよ。ウチの部は卒業していた大学の先輩がマネージャーやっててくれたんだけど。生憎、昨年卒業しちゃってね……持ち回りでやってたんだけど大会前だし、集中したい子も居るからね」
そう言うと先輩は、人懐っこい笑みを浮かべた。
「わかりました、出来るだけお手伝いさせてもらいますね」
「それで……マネージャーの内容は一通り教えて貰った?」
「あ、はい。檸檬から教えて貰いました」
先程檸檬から教えて貰った内容をメモと合わせながら答えると、部長さんがため息をついた。
「柊……テーピングとかの内容は教えてないのか?」
「うっ……それは、翔は男の子ですし……」
「あのねぇ……応急救護はマネージャーでなくても重要でしょ……だから私達は持ち回りでやったんだからね」
「うっ……」
そうだなよな、スポーツに怪我はつきものと聞くし、教えて貰わないと不味いな。
「ゴメンね佐伯君、本来は臨時マネージャーに覚えてもらう内容じゃ無いとは思うんだけど、テーピングやアイシング等の応急処置は覚えて貰いたいんだ。緊急時一人でもできる人を増やしたいからね」
「わかりました。それだったら、家に帰ったら妹が居るので練習してみますね、ネットとか調べれば出てくるでしょうし」
由愛も知っているはずだろうし。
「いや、ここは檸檬がちゃんと教えなさい」
「「えぇ!?」」
流石にそれは恥ずかしいんだけど!? 檸檬も顔を赤くしてるし。
「恥ずかしいのは分かるけど、ちゃんと教えなさい」
「うっ……」
「えーじゃあ私が教えてあげようかな~」
恐らく先輩であろう女子が手を上げる。金髪碧眼の色白の女子だ、顔の感じは外国人っぽい。
「メルだと遊び出すから却下」
「えぇ~、ぶーぶーおーぼーだー!」
「それに、知らない女子の足触るのは佐伯君にもハードルが高いだろうからね、まずは知り合いから慣れば良いと思うよ。ね、佐伯君?」
「確かに、そうですね……あんまり恥ずかしさは変わらないと思いますが、知らない女子よりは知り合いの方が……ってあれ?」
なんか誘導された!?
「翔!?」
「はぁ……じゃあ私が変わりますわ……」
弓場さんがやれやれと言った感じで立ちあがりながら言う。
「「「「「それは駄目でしょ!!」」」」」
その場にいる全員がツッコんだ。
「えぇ……どうしてですの……」
作者です。
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