第9話:夏休み前最後の学食
職員室での先生からボランティアについての話が終わり、学食へやって来た。
「おっ、翔! こっちこっち!」
俺を見つけた雨音が手を上げて呼びかけるので、俺にも学食に居る人たちからの注目が集まる。
「お前なぁ……大声で呼ぶなよ、恥ずかしい」
8人掛けの大きなテーブルには鞄が置いてあった、ついているストラップから真白達だろう、食券売り場に並んでるし。
「すまんすまん。顔が見えたし、何か探してるな~って見えたからな」
「まぁ、確かに探してはいたけど……」
座席に荷物を置きながら財布を取り出す。
「食券買って来るわ、雨音は?」
「あぁ、俺は弁当持ってきたから大丈夫」
そう言って弁当箱とご飯の入ったタッパーを取り出す。
「相変わらず量が多いなぁ……」
「まぁな、高校生の胃袋なめるなよ?」
「俺も高校生だが、そんなに入らんわ」
俺は普通の定食で十分だ、部活もやってないしな……。
「もっと食えよーっと思ったけど、お前それでも結構筋肉質だったな」
腕をぺちぺち触りながら言って来る雨音、やめい暑苦しい。
「まぁな~これでもちゃんと管理されてるから……」
「ふむ、由愛ちゃんか?」
「いや、母さん。夏休み入ったらモデルの仕事させられるから……」
「モデルって、マジか……どうして?」
「小遣い稼ぎだよ、お前達の応援に行くし懐は温かい方が良いだろ?」
「そうだな、俺達は部活だけど。翔達は観光に近いもんな」
「まぁ、そんな悠長なこと言ってられなくなったけどな……」
「どういうことだ?」
「後で話す、皆帰って来てるし飯買って来るよ。」
「っとすまん、いってら」
戻って来る檸檬達を横目で眺めながら、食券を買いに行った。
◇◆◇◆◇◆◇◆
食券を買って並んでいると、背後から声を掛けられた。
「やほー翔」
「あれ? 檸檬?」
そこにはお盆を持って笑う檸檬が居た。
「えへへ~、追加で買いに来ちゃった」
「いやいや、既に大盛りだっただろ……」
「あはは~そうなんだけどね。サラダをもう少し食べようと思って、おばちゃんこれ!」
そういっておばちゃんに食券を渡す檸檬、どうやら顔見知りの様で話しかけている。
「檸檬ちゃん、隣の子は彼氏?」
「ぶっ!? そそそそんな事はないよ!?」
「え~かっこいいじゃないの~。それにいい男っぽそうだしちゃんと捕まえとかないとだめよ~。はいよミックスサラダ、ドレッシングはあそこにあるからね~」
「ちょちょちょ!? 違うよ!? おばちゃん!? おばちゃーん!!」
さっさとサラダを渡しm出来上がった俺の料理を取りに行ってしまったおばちゃんと大盛りのサラダを手に震えてる檸檬。
そして、いつまでもそこにいるわけにはいかないので、顔を赤くしながら調味料のコーナーヘ向かう檸檬だった。
「はい! 檸檬ちゃんの彼氏さん! 大盛りにしといたよ!」
ドンっという音がするくらいのご飯が置かれた、おかずもいつもの1.5割増し位の量だ。
「あ、ありがとうございます。でも、俺檸檬の彼氏じゃないですよ、仲良いですが」
「そうなの? まぁ私の勘だとあと半年位でて感じね……」
「あはは……モテないですし、そんな事は無いですよ」
なんか具体的な数字を出されて若干引くけど、少なくとも周囲の女子達から、そういった気配が無いのだよ……悲しいかな。
「まぁ兎に角頑張りなさい!」
そういっておばちゃんは戻って行ってしまった。
「そして……どーしようか、この量……」
いつもの倍近い量の食事を持ちながら席へ向かうと、皆驚いた顔をしていた。
「翔君す、すごい量だね……」
「ホントだねぇ~凄いいっぱいだぁ~」
「まるで檸檬さんや進藤さんの食べる量みたいですわね~」
「いや……どうしたのよその量……」
「すげぇな……」
「…………」
「あーあはは……なんか檸檬と話してたらおばちゃんが、檸檬のカレシと勘違いして凄い量サービスしてくれたんだ……食べ切れなさそうだし、どうしよう」
ご飯なんて漫画盛りだし、メインのおかずもかなりの量がある。ホントどうしよう……。
「あー少しなら私食べれるよ?」
「私もぉ~一口二口だけど手伝えるよぉ~」
「すみません、私はそこまで食べれなくて……」
「俺も手伝うよ、もう少し欲しかったし」
次々と援護を申し出てくれる皆、そして雨音はまだ食うのか……。
「大変そうだし、私も手伝うわねって……檸檬?」
弓場さんが檸檬を見ると、顔を赤くして黙っている。
「ま、まぁとりあえず食べようか」
檸檬のフォローとして、話を斬るように食事を促すと皆で『いただきます』をする。
「早速ですまん皆、食べてくれるとありがたい……」
おかずとご飯を差し出すと少しずつ取ってくれて、かろうじて食べやすい量になった。
そうして食べ始めると、雨音が口を開いた。
「あーそう言えば、翔さっき言ってたのはどうしてだ?」
「あぁ、観光の件?」
「そうそう、さっき悠長な事とか、言ったけどそれって?」
雨音に聞かれ、鞄から先程貰ったプリントを取り出す。
「あぁ、女子テニス部の臨時マネージャー? をやらされるらしいんだ」
そう言うとさっきまで黙っていた檸檬が、ぐるりとすごい勢いでこちらを向く。
「ちょちょちょ!? それどういう事!?」
そう言って雨音の持ってるプリントを奪い取る檸檬。書かれている詳細を読んでため息をついた。
作者です。
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