第43話:吉糸守り(きっしまもり)
神社へ到着した俺達はみんなでお揃いのお守りを買う事にした。
「私、どうしようかな~定番のピンク? いや、赤色も捨てがたい……」
「私はオレンジ! これオレンジなの?」
「う~ん、わたしはねぇ~青にしようかなぁ」
「私は翡翠色にしますね」
「えぇ~皆決めるの早いよぉ~」
「そうだ、雨音達に聞いてみるか」
4人がワイワイしながら選んでるの間に雨音へ通話をかける。
「————佐伯君? どうしたの?」
どうやら雨音は寝ているみたいだ。
「今お祭り会場の神社に来てて、皆でお守りを選んでるんだけど、雨音達は何色が良いかなと思ってね」
「うーん……それじゃあそっちに行くわ、丁度雨音もトイレから帰ってきた頃だし」
「起きてたのか、それじゃあ境内で待ってるよ」
「わかった、向かうわね」
通話を終了して、4人に向き直る。
「皆、雨音達も来るからその時にまとめて買おうか」
「わかったー」「わかりましたわ~」「りょうか~い」
「じゃあじっくり選べるね!」
1人だけ気合の入れ方が違う真白を見つつ境内の端に向かうとそこには見知った顔が居た。
「あっれ~佐伯君じゃん」
「え? ちゃこ先輩?」
「きぐーだねぇ~どうしてここに?」
「友達皆と来てるんですけど、今はトイレに行ってた友人待ちですね」
「そっか~トイレ遠いもんね」
「ちゃこ先輩はどうしてここに?」
「あーここの神社、ウチの遠縁で毎年手伝いに来てるの」
「そうなんですね、でも先輩浴衣ですよね?」
ちゃこ先輩は綺麗な群青の浴衣を着ていた、黒い蝶の模様が漆で描かれている、帯は向日葵の様な黄色でアンバランスに見えて少し細めの帯で全体の雰囲気を邪魔してない。
「へへ~ん、そーなのですお手伝いは朝から夕方までで、この時間からは自由時間なのです」
「へぇ~そうなんですね」
「そうなのです」
その直後、後ろから軽い衝撃と共に両腕に重みが加わった。
「わっ、わわっ……」
「翔君、誰その女の人」
「私達が居るのにナンパ~?」
真白と檸檬が腕に抱き付いてくる、両極端な感触が腕を包む。
「しょーは渡さない……」
そういって蕾がすっと割り込んでくる。
「皆さん、どうしたんですか~?」
遅れて藍那がやって来た。
「えっと、ハーレム?」
その光景を見た先輩が驚きながら言う。
「違いますよ!? 先輩何言ってるんですか!?」
「先輩?」
「もしかして、女子大生の!?」
「そうで~す! 佐伯君の学校の先輩で今は現役女子大生の三枝千夜子で~す!」
ギャルっぽい目の下ピースをしながら答えるちゃこ先輩。
「先輩、何やってるんですか?」
「え? 最近流行りのピース」
「流行ってるの?」
真白達に聞いてみる。
「私は知らないかなぁ……」
「私も、やらないかなぁ……」
「私は~プリクラ撮ったことないよぉ~」
「私は、その……お友達がいなかったので……」
「「「「「!?」」」」」
「藍那ちゃん! 今度プリクラとろーね!」
「そうだよ! いっぱい撮ろう!」
「わたしもぉ~頑張るよぉ~」
三人が口々に結束を固めている。
「あはははは! 楽しいねぇ佐伯君の友達は!」
ちゃこ先輩が爆笑をしている。
「ともかく、真白達は後でプリクラ撮ってきなよ折角浴衣だし」
「うん、そ~する!」
「それで、説明しても良いか?」
「そーでした! 翔その人誰よ!」
「いやさっき自己紹介したじゃん」
「そういう事じゃないよ~」
ちゃこ先輩が笑いながら肩を叩いてくる。
「いてっ、痛いです先輩」
先輩はお腹を抱えて笑っていて最早、大爆笑だ。
「あーー、わらったぁ~」
「それで話を戻すと、先輩は以前にテスト勉強見てもらった人だよ。ノートとか過去問借りたんだ」
「確かそんなこと言ってたようなぁ~」
「それでその先輩が、何でここに居るの?」
「それはですね~わたしがこの神社の遠縁で、毎年手伝いに来てるからなんですよ~」
「へぇ~そうなんですね~」
「お手伝いも終わって暇してたら丁度、佐伯君を見つけたわけさ」
「そうなんだよ、俺もびっくりしたよ」
「それでね、君達ちょっと来てくれないかな? あ、佐伯君は全員分のかき氷買ってきて!」
「え?」
「味は適当でいいよ~」
そういって先輩は、皆を連れて行ってしまった。
「えぇ……まぁいいか、買ってこよ」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「さぁ、さあいらっしゃーい」
私達が通されたのは神社の本殿、しかもお祓いを受ける様な場所だ。
「おじーちゃん! この4人に御祈祷を!」
「「「「え?」」」」
「なんじゃ、忙しいのう。さっき終わったばかりなんじゃが……」
「良いじゃん良いじゃん、恋に悩める女の子なんだからやってあげてよ!」
「わかったわかった、お前も座りなさい」
「え?」
「流石にその年になって彼氏の一つも居ないと言われたら心配になるだろ、だから大人しく受けなさい」
「うっ……はーい……」
そのままあれよあれよと御祈祷が始まり、千夜子さんから全員がミサンガ様な糸を貰う。
「このお守りは『吉糸守り』と言ってこの神社でも年に十数本しか作ってないお守りなの。漢字で書くと吉と糸を使うんだよ。このお守りを、こうやって結ぶことで『結守り』に変化するんだ。結ぶことで縁を繋ぎ離れなくすることが出来るって奴だよ……まぁ語呂合わせに近いんだけど効力はお墨付きだよ」
そう言って千夜子さんはみんなの手に結ぶ。
「さて、これで誰が彼をゲットするかな?」
そう言ってニヤニヤと笑って来るのであった。
作者です。
本日も読んでいただきありがとうございます!
現在この作品は1章終了まで残す所後10話です。
読んでいただけてポイントもかなり増え日間や週刊ランキングにも載るようになりました!夢みたいです。
ですが落ち着き、ポイントも伸び悩んで来ました……ですので。
1章終了前にこの作品が累計3000ポイント行けなければ打ち切り予定です!
というのもこちらの作品、カクヨム版も更新停止中で、その関係から伸びないのであればと考えております。
ですので皆さん読んでポイント入れて布教して下さい!
現在ポイント【1946pt】です!