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第36話:ちゃこ先輩

 体育祭と追及地獄だった柊家との食事会を終え、その翌日のクラスの打ち上げもつつがなく終わり月も切り替わった日曜日。つまり来週の中間テストまで1週間という事だ。


「ヤバい……いや、そこまでじゃないがそこそこにヤバい……」


 ちゃんと勉強はしているがなんせ前世で勉強したとこから10年以上経っている、覚えてる所のが少ない。


「まぁ、前はそんなに勉強してなかったもんなぁ……」


 前世の成績は中の下、大学への内部進学もお情けで入った様なもんだ。


「集中力切れた……アイスでも買ってこよ……」


 スマホを持って部屋を出る。由愛は今日、部活だし今家には誰も居ない。


「何買うかなぁ~」


 靴を履いて外に出る。もう昼なので日差しが高く、すぐに肌を焼いてくる。


「あ゛ち゛ぃ……」


 たった100mだが、今はコンビニまでの道が憎らしい……。


「昼飯も買わないといけないか……うーん、冷やし中華とかあるかな?」


 昼飯と食後のアイスに心を弾ませながらコンビニへ入る、店内が涼しくて心地いい。


(おっ、冷やし中華あるじゃん、これにしよう)


 冷やし中華を取って、アイスを物色する。


(高めのにするか……安めの2個選ぶか……)


 そんな事を考えていると、肩を叩かれた。


「ん?」


 振り返ると、私服に着替えた。店員の三枝さえぐさ 千夜子ちやこさんが居た。


「おひさ~」


「三枝さんでしたか、お久しぶりです。びっくりしましたよ」


「今日はどしたん?」


「息抜きがてらお昼買いに来たんですよ、そろそろ中間テストなんで」


「そっか~高校の方は、そろそろ中間だもんね~」


「はい、大変ですよ~」


「え? 佐伯君ってそんなに点数悪いの?」


 驚いたような顔をする三枝さん。


「あーいや……何教科かマズめのがある位です……」


「そっかーなんだかんだでレベル高いからねウチ」


「そうなんですよ……サボってた訳じゃ無いんですが……」


「そかそか、なら私と勉強しない?」


「え?」


 唐突なお誘いが来て、目を丸くする俺。


「私、今までのテストだったりノート、全部取ってるもん。先生も変わってないし傾向とかわかっちゃうからね」


 それは、非常に魅力的だ……。


「でもいいんですか? 今日はお休みだし、彼氏とか友達と遊びに行ったりとかは?」


「あー、だいじょぶだいじょぶ! 彼氏いないし友達は今日、好きなアーティストのライブに行ってるからね、一日フリーだよ!」


「それじゃあ、お願いしても良いですか?」


「おけーそれじゃあ。はい、スマホ出して」


「わかりました」


 スマホのロックを解除して手渡す、すると慣れた手つきでメッセージアプリと電話番号の登録をしてしまった。


「ほい、これで完成。それじゃあどっち家でやる?」


「それでしたら、ウチでどうですか? 今日は両親も仕事なんで」


「おけーじゃあ家に戻ってノートとか取って来るから、大体一時間かな? 家の場所送っといて~」


 そう言って三枝さんは、他のバイトメンバーに挨拶して出て行った。


「アイス……二人分買っとくか……」


 高めのアイスを手に取りレジに並ぶ、リビングを片付けないとな……。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 それから急いで帰り、家の場所を三枝さんに送る。その後はリビングに掃除機をかけて急いで食事を食べる。


 そして一時間を過ぎた頃、家のチャイムが鳴った。


 急いで扉を開けると先程会った服装とは違ってシアー素材のトップスに青色のキャミソールに白いミニスカートを履いている。


「あ゛~暑かったぁ……」


「暑い中、ありがとうございます」


 来客用のスリッパを出すと、それ履き替える。


「そーだよー、それで佐伯君の部屋は?」


「2階ですね……って三枝さん!?」


「へ? 勉強するんじゃないの?」


 二階へ行こうとした三枝さんを止める。


「え? リビングでやると思ったんですけど……」


「まぁ良いじゃん、部屋でもリビングでも変わらないし!」


 そう言ってタタタっと上がって行ってしまった。


「え? マジで?」


 やばい……なんか変に緊張してきた……。


 今になって、今日両親も妹も居ないという事を猛烈に意識し出した。


「あの人、わかって来てるのかな?」


 掴めない人なのは分かってるんだけど……。


「ともかく、飲み物を持ってくか……」


 リビングに用意していたコップや麦茶を入れたピッチャーを持って上がった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆

「そうそう、その問題はその公式を使って」


「あ、そうか。それを使えばこの解が出るんですね」


「うん、その通り。なんだ、ヤバいって言うからもっと絶望的なのかと思った」


「三枝さんの説明がわかりやすいんですよ、現に教えて貰ってからスルスル解けますから」


「こーら、千夜子ちゃこ先輩でしょ?」


 顔を寄せてきたちゃこ先輩がむくれる、この人無防備すぎぃ!


「う、ちゃこ先輩……」


「うむ、よろしい! じゃあ次は私が一年の時のテストをしよう!」


 ちゃこ先輩が、過去問の載った問題用紙を出してくる。


「じゃあ、時間は50分。スタート!」


 そうして始まった過去問、丁度授業でやってる範囲と全く一緒だ。


(これなら良い感じに出来そうだな……)


 次々と問題を解いて行き全体の回答に45分程かかった。


(これで残りは記入漏れなんかのチェックのみ……)


 ――――ピピピ! ――――ピピピ!


 タイマーが鳴り、手を止める。そうして振り返ると、ちゃこ先輩は人のベッドの上で寝ていた……。


 ご丁寧に布団にくるまっている。


「うーん……どうしよう。起こすべきか……」


 多分あの時間に上がりだから朝早くか夜勤ぽかったんだよなぁ……。


(幸い各教科のノートで、テスト範囲は付箋を貼っていてくれている)


 まぁ起きるまでやってよう……。


 先輩のノートを開き書き込まれた解説を読みながら、教科書の例文を解いて行くことにした。

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