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第21話:あっれー?どうして?

お土産の購入も終えた後、工房に戻り熱が取れ完成したとんぼ玉を受け取る。


そして今は皆で昼食を食べている所だ。


「わぁ~綺麗~」


「そうですね、まるで売り物みたいです」


「凄いんだよ! こう……ちょいちょいと弄ると、みるみる間に作っていくんだもん」


「へぇ~それはすごいねぇ~」


「得意って聞いてたけど、凄かったわ」


「まさか翔にこんな特技があったなんてなぁ……」


各々俺が作ったとんぼ玉を見ている。


「まぁ、せっかくだしね。皆にあげる分も作っちゃおうって思ったから」


「凄いよ、俺なんて一つ作って、肩凝ったもん」


「あー私も……あんな精巧なものにしなきゃ良かった」


「ですわねぇ……」


弓場さんと檸檬の持ってる細工はどう見ても狸なのだが、どうやら猫をモチーフとしてたらしい。


「猫なら初めから言ってくれ……出来る限り修正したのに」


「むー! みてわかんないの?」


「いや…耳も丸まってたしてっきり狸かと……」


「止めましょう檸檬さん、この戦いは分が悪いわ……」


弓場さんが悲痛な顔をして檸檬を止めに入る。


「ま、まぁ機会があれば作ってやるから……」


「ほんと! やたー!」


上機嫌になる檸檬、早々に機会なんてないと思うけど良いのか。


「それで、翔君。これ本当にもらって良いの」


おずおずと聞いてくる真白。


「あぁ、その為に作ったんだ。まぁモチーフは適当だけどな」


「ありがとう! わぁ……」


光に当てたり覗き込む真白、素人制作だからあんましマジマジと見られると恥ずかしいけど、喜んでもらえたなら良かった。


そんな事考えていると袖を引かれる、振り変えると藍那が居た。


「翔さん、ありがとうございます~。お友達からの大切なプレゼント。大事にしますね~」


「喜んでくれて嬉しいよ。まぁ使ってもらえるのが一番だから、ガンガン使って欲しいけどね」


「わかりました~ふふ、かえったらお父様とお母様に自慢しますね~」


「あんまり恥ずかしいから、お手柔らかにお願いします……」


「良いじゃんかぁ~凄く綺麗なんだしぃ~」


いきなり背中に重さが加わる。


「蕾!? ビックリしたぁ……」


「いや~しょーの気持ちが嬉しくてぇ~つい~」


小さいながらも蕾のふくらみが背中で潰れる、無という訳じゃ無かったのか。


「まぁ、せっかくだしな。早く終わらせても手持ち無沙汰になるから、それならいっそ皆の分作るのが良いかな~って」


「むふふ~その気持ちが嬉しいんだよぉ~」


「そういうもんか?」


「そういう物だよぉ~」


「わかった、喜んでくれたのなら俺も嬉しいよ」


「そっか……」


予想外の蕾の行動に驚きつつも、その重さが心地よかった。


(前世とは違うこのオリエンテーション、頑張って良かったぁ……)


昨日の事も今日の事も、悪い方向に向かなくて良かったと思い胸を撫で下ろす、何にしてもこうして笑顔で終れてよかった。


◇◆◇◆◇◆◇◆

「それじゃあ、忘れ物は無いかー無いなら解散」


「「「「「はーい」」」」」


ゆるい担任の声で解散が告げられ各々散っていく、とりあえず皆を待つけど、その後どうしようかな?


「えっと、佐伯君?」


聞きなじみのない声に振り返ると、昨日の仲裁した女の子が居た。


「えっと……何か、用事かな?」


「えっ……あっ……う、うん……少し話し辛いからあっちに……」


「おっけー。雨音、荷物頼む」


「おっ、おう……くわばらくわばら……」


「?」


なぜか知らんが拝まれたんだけどまぁ良いか、その女の子と隅の方へ行く。


「あっあの……佐伯君!」


(ん? この感じ……まさかね?)


「こ、これを受け取ってくれないかな?」


そこには、可愛らしいとんぼ玉のストラップがあった、形は歪ながらも精一杯作ったのが見てわかる。


「えっとこれは?」


視線と共に問いかけると、女の子は目を伏せる。


「えっと、昨日庇ってもらったお礼……」


(マジか……)


「一生懸命作ったのに良いの?」


「う、うん……出来れば貰って欲しいかな……」


彼女の瞳が揺れている、かなり緊張もしてるし視線もおぼつかない。


(どうするかなぁ……いや、まだそうとは限らないでしょ!)


「ありがとう、でもそんなの気にしなくて良いのに」


そう言うと露骨に気落ちする。


(これ、マジで?)


頭の中で必死に断りの言葉を考える。前世ならこの位かわいい子なら飛びついてたけど、今は心が動かない。


(だからと言って、勇気を出してきた女の子をバッサリ切って捨てるわけにもいかない、けど……)


彼女の瞳が揺れ動く、どうしよう……。


◇◆◇◆◇◆◇◆

その後押し切られて受け取ってしまった。


(明確に告白された訳じゃないし、うまーく諦める方向に持って行きたいなぁ……)


そうして戻ると皆が集まっていた、やたらニコニコしてるな……。


「翔さん、遅かったですね、何をしてたんですか?」


真白がニコニコしながら聞いてくる。


「いや、昨日助けた人に感謝されてた」


「へぇ~」


檸檬もニコニコしてる。


「へぇ~かわいい子だったねぇ~」


「そうですね~」


なんか、蕾と藍那から何か凄い圧が……。


「アレ死んだわね」


「死んだな」


「「「「ふふ、ふふふふふ」」」」


「え? ちょ!? 雨音? 弓場さん!? 助けて!!」


「じゃあ、俺達帰るな!」


「じゃあ明後日、生きてたらね~」


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