第19話:女たらしって誰の事?
それから先生達に「キャンプファイヤーやっても良いんじゃないか」という催眠をかけ準備が始まった。
(まぁこれ位ならバレる事は無いだろうし、良いでしょ)
そうして夕食を食べた後保養所のグラウンドに集まった。
「では、皆さん。明日は体験学習の後帰宅です、最後の夜を楽しみましょう!」
「「「「「わぁぁぁ!!」」」」」
点けられた火も、悠々しく燃える位に落ち着いた所で自由行動になった。
さっきの事が後を引いてるせいか、皆の輪に入り辛い。
「翔、お前。何でこんなとこに居るんだよ……」
コップとジュースを持った雨音がやって来た。
「いやさ、さっき皆を怒らせたみたいだし。それに女子同士のがこういうのも楽しいでしょ?」
理由は分からないけど、怒らせちゃったみたいだし。触らぬ神に祟りなしっていうからね。
「いやお前……さみしい奴だな」
そう言いながらコップを渡してくれて、ついでにジュースも入れてくれる。
「サンキュー。お前こそ良いのか? 弓場さんとか同じく部活の一年生とか……」
「え? まぁ、瞳は檸檬達と居るし同じ部の連中も、これから年がら年中顔合わせるんだ。少しくらい友達を優先してもバチは当たらないだろ」
「雨音……俺そんな趣味は無いぞ」
尻がきゅっとなる、いたって俺はノーマルなタイプだ。
「お前が言うか! 女子のとこにも行かずウジウジしてるお前が!!」
「ホントです、全く翔君は」
「ね~折角私達が居るのに男同士なんてね~」
「いやぁ~本当にそっちの人なのかと思ったよぉ~」
「そっちの人~?」
「あぁそれはですね……(ゴニョゴニョ」
「翔さんは~男の人が好きなんですか?」
「ぶっ!!」
飲んでいたジュースを噴き出す訳は、無かったが。そのまま気管に入ってしまいむせる。
「ゲホッゲホッ……」
「翔!?」
近くにいた檸檬が、背中をさすってくれた。
「ゲホッゲホッ……ハァーーハァーー」
肩で息をすると、苦しさも抜けて来る。
「大丈夫? 翔君?」
「あぁ、ありがとう檸檬、楽になったよ。真白も心配してくれてありがとう」
「へへ~感謝してね!」
「ど、ドウイタシマシテ!」
どうしてカタコトなんだ……。
「???」
このぽややーんお嬢様、とんでもない事聞いてくれるな……。
「藍那、俺はいたってノーマルだ、普通に女子が好きだからな」
「そ~なんですね~誤解してました~」
「そうそう」
「翔さんは女たらしなんですねぇ~」
「ちゃうわい!! どうしてそうなった!?」
誤解だ誤解! 俺は誠実な人間だ!!
「え? 違うの?」
「ほーう? 雨音は俺の事、そう思ってたのか……」
「ちがうぞ! 今のは言葉の綾で!!」
「ほーーへぇーーーふーーーーん」
「待て待て! 皆もそう思うよな!!」
雨音がそう言うと、皆目を逸らす。
「イ、イエソンナコトナイデスヨ」
「ソウデスネ」
「ナニカノカンチガイジャナイデスカ~」
「ソ~ダヨ~カンチガイ、カンチガイ~」
「という事は俺、皆の前でそう思われる行動してたのか…………死のう」
そんな……誠実に生きて来たのに……そう思われてるなんて……。
「待てまてぇ!」
雨音に羽交い絞めにされる俺。
「ハナセェ! 流石にそう思われたら恥ずかしくて生きてけないぃ!」
「だってお前! 今日だって!」
その言葉に固まる。
「え? 俺なんかやった?」
「気付いて無いですよこの人」
「ありえない……」
「無自覚って怖いねぇ~」
「???」
「いやまぁ、ほら佐伯君。昼間、殴られそうになった女の子を、助けたましたでしょ?」
あぁ、あの件か……。
「いや、人が殴られそうになってたら、止めに入るだろ」
「「はぁ~」」
雨音と弓場さんが同時にため息をつく。
「あの子、完っ全に惚れてたぞ」
「えぇ……そんな訳無いでしょ」
「いーや……わかりますわ、あれは惚れてます」
「マジか……」
そんなんで惚れるとか、ちょろすぎるでしょ……。
「まぁまぁ~翔さんは、やっぱり女たらしですわねぇ~」
「藍那さんその呼び方はやめて下さい、心が抉られます」
「そうなのですか~? では、何とお呼びすれば~」
可愛らしく小首をかしげる藍那、可愛いな。
「いや、そうじゃなくてそういう言い方をしないで欲しい……」
「わかりました~では、何とお呼びいたしましょう……咄嗟に人の事を助けられるヒーローみたいなお方ですし……」
「ん? ちょっと待って藍那、女たらしの意味わかってる?」
「人々を助ける、とても素晴らしいお方だと……鳴海が」
あんの駄メイド……。
「弓場さん、藍那に説明して下さい……」
「まぁ良いけど……ゴニョゴニョ」
藍那を引っ張っていき説明をする弓場さん、すると藍那の顔が赤くなった。
「翔さん、すみません。私、意味を間違えておりました」
「それなら良かった。もう勘弁してくれ……」
「まぁでも、佐伯君は女たらしだけどね」
「何故!?」
作者です。
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