002 水の曜日の例のアレ2
ミーガンはその男子生徒の華美に飾り立てられた改造馬車に負けず、降り注ぐ陽光に照らされて光る青みがかった白銀の髪を見て、眉間と目頭に思わず力が入った。
ミーガンの眼下に映るその人物はオリヴィエ・ヴァン・キュリー。ミーガンとオリヴィエとの関係を一言で表すならば幼馴染以外に当てはまるものはない。
二人の関係は互いの父親が今のミーガンの年頃の時まで遡る。この王立エルゴリア学園でミーガンの父とオリヴィエの父は生まれの地は遠く離れていたものの鏡で写したように互い境遇が同じであったことがきっかけで意気投合し、学園を卒業した後も領地ぐるみで深く揺るぎない関係を築いた。父親同士が見ていられないほどの熱い友情で結ばれているのだから、互いの領地が転移魔法でも半日かかる距離にも関わらずミーガンとオリヴィエも毎月のように顔を合わせていた。ミーガンもオリヴィエも幼い頃は両親たちからは「いっそ今のうちに許婚でもしておくか」と冗談が出てしまうほど、友だちという言葉では足りないくらいの仲を結んでいた。
だがそんな過去、ミーガンにとっては頭の片隅に残っていることさえ嫌なことだった。入学して学園が上がるにつれてエルゴリアに進学する少し前キュリー領の森でお互い将来の夢を語り合ったことなんて、思い出すだけで後悔で頭の奥がキリキリと締め付けられる。頭の中にある記憶どころかそんなことがあった事実さえ消し去ってしまいたいくらいだ。
ただでさえ水の曜日というだけで憂鬱なのに、嫌なことを思い出しちゃった。
ミーガンはため息をついた時だった。今では見ると気持ちが下がる白銀の髪の頭が上がってミーガンの方へと顔を向けた。
今日の晩御飯は塩麹漬けのサラダチキンです