番外編@品評会8
貫禄あるオジサンが発表を始めた。
なんかお尻の辺りがモゾモゾするし、背中の辺りがスースーする。
気を抜くとブルっと震えてしまいそうだ。
オジサンの声は膜を通したような、水の中で聞いているようなぼんやりした音としてしか認識ができない。
目は開いているのに視点が定まらないし、なんか泣きたいような笑い出したいような気持ちになってくる。
「では次にガラス工芸部門」
その言葉を耳にした途端私の意識は全覚醒して瞬きもせずにオジサンを見つめながら一言一句、耳でも目でも聞き漏らさないぞと身構えた。
「こちらも最優秀賞一点、優秀賞二点、審査員特別賞一点の四点の発表になります。」
「優秀賞、タガ工芸 ヒューバッハさん、シシルガラス工房 カルロスさん。」
わーっという歓声や拍手の中男の人が2人壇上に現れる。
「審査員特別賞、ガロジ美術学園 アザマさん」
歓声が一際大きく上がる。
もう私の心臓は爆発しそうなほどドキドキして、自分の耳に鼓動が聞こえてくるほどだ。
「最優秀賞ーーー」
息が止まり、目の前が白くなる。
もう限界…
「イーサン瓶工場 ナムルさん」
私は一瞬意識を失った。
社長と工場長が両脇から支えて私の顔をペチペチ叩いて小声で声をかけてくる。
「キヨコさん、キヨコさん、しっかりして!」
「ほら、ナムル出てきたぞ!」
私は気を取り直して両足に力を入れて踏ん張り前を見ると壇上にナムルさんが上がってきたところだった。
大きな歓声と拍手が会場に響き渡る。
私も力一杯手をたたきながら涙が溢れるのを止められなかった。
横を見ると社長も工場長も少し涙ぐんでいて、私はさらに涙腺を決壊させてしまった。
ナムルさんは飄々とした表情で賞状とトロフィーを受け取り会場に向かって一つお辞儀をした。
何であんたが一番冷静なんじゃい。
夜は予定通りネモフィラ亭で祝勝会が開かれた。
ナムルさん以外の私たち3人は明日の列車で帰る予定だが、ナムルさんは明日王宮に呼ばれて王様からのお言葉があるのだそうだ。
もうなんかナムルさんが別世界の人になっちゃった気がする。
でも本当に本当に嬉しくて、社長と工場長もやっぱり嬉しそうで、ミイちゃんとアオもウキウキしていて、リンドさんとミルヒさんも顔を赤くして興奮している。
ナムルさんは少し照れた様子で、みんなからのお祝いの言葉を受け取っていて、私はこんな幸せの中にいられることにものすごく感謝をしていた。
ほんの2年前に脳出血で死ぬはずだった私はこの世界に来て新しい人達と新しい幸せを生きている。
今ここに居ない大切な人の顔も次々と浮かんできた。
神田さんやユユラさん、ソラくんやルナちゃんやステラちゃんやハッシ先生。
みんなみんな私を支えて、励まして、助けてくれている。
そう考えると私の目にはまた涙が浮かんできた。




