番外編@品評会4
「今回の品評会に出した花瓶はナムルさんが作ったんだけど、それはもう本当にすんごい素敵な作品なの!」
私はビール片手に鼻息も荒く熱く語る。
多分この話2回目だなとちらっと思ったけど、酔った勢いで止まらない。
目の前には相変わらずの絶品料理の数々だ。
今日のメニューはまず三つ葉と湯葉のお浸し。
出汁の味がしみていて、上に散らされた菊の花びらが彩よく可愛くて美味しい。
次にカボチャとベーコンとクレソンをオリーブオイルで炒めてバルサミコ酢で味付けした炒め物。
かぼちゃの甘さとバルサミコ酢の酸味が意外にマッチしていて箸が進む。
他にも、新鮮な野菜がたくさん盛られたバーニャカウダ、蛤と菜の花のワイン蒸しにメインが鹿肉のハンバーグだった。
鹿肉のハンバーグって初めて食べたんだけど、牛よりもくどくないのに肉汁がたっぷりで旨みがあって、デミグラスソースとの相性が抜群だった。
ナムルさんはどの料理にも目を輝かせて美味しそうに食べていて、リンドさんとミルヒさんは時々こそこそ2人で話しながら仲の良さを見せつけている。
私が嬉しくなってついつい飲みすぎたのは大めに見て貰っていいと思う。
「わかったわよ。私達、明後日品評会見に行くから、楽しみにしてる。ちゃんと投票もしてくるからね!」
「お願いします!」
「いや、でも他にいいなと思った作品があれば無理に僕のに投票しなくていいので。」
私は図々しく頼むけど、ナムルさんは遠慮深い。
私だって、正々堂々とやってもナムルさんの作品が予選を勝ち進むのを信じてる。
でも少しでも縋れるものがあれば縋りたいと思ってしまうのだ。
ちょっとあさましかったかな、と反省していると、ナムルさんが私の肩をポンと叩いた。
「キヨコさんの気持ちはすごく嬉しいよ。どうもありがとう。」
「ナムルさんの実力を疑っているわけではないんですけど…」
「大丈夫。わかってるよ。」
そんな私達のやりとりをリンドさんとミルヒさんが意味深な笑顔を浮かべて見ていたのを私は気がつかないふりをした。
あっという間に夜も更けてお開きの時間となった。
私はネモフィラ亭の女将さんとご主人に挨拶をして、リンドさんとミルヒさんに昼間買ったボンボンチョコレートを渡してから宿に戻った。
宿までは帰り道だからとナムルさんが送ってくれた。
あまり危険のないこの世界なので夜道を送られるという事もあまりなく、お酒のせいかナムルさんのせいか、私はいつまでもふわふわと夢見心地だった。
ナムルさんも明日帰ると言うので列車も同じ列車だ。
私は個室をとっているけど、ナムルさんは大部屋を予約しているそうなので、私の寝台番号を伝えて別れた。
気が向けば遊びに来てくれるだろう。
予選の発表は10日後で2週間後には本選が始まる。
本選の発表は最終日になるので、それに合わせて工場全体で休みをとっていて、私と社長と工場長は王都に来る予定だ。
その時はミイちゃんとアオも連れて、3日位は滞在するつもりでいる。
ナムルさんは本選準備で前日にこちらに来るとは言っていたが、発表をみに来るかどうかはまだ決めていないそうだ。
私も受験の合格発表を見に行けなかった口なので、その気持ちはわかるけど、入賞の喜びを本人と分かち合いたい気もしてしまう。
何はともあれ10日後の予選通過を心待ちにしつつ、私は王都の慣れない宿でなかなか眠れず何度も寝返りを打った。




